認知言語類型論原理
「主体化」と「客体化」の認知メカニズム

中野 研一郎

A5上製・344頁・税込 3,780円
ISBN: 9784814001170
発行年月: 2017/11
在庫あり

内容

「主体化」論理の日本語と「客体化」論理の欧米言語の 間で互換(翻訳)は可能なのか? 今、哲学・言語学・文 学・言語教育の基盤が問い直される。

目次

はじめに

第1部 「客観」という名の主観
第1章 本書の目的と理論的背景
第2章 言語類型論における「客観」主観の限界
1 Langackerのパースペクティブと「主体化(subjectification)」
2 英語における「主語性(subjecthood)」と「他動性(transitivity)」の消失現象
3「主体化されたトキ(modalized time)」と「客体化されたトキ(abstracted time)」

第2部 言語における「客体化」論理:英語を中心に
第1章 言語類型論における文法カテゴリの諸問題:「格」・「主語/目的語」の類型論における非普遍性
1 現代ドイツ語と古英語の文法・統語カテゴリ:「格」と「語順」
2 近代英語の統語・文法カテゴリ:「語順」と「主語/目的語」
3 言語類型論における「主語」という文法カテゴリのローカル性
   3-1.英語史から見た「主語」カテゴリのローカル性
   3-2.歴史言語学から見た「主語」カテゴリのローカル性
第2章 「客体化(objectification)」の認知メカニズム:「類像性」と「認知Dモード」
1 「構文主導主義」の限界:GoldbergとCroftの「構文文法(construction grammar)」というパースペクティブの言語類型論における限界
2 「認知Dモード(Displaced Mode of Cognition)」による事態把握と「類像性(iconicity)」を介した構文の創発・拡張現象
3 「認知Dモード」による事態把握とコミュニケーション:「客体化・客観化(文字化)」された事象の交換
4 「認知Dモード」による事態把握と文法カテゴリの創発 (1):アクション・チェイン・モデルと「二重目的語使役動詞構文(ditransitive causative verb construction)」
5 「語彙主導主義」の限界:Jackendoff及び影山の「語彙意味論(lexical semantics)」というパースペクティブの言語類型論における限界
6 「認知Dモード」による事態把握と文法カテゴリの創発 (2):「態」と「時制」
   6-1.「能動態」と「時制」
   6-2.「能動態」と「受動態」:「受動態構文(passive-voice construction)」における「力動性の伝達(transmittance of force dynamics)」と「伏在時間(concealed time)」


第3部 言語における「主体化」論理:日本語を中心に
第1章 「日本語やまとことば」の論理 (1):「認知様態詞(形容詞)」と「認知標識辞」の「が/ga/(由来・契機)」
1 「シク/shiku/」活用の「認知様態詞」
2 「認知標識(由来・契機)辞」の「が/ga/」
3 「主語・主格」カテゴリの不在
4 「ク/ku/」活用の「認知様態詞」
5 「日本語」と近代ヨーロッパ標準諸語間における文法カテゴリの非互換性:Langacker, Dixon, Croftの言語類型論における限界
第2章 「日本語やまとことば」の論理 (2):認知標識辞「は/wa/・が/ga/・で/de/・を/wo/・に/ni/」
1 認知標識辞「は/wa/」(1):「場」における「共同注視(joint attention)」機能
2 認知標識辞「は/wa/」(2):「場」における「参照点(reference point)」機能と「概念誘起(conception inducing)」
3 認知標識辞「は/wa/」(3):日本語における論理学的命題の未在
4 「共同注視」の認知標識辞「は/wa/」と「単独注意」の認知標識辞「が/ga/」:日本語における「格」カテゴリの不在
   4-1.「日本語」における統語カテゴリ(「主語」)と文法カテゴリ(「格」)及び意味役割の不一致
   4-2.「認知標識辞」としての「日本語やまとことば」の「は/wa/」・「が/ga/」
5 「認知標識辞」の「で/de/」:事象生起における「様態特性」の感知
第3章 「日本語やまとことば」の論理 (3):「態」及び「時制」の不在
1 「日本語やまとことば」における「態」の不在
   1-1.「日本語」における「態」という文法カテゴリの出自
   1-2.「日本語」の「れる/reru/・られる/rareru/」と「受け身文」
   1-3.「日本語」の「れる/reru/・られる/rareru/」構文に創発する「事態生起の不可避性(unavoidability)」という解釈
2 「日本語やまとことば」における「時制」の不在
   2-1.「蘇発化・現前化」標識としての「たり/tari/・た/ta/」
   2-2.「日本語」の時間標識「た/ta/」の出自
   2-3.「日本語」における「時制」という文法カテゴリの出自
第4章 「日本語やまとことば」の論理(4):「音=意味」による「主体化」と「主体化」論理の拡張及び変容
1 「日本語やまとことば」におけるオノマトペ(「様態音・語」):「音=意味」の「主体化」現象
2 「日本語やまとことば」の語彙生成:「音象徴(音=意味)」による「膠着」生成の認知メカニズム
3 「日本語やまとことば」の原母音:/ a /・/ i /・/ u /の「音象徴(音=意味)」と語彙生成の認知メカニズム
4 「日本語やまとことば」における「音象徴」と文法カテゴリ:「対格/与格」・「他動詞/自動詞」及び「過去時制」という文法カテゴリの不在
5 「日本語やまとことば」の論理の拡張と変容:「文字化・客体化・客観主観化」
   5-1.「認知標識辞・が/ga/」の通時的拡張と変容
   5-2.「日本語やまとことば」の論理の通時的変容

第4部 言語のグレイディエンス:英語の中の「主体化」論理と日本語のアクロバシー
第1章 英語における「主体化(modalization)」現象:「中間構文」・「構文イディオム」・「場所主語構文」・
「再帰構文」
1 「中間構文(middle construction)」の具体事例と分析視点
2 「中間構文」とLangackerの「主体化(subjectification)」
3 「中間構文」を創発させる「始原的内化の認知モード(Primordial and Assimilative Mode of Cognition):PAモード」
4 「中間構文」と「日本語やまとことば」の事態把握
5 「始原的内化の認知モード:PAモード」と英語の「構文イディオム(construction idiom)」・「場所主語構文(setting-subject construction)」・「再帰構文(reflexive construction)」
第2章 日本語のアクロバシー:「造語」と「脳内処理」
1 「訓読み」論理と「音読み」論理の混合
2 日本語の「読み」の脳内処理
第3章 「認知言語類型論」が予測する世界の言語のグレイディエンス分布

(解題)言語類型論の新展開 [山梨正明]

謝 辞
参考文献
索 引

プロフィール

中野 研一郎(なかの けんいちろう)

1959年 京都府生まれ
1983年 金沢大学法文学部英文学科卒
2011年 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得満期退学
    京都大学博士(人間・環境学)
現在 関西外国語大学短期大学部 准教授

主な論文・翻訳書
『認知文法論序説(Cognitive Grammar: A Basic Introduction)』(〔共訳〕山梨正明監訳,研究社,2011年),「言語における「主体化」と「客体化」の認知メカニズム「日本語」の事態把握とその創発・拡張・変容に関わる認知言語類型論的研究」(〔単著〕京都大学大学院人間・環境学研究科博士論文,2014年)