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遺伝子の窓から見た動物たち

フィールドと実験室をつないで

竹中 修企画/村山美穂・渡邊邦夫・竹中晃子編

A5並製・450頁

ISBN: 9784876986828

発行年月: 2006/04

  • 本体: 3,800円(税込 4,180円
  • 在庫あり
 
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内容

マクロな観察を旨とする生態学や動物行動学。しかし、観察・解析だけでは父子判定や進化系統の解析等、個体間、個体群間、種間の関係は分からない。遺伝子解析による評価が不可欠なのだ。京大霊長類研究所の「竹中スクール」が世界をリードした、ミクロな方法とマクロな方法の融合が開く、新しいフィールド科学の可能性を示す動物学必携の書。

書評

『生物教育』第45巻第4号、287頁、評者:渡邉重義氏
『遺伝』’07年5月号、116頁、 評者:佐倉統氏
『生物科学』Vol.59 No.2、128頁、 評者:三上修氏

プロフィール

村山 美穂 岐阜大学応用生物科学部助教授
渡邊 邦夫 京都大学霊長類研究所附属ニホンザル野外観察施設教授
竹中 晃子 名古屋文理大学健康生活学部教授

目次

フィールドに出て種を播いた生化学者(河合雅雄)
竹中修さんのこと(西田利貞)
遺伝子の窓から(竹中 修)
執筆者紹介—歴史とともに(竹中晃子)
Ⅰ タンパク質化学
1 ウシのヘモグロビンのアミノ酸配列から系統関係を調べる
(並河鷹夫)
京都大学霊長類研究所に通いはじめた
1971 年バンコクの動物園で見たバンテン
家畜牛の2 大系統とヘモグロビン型変異
どうしてもHbβ-X の一次構造決定をしたい
生化学研究部門(当時)でのHbβ-X の一次構造解析のことなど
Hbβ-X(Bali)の一次構造決定
ゆ め
『仲 間』
2 増殖するタンパク質,プリオン(村山裕一)
核酸とプリオン
遺伝的要因とその本体
遺伝子配列の解析からわかること
遺伝子配列の解析ではわからないこと
タンパク質合成後,タンパク質の構造や機能が変化する例
プリオンタンパク質の正体
プリオン病はどこからきたのか
試験管内で無限増殖する異常型プリオンタンパク質
今後の展開
霊長類進化ふたたび
Ⅱ DNAによる父子判定
1 霊長類の行動の背景にある遺伝子を探る(村山美穂)
一日のはじまり
なぜニホンザルの父子判定をする必要があったのか
実験室を歩いて,サルを見る
子どもの数は順位を反映しない
野生群で父子判定をする
フィールドワークとラボワーク
新たな領域へ:行動に影響する遺伝子
おわりに
2 パタスモンキーの社会と父子判定(大沢秀行)
はじめに
パタスモンキーの社会
パタスモンキーの社会変動
単雄群の維持と父子判定
社会行動の分子生物学,神経化学,ノネズミの乱婚と単婚の研究
3 交尾する魚の精子競争と生態進化—カジカから学んだこと—
(宗原弘幸)
交尾研究の意義
カジカの精子競争
魚類の生殖器官の構造
スパームエコノミー
ニジカジカの精子の寿命
カジカの精子競争,次なる段階
COLUMN 精子競争 研究の現状、世界ではじめて開催された「精子競争の国際シンポジウム」 
(宗原弘幸)
4 フィールドワーカーとDNA 分析—ボノボの遺伝学的分析をおこなってみて—
(橋本千絵)
はじめに
ボノボ
行動観察と遺伝学的分析
ワッジを集める
実験室
PCR
ボノボのメスの血縁関係
個体識別の重要性
5 屋久島に野生ニホンザルを追って(早川祥子)
オスの優劣順位と父性
B 群の群外オスによる乗っ取り
野生のサルからDNA サンプルを取る
父子判定の成功
6 どんなオスが父親に選ばれるのか?
—毛をサンプルとしたニホンザルの父性解析— (井上英治)
はじめに
オスの繁殖成功・交尾成功について
ニホンザルの交尾とは?
調査対象とした嵐山E 群とは?
どんなオスがいるのか?
交尾行動の観察
サルから毛を抜く
実験室にて
どれだけ正確に父親を決定できるのか?
父親は決まったか?
どんなオスが子供を残していたのか?
子供を残していたオスは,交尾を多くしていたのか?
まとめ
7 競走馬の血統を支える親子判定(栫 裕永)
「血」のバトンタッチ
親子判定のためのDNA 型検査ができるまで
父馬はどの馬?
サラブレッドになる日
親子判定で見つかる突然変異
ウマの家畜化の歴史
DNA 型分析の応用
競馬の公正確保
おわりに
8 マイマイガのマイクロサテライトDNA を求めて(小汐千春)
なぜマイマイガの父子判定が必要か
霊長類研究所と鳴門教育大学の二重生活
新たなマイクロサテライト領域の特定方法を模索して
マイマイガの採集・飼育・交尾実験
DNA 抽出と父子判定
その後の展開
9 体長2 mm でも大丈夫?—DNA マーカーで見るアリの親子関係—
(濱口京子)
ハリナガムネボソアリ
女王の体サイズ二型と多女王制コロニー
アリの進化からみた多女王制の問題
多女王制コロニー内の血縁構造をテーマに
フィールド調査と行動観察で悪戦苦闘!?
マイクロサテライトDNA マーカーの開発
マーカーを使った血縁構造の解析結果
血縁選択説とハリナガムネボソアリの多女王制コロニー
残された問題,大型女王と小型女王
10 WAKWAKするとき(岡 輝樹)
類人猿ギボン
はじめてのカリマンタン
燃えるカリマンタン
行動学と遺伝学的手法,夢のコラボレーション
そしてまたカリマンタンへ
11 電気泳動槽を泳ぐイルカ(篠原正典)
海で生まれ海で死ぬ
イルカとクジラ
ハンドウイルカ
伝説のモリ撃ち
死亡個体
DNA から過去の行動の軌跡を追う
追い込み漁
血まみれのサンプリング
お菓子とお酒と「おもしろい」
同性愛行動
蒸留水で作ったゲル
救世主ザビエル
追い込み漁で捕獲されたイルカの父子判定
糞からのDNA 抽出
電気泳動槽を泳ぐイルカ
ミニ地球プロジェクト
12 海産貝類の野外観察とDNA 解析の応用(河合 渓)
はじめに
生息場所
チヂミボラの生態
貝類の親子判定
DNA 抽出法の行動学と保全生物学への応用
野外観察の体験と思い出
Ⅲ DNAによる地域変異と系統関係
1 ゴリラのフィールド遺伝学(山極寿一)
ゴリラの原生息地を求めて
ゴリラの新分類
ゴリラのコミュニティ
これからの調査へ向けて
COLUMN 「誰」の遺伝子?—ヒト遺伝子の混入問題— (田代靖子)
2 スラウェシマカクの形態学的特徴—生態計測特徴—
(濱田 穣・渡辺 毅・Bambang Suryobroto・岩本光雄)
はじめに
どんなサルのどんな特徴を分析したのか?
スラウェシマカク:7 種それぞれの形態特徴
スラウェシマカクの形態は何を語るのか?
おわりに
COLUMN タイのカニクイザル—分布と形態・生理・遺伝的特徴—
(Suchinda Malaivijitnond)
COLUMN 戦争はさけられないか(相見 滿)
Ⅳ DNA でわかったこと
1 サルで色覚異常を探す(三上章允)
色情報は役に立つ
色覚の進化
旧世界ザルはヒトと同じ色覚をもつ
旧世界ザルで色覚異常を探す
カニクイザルの視物質遺伝子の解析
ハイブリッド視物質遺伝子をもつ個体の色覚
色弱チンパンジーの発見
ヒトの視物質遺伝子と進化
2 DNA を用いた鳥類の性判別と排泄物からのDNA 抽出
(能田由紀子)
わかりにくい鳥類の性
コサギの行動観察とDNA 抽出
DNA を用いた鳥類の性判別
コサギの糞尿からのDNA 抽出と性判別の試み
鳥類の尿から抽出したDNA を用いた性判別
ラボワークとフィールドワーク
3 男性を決める遺伝子がたどった道とはたらき(Heui-Soo Kim)
人間の進化をY 染色体から探る
ヒト男性にだけあるY 染色体の遺伝子構造
ヒトY 染色体遺伝子の生物学的な機能
ヒトY 染色体の男性特異的領域の分子から見た進化
ヒトY 染色体遺伝子研究の展望
4 遺伝子からタンパク質まで—アデニル酸キナーゼ,その機能と構造を探る—
(綾部貴典)
はじめに
遺伝子の窓から見た酵素タンパク質
エネルギー反応に使われる酵素「アデニル酸キナーゼ」
酵素について
アデニル酸キナーゼの実験的背景
遺伝子から変異型酵素の作製
変異型酵素のタンパク質発現と精製方法
アデニル酸キナーゼの酵素活性の測定
酵素反応速度論
変異型酵素の酵素速度論から導き出されたこと
おわりに
5 ヘモグロビンとフィールドワーク(竹中晃子)
生体材料の拾得
ヘモグロビンとの出会い
化学実験での精度
ヘモグロビンと環境
胎児の高酸素親和性
高地適応
カニクイザルのヘモグロビンと血液性状
スラウェシマカクの種分化とヘモグロビン
マカカ属サルのa- グロビン遺伝子重複
チンパンジー,オラウータンのa- グロビン遺伝子重複
まとめ
Ⅴ フィールドワーク
1 スラウェシ調査行(渡邊邦夫)
フィールドワーカーと実験屋
ペットからの採血
情報の確かさ
フィールドの仁義
出てきた成果と研究の流れ
実験屋さんの苦労
おわりに
COLUMN スマトラの森での思い出(大井 徹)
2 栄養素の小窓から—フィールドと実験室を結んで— (中川尚史)
なぜ〈栄養素の小窓〉を開けることになったのか?
〈栄養素の小窓〉を開ける準備
〈栄養素の小窓〉
〈栄養素の小窓〉の開け方
〈栄養素の小窓〉を開けて見えたこと
〈栄養素の小窓〉からさらに見えること
〈栄養素の小窓〉を開けてみての感想
キーワード
あとがき
索 引
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