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学術選書 084

サルはなぜ山を下りる?

野生動物との共生

室山 泰之

四六並製・208頁

ISBN: 9784814001217

発行年月: 2017/12

  • 本体: 1,800円(税込 1,980円
  • 在庫あり
 
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内容

野生動物と人間の生活空間に緩衝地帯がなくなるにつれて、シカやイノシシ、サルによる害が顕著になってきた。本書ではニホンザルに焦点を当て、かれらが集落周辺に現れるようになった歴史的経緯と行動特性を紹介し、被害が発生する原因を考察する。そして農家と行政の課題とその解決方法を検討し、ニホンザルと共生してゆく方策を探る。

書評

『日本経済新聞』2018年1月20日付朝刊 読書面
『京都民報』2018年2月25日付、評者:関本長三郎氏
『霊長類研究』Vo.34 No.1(2018年6月)、評者:大井徹氏

プロフィール

室山 泰之(むろやま やすゆき)
1962年生まれ。
東洋大学経営学部教授(マーケティング学科・自然科学研究室)。京都大学博士(理学)。
京都大学大学院理学研究科博士後期課程(霊長類学専攻)研究指導認定。
日本学術振興会特別研究員、京都大学霊長類研究所非常勤講師、科学技術振興事業団科学技術特別研究員(農林水産省森林総合研究所関西支所勤務)、京都大学霊長類研究所助手、同助教授、兵庫県立大学自然・環境科学研究所教授を経て現職。
主な著書
『里のサルとつきあうには─野生動物の被害管理』(京都大学学術出版会、2003年)、「サルの個体群と生息地の管理技術」『野生動物管理-理論と技術-』(羽山伸一・三浦慎悟・梶光一・鈴木正嗣編、文永堂、分担執筆、2012年)、「サル目(霊長類目)」『小学館の図鑑 NEO 動物(新版)』( 小学館、分担執筆、2014年)、など。

目次

まえがき

第1章 なぜいま集落周辺に野生動物がいるのか?―これまでの経緯と現状
1 中山間地域における人と野生動物との軋轢
2 野生動物の生息状況―戦前から戦後にかけて
3 エネルギー革命と農村部の経済構造の激変
4 人と野生動物との「境界」の移り変わり
5 農作物を採食しはじめた野生動物
6 なぜ集落周辺に野生動物がいてはいけないのか
コラム 加害動物の象徴としてのニホンザル

第2章 サルの生態と行動
1 ニホンザルとはどんな動物か
2 ニホンザルの社会構造
3 成長と繁殖と個体数の変化
4 生息環境と活動パターン
5 食性
6 知覚と学習
7 運動能力
8 集落に出没するニホンザルの行動と生態
9 サルはもともとそんなにやっかいな動物なのか
コラム 日本(北海道を除く)に生息しているおもな野生動物

第3章 野生動物がいるから「被害が起こる」?―被害発生の原因
1 なぜ被害が発生するのか?
2 被害防止の基本的な考え方
3 農作物を餌だと思わせない
4 農作物への依存度と人馴れの程度
5 さまざまな障壁を使って農作物を守る
6 被害対策をするときの注意点
7 人と野生動物の生活空間を切り離す
8 人が撤退すれば被害はなくなるのか?
コラム 群れ生活をするサルの特性を利用する

第4章 被害対策はだれがするのか―農家主体の被害対策
1 農家は「被害者」であると同時に「当事者」でもある
2 農業のいちばんの目的は何か
3 被害対策を地域振興に利用する
4 農家の多様な背景とニーズ
5 被害対策の意思決定者は農家
6 「集落ぐるみ」の本当の意味
7 追い払いはうまくゆくか?
8 農作業の中に野生動物の被害対策を
コラム 集落防護柵の功罪

第5章 行政による野生動物管理―現状と課題
1 科学的なデータにもとづく野生動物管理
2 都道府県レベルのモニタリング体制の確立
3 都道府県および国レベルでの部局横断的協力体制の構築
4 どのような人材が必要か
コラム 被害管理と被害防除

第6章 行政による被害管理―行政内部の課題
1 被害管理の実態―集落防護柵と個体数調整
2 どのような人材が必要か
3 県庁と地域振興局との温度差
4 都道府県と市町村との関係―行政上もっとも大きな問題
コラム 農業普及員や試験研究機関研究員、農協職員の活用

第7章 捕獲で被害を減らせるか?
1 捕獲するとはどういうことか
2 なぜ捕獲では被害がなかなか減らないのか
3 被害軽減と捕獲との関係
4 捕獲が必要な場合とは
5 人と野生動物との適切な関係を保つために必要な捕獲
コラム 人馴れを進めないために

第8章 農家と行政
―被害対策をどのように進めてゆくか
1 支援者としての行政の重要性―現場に出かける
2 ニーズにあった適切な事業を
3 被害現場がコミュニケーションの場
4 知識や技術をどのように伝えてゆくか
5 風通しのよい支援体制の確立を目指して
コラム 講演会や勉強会だけでは伝わらないもの

第9章 被害問題における研究者の役割
1 野生動物の研究者とは何か
2 研究者から見た鳥獣行政のあり方
3 研究者は具体的にどうすべきか
4 被害対策を目的とした技術開発とモデル事業づくり
コラム 行政による研究者の活用方法

第10章 農家と都市住民―新たな関係構築の必要性
1 生産者としての農家と消費者としての都市住民
2 生態系サービスの守り手としての農家
3 さともん―特定非営利活動法人「里地里山問題研究所」
4 さともんネットワークの六つのステージ
5 都市住民との情報の共有化とネットワークづくり

第11章 野生動物との新たな関係の構築をめざして
1 野生鳥獣は山の恵み―地域住民の資源とその価値の再認識
2 国策としての鳥獣行政の移り変わり
3 法律改正による「科学的な野生動物管理」の導入と被害問題との乖離
4 「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」の制定
5 ふたたび法律改正による捕獲体制の大転換―地域から切り離された野生鳥獣はどこへ行くのか
6「敬して距離を置く」関係を取り戻すには
コラム 遅すぎた雌ジカ禁猟の解禁

あとがき
資料
引用文献
参考文献
索引
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