プリミエ・コレクション16
美と深層心理学

東畑 開人

A5上製・250頁・税込 3,024円
ISBN: 9784876982288
発行年月: 2012/06
在庫あり

内容

美に無意識はあるのか。至高の美へのとらわれ、醜形恐怖や摂食障害などの容姿への強迫的なこだわりから、芸術療法や箱庭療法、夢分析まで。美を病み、美に癒されることを深層心理学はまなざしうるのか。臨床事例や三島由紀夫の作品を通して、心理療法の立場から美の分析を行う。深層を拒む美の表層性とこころの関連が浮き彫りにされる。

目次

まえがき—美を病むこと

序論 心理療法における美の問題
   1 定義の確認
     心理療法の定義/美の定義
   2 美学の問い、心理療法の問い
     美学の問い/古代ギリシアから中世までの美学/近代以降の美学/心理療法の問い
   3 心理療法における美の研究
     芸術の心理療法的研究/芸術の研究における美の欠如/美に焦点づけた研究
   4 問題提起、フロイトのためらい
   5 本書の問い—心理療法の認識論における美の困難
   6 方法と本書の構成

第Ⅰ部 美と心理療法

1章 「偽の美」考
   1 芸術療法と美
   2 心理療法と美の背反性
   3 偽の美
   4 美の比較課題
   5 三歳児の飛躍
   6 二者関係から三者関係へ
   7 超自我と自我理想
   8 コモンセンスの方へ—カントの無人島
   9 ふたたび、「偽の美」
   10 まとめ
2章 醜から目を背ける
   1 醜のモーメント
   2 いくつかの先行研究と本章の問い
   3 「アンナ・O嬢」と〝みじめなブロイアーの神話〟
   4 「見難さ」から「目を背ける」
   5 醜と「かたち」
   6 モルフェーと「見つめ」
   7 人間を見つめて
   8 鑑賞的な態度
   9 まとめ
3章 ともに眺めること
   1 関係を繋ぐ美
   2 風景と自然
   3 抵抗・象徴・私
   4 少年と窓の外—ある事例
   5 ともに眺めることと外界
   6 美のはかなさと意味
   7 まとめ
4章 玩具の存在論
   1 環境設定と美
   2 仕掛けとしての玩具
   3 空白のスクリーン—表現の視点
   4 玩具は「遊び」についてくる
   5 イメージの戯れ—「遊び」の視点
   6 玩具の条件
   7 美とモノの主体性
   8 玩具の存在論
   9 まとめ—フロイトの診察室
第Ⅰ部 美と心理療法 跋

第Ⅱ部 美のパーソナリティー

5章 美的身体と他者
   1 身体の美的次元
   2 先行研究
   3 美的身体における他者の諸相
     まなざしとしての他者/他者からの拒絶の不安/基準としての他者/
     外部性としての他者/臨床群と一般群の分水嶺
   4 まとめ—鏡と他者
6章 皮膚的な自己
   1 美的身体と自己
   2 三島由紀夫・柏木・舟木収
   3 林檎の自意識
   4 他者の反応—共感不全
   5 Beauty is only skin deep
   6 皮膚的な自己
   7 まとめ
7章 唯美家と自己愛、死と表面
   1 美によって生きること
   2 唯美家と自己愛
   3 自己愛的に考えられた自己愛
   4 『金閣寺』という物語
   5 疎外・ガラス・表面
   6 死者との関係
   7 美と関係
   8 まとめ
第Ⅱ部 美のパーソナリティー 跋

第Ⅲ部 美の認識論

8章 美と深層心理学
   1 まなざしと夢
   2 芸術の研究に見られる美の位置づけ
   3 二重写しのまなざし
   4 美的体験と乳幼児の姿—対象関係論
   5 美・表面・主体性—元型的心理学
   6 まとめ—心理療法における美の問題
9章 表面をめぐる力動—葛藤の美的解決について
   1 日本の心理療法
     ローカルな視点/河合隼雄の美学—葛藤の美的解決/表面をめぐる力動
   2 ある臨床事例
     事例の概要(クライエントの語りのまとめ)/第一期「洞察・風景・沈黙」/
     第二期「箱庭と夢の語り」/第三期「性の変容」/第四期「別離と論文—出生の反復」
   3 表面をめぐる力動
     洞察的なありようと美的なありよう/ケガレ・性・精神病—表面の障害/
     清めのプロセスと転移/美的な次元の葛藤
   4 まとめ
第Ⅲ部 美の認識論 跋

結論 美の問題系
   1 外部性と表面性—本書のまとめ
   2 美と表面の問題系
   3 今後の課題
   4 最後に—心理療法の知とは何か?

あとがき
初出一覧
参考文献
索引

プロフィール

東畑開人(とうはた かいと)

1983年カナダ生まれ.博士(教育学)(京都大学,2010年).臨床心理士.2005年京都大学教育学部卒業,2010年京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了.現在,精神科診療所なかまクリニック心理士,沖縄国際大学非常勤講師.研究分野は力動的心理療法学・臨床心理学・医療人類学.

主要論文には,本書にも収録されている「葛藤の美的解決について」(『心理臨床学研究』),「玩具の存在論」(『箱庭療法学研究』)などの美に関わる論文と,「“Super-Vision”を病むこと」(『心理臨床学研究』29巻1号,2011年),「自己愛的に考えられた『自己愛』」(『心理臨床学研究』29巻3号,2011年)などの心理療法の諸概念を再考した論文がある.