災害対応の地域研究5
新しい人間、新しい社会
復興の物語を再創造する

清水 展・木村周平 編著

A5並製・402頁・税込 4,320円
ISBN: 9784876988990
発行年月: 2015/12
在庫あり

目次

口絵
「災害対応の地域研究」シリーズの刊行にあたって
凡例

はじめに―災害から新しい人間と社会の想像=創造へ [清水 展・木村周平]
本書のねらい /「復興」を長期で捉える /「創造的」復興へ / 現場の声と小さな物語 / 新しい人間と社会の想像=創造

第一部 紡ぎ出す、読み替える
第1章 先住民アエタの誕生と脱米軍基地の実現―大噴火が生んだ新しい人間、新しい社会 [清水 展]
1 スローワークの人類学から
2 アエタの被災と転生―国民=先住民の誕生
3 新しい人間―文化の意識化と生きる時空間の拡張
4 米軍基地の全面撤退―噴火とナショナリズム
5 フィリピン社会の新たな自画像の模索
6 自然災害が開く創造的復興のアリーナ
第2章 現場で組み上げられる再生のガバナンス―既定復興を乗り越える実践例から [大矢根淳]
1 既定復興とその批判的検討の履歴
2 新しい「復興の物語」に向けて―雲仙・阪神から中越・東日本へ
3 事前復興―減災サイクルと地域防災力の醸成
4 復興の物語を自前で組み上げていくために
第3章 復興の物語を読み替える―スマトラの「標準の復興」に学ぶ [山本博之]
1 災害対応における「余白」―都市再開発と強制排除
2 「既定の復興」―行政による復興事業
3 「標準の復興」―域外者による復興事業
4 「標準の復興」を読み替える
5 創造的復興を豊かにするために―スマトラから学ぶこと
コラム1 居住の権利―住むことは生きること [たけしまさよ]

第二部 忘れる、伝える
第4章 神戸という記憶の〈場〉―公的、集合的、個的記憶の相克とすみわけ [寺田匡宏]
1 記憶・公共性・〈場〉
2 震災“メモリアル博物館”設立の経緯と公の論理
3 個的記憶の心情
4 「メモリアルセンター論争」
5 無名の死者の捏造―被災と復興の演出
6 石として、樹として―震災モニュメント
7 課題と引き継がれるもの
第5章 プーケットにおける原形復旧の一〇年―津波を忘却した楽園観光地 [市野澤潤平]
1 喉元過ぎれば熱さ忘れる?
2 青天の霹靂
3 災害に対する観光地の脆弱性
4 観光業の低迷と焦燥
5 原形復旧型復興
6 記憶の放棄と痕跡の抹消
7 プーケットの視点から考える
コラム2 コミュニティ防災の決め手 [鍵屋 一]
第6章 制度の充実と被災者の主体化―生活再建をめぐるせめぎあいの二〇年 [重川希志依]
1 あらためて生活再建支援を考える
2 阪神・淡路大震災の衝撃―災害エスノグラフィーとの出合い
3 被災者の生活再建とり災証明書
4 普通のルートを通らぬ被災者
5 主体性を持った生活再建と公助のかたち
第7章 トルコ・コジャエリ地震の経験の継承―私の声が聞こえる人はいるか? [木村周平]
1 二〇一四年一〇月二三日
2 「復興」と記憶
3 制度化と忘却のダイナミズムとともに生きる
4 防災住民組織から緊急時のセミプロへ
5 「私の声」から「あなたに」へ

第三部 作り出す、立ち上がる
第8章 小さな浜のレジリエンス―東日本大震災・牡鹿半島小渕浜の経験から [大矢根淳]
1 レジリエンス概念をめぐって
2 牡鹿半島小渕浜「第11班」の底力
3 浜の復興―合併後遺症とArchiAidの試み
4 改正災害対策基本法第八六条の七(在宅被災者対応)
第9章 アートによる創造的復興の企て―保険に支えられた移動/再建 [大谷順子]
1 カンタベリー地震被災地の概況
2 災害保険制度に伴う自助中心主義
3 復興への希望―アート
4 ニュージーランドの事例を読み替える
第10章 復興ツーリズム―震災後の新しい観光スタイル [山下晋司]
1 災害と観光
2 震災後の対応
3 新しい観光スタイルの出現―ボランティア・まなび・絆
4 復興ツーリズム―記憶と忘却の彼方に
5 観光とリスク社会―再帰的ツーリズム
6 公共的課題の解決のために―公共ツーリズム
7 ツーリズムが紡ぎ出す新しい物語
コラム3 被災者と外部者の間から見たボランティアツーリズム [内尾太一]

おわりに―被災とともに [木村周平・清水 展]
コミットしてゆく研究―清水の呼びかけ /「地域」は後からやって来る / 災害対応の協働実践プラットフォーム / 呼びかけ―「あなた」へ / 木村からの応答

「災害対応の地域研究」シリーズの結びにかえて

索引
著者略歴

プロフィール

清水 展(しみず ひろむ)
京都大学東南アジア研究所教授【はじめに・第1章・おわりに】
研究分野:文化人類学、東南アジア研究
主な著作に、『草の根グローバリゼーション―世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略』(京都大学学術出版会、2013)、「応答する人類学」(山下晋司編『公共人類学』東京大学出版会、2014)など。

木村 周平(きむら しゅうへい)
筑波大学人文社会系助教【はじめに・第7章・おわりに】
研究分野:文化人類学、災害研究、科学技術社会論
主な著作に、『災害フィールドワーク論』(古今書院、2014、共編著)、『震災の公共人類学―揺れとともに生きるトルコの人びと』(世界思想社、2013)など。

大矢根 淳(おおやね じゅん)
専修大学人間科学部教授【第2章・第8章】
研究分野:災害社会学、地域社会学、社会調査論
主な著作に、『災害社会学入門』・『復興コミュニティ論入門』(ともに弘文堂、2007、共編著)、『津波被災地の500日―大槌・石巻・釜石にみる暮らし復興への困難な歩み』(早稲田大学出版部、2013、共著)など。

山本 博之(やまもと ひろゆき)
京都大学地域研究統合情報センター准教授【第3章】
研究分野:東南アジア地域研究、災害対応と情報
主な著作に、『脱植民地化とナショナリズム―英領北ボルネオにおける民族形成』(東京大学出版会、2006)、『復興の文化空間学―ビッグデータと人道支援の時代』(災害対応の地域研究1、京都大学学術出版会、2014)、『国際協力と防災―つくる・よりそう・きたえる』(災害対応の地域研究3、京都大学学術出版会、2015、共編著)など。

寺田 匡宏(てらだ まさひろ)
総合地球環境学研究所客員准教授【第4章】
研究分野:歴史学、ナラティブとメタヒストリー、環境と記憶・歴史
おもな著作に、『人は火山に何を見るのか―環境と記憶/歴史』(昭和堂、2015)、『記憶表現論』(昭和堂、2009、共編著)、『歴史・人間・災害』上・下(歴史民俗博物館振興会、2005、共編著)など。

市野澤 潤平(いちのさわ じゅんぺい)
宮城学院女子大学学芸学部准教授【第5章】
研究分野:文化人類学、観光学
主な著作に、「プーケット復興委員会の熱い夏―インド洋津波後のプーケット在住日本人の経験におけるリスクと孤独」(『地域研究』第11巻第2号、2011)、『リスクの人類学―不確実な世界を生きる』(世界思想社、2014、共編著)など。

重川 希志依(しげかわ きしえ)
常葉大学大学院環境防災研究科教授【第6章】
研究分野:都市防災、防災教育
主な著作に、『防災の決め手「災害エスノグラフィー」―阪神・淡路大震災秘められた証言』(NHK出版、2009、共著)、『都市再生のデザイン―快適・安全の空間形成』(有斐閣、2003、分担執筆)など。

大谷 順子(おおたに じゅんこ)
大阪大学大学院人間科学研究科教授、大阪大学副理事(社学連携室)【第9章】
研究分野:地域研究、国際保健人口学、社会政策、被災地の国際比較
主な著作に、Older People in Natural Disasters (Kyoto University Press & Trans Pacific Press, 2010)、『事例研究の革新的方法―阪神大震災被災高齢者の五年と高齢化社会の未来像』(九州大学出版会、2006)、『国際保健政策からみた中国』(九州大学出版会、2007)など。

山下 晋司(やました しんじ)
東京大学名誉教授・帝京平成大学現代ライフ学部教授【第10章】
研究分野:文化人類学、とくに観光や移民など人の移動と文化の生成
主な著作に、『公共人類学』(東京大学出版会、2014、編著)、『観光人類学の挑戦―「新しい地球」の生き方』(講談社、2009)など。

たけしま さよ
漫画家【コラム1】
兵庫県生まれ。阪神・淡路大震災後、神戸YWCA救援センターで活動。
主な著作に、『マンガ・愛ちゃんのボランティア神戸日記』(アース出版局、1995)、『マンガ 愛ちゃんの神戸巡回日記―三度目の冬が来た』(長征社、1997)(ともにhttp://volunteer.netswest.org/で無料公開中)、『マンガ おひとりさまの遠距離介護けもの道』(メディカ出版、2014)など。

鍵屋 一(かぎや はじめ)
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授【コラム2】
研究分野:地域防災、防災福祉
主な著作に、『“地域防災力”強化宣言―進化する自治体の震災対策』(ぎょうせい、2003)、『図解よくわかる自治体の防災・危機管理のしくみ』(学陽書房、2011)、『福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド』(東京都福祉保健財団、2014)など。

内尾 太一(うちお たいち)
麗澤大学外国語学部講師【コラム3】
研究分野:自然災害と人間の安全保障、現代日本の多文化共生
主な著作に、「東日本大震災の公共人類学事始―宮城県三陸地方における被災地支援の現場から」(『文化人類学』第78巻第1号、2013)、“Japanese Filipino Children between the Dichotomy of “Japanese” and “Non-Japanese”: Challenging a Policy Distortion in Tabunka Kyosei,” in J. Ertl et al. (eds.) Reframing Diversity in the Anthropology of Japan (Kanazawa University Center for Cultural Resource Studies, 2015)など。