西洋古典叢書 第Ⅳ期

アキレウス・タティオス
レウキッペとクレイトポン 中谷彩一郎 訳

テュロス、アレクサンドリア、エペソスの3都市を舞台に繰り広げられる波瀾万丈の恋と冒険の物語。一人称の語りや精緻な絵画描写をはじめとする修辞を駆使した物語技法に加え、ジャンルの規範を逸脱するような暴力性や猥雑さは、ローマ帝政下のギリシア語で書かれた現存する5つの古代ギリシア恋愛小説の中でも異彩を放っている。

アラトス/ニカンドロス/オッピアノス
ギリシア教訓叙事詩集 伊藤照夫 訳

ヘシオドスに始まるギリシアの教訓叙事詩の伝統は、ヘレニズム時代において新たな装いで再生をはたす。古典の学識を利用しつつ、神話、人生訓、哲学、天文学、漁業等々にわたる広範囲の内容を韻律形式にまとめる。アラトス『星辰譜(パイノメナ)』、ニカンドロスの『有毒生物誌』『毒物誌』、オッピアノス『漁夫訓』を収める。本邦初訳。

アリストテレス
トピカ 池田康男 訳

オルガノン(道具)の名で呼ばれるアリストテレスの論理学著作は6つあるが、本書はそのうち弁証術(ディアレクティケー)を学問的に確立した著作である。学のあらゆる分野において意見の分かれる問題や前提に関わりながら、それに対応するさまざまな述語様式を吟味し検討する。その意味においてあらゆる学の原理的命題へ通じる道を拓いてくれる。

アルビノス他
プラトン哲学入門 中畑正志 編

古代においても読者の心をとらえて放さなかったプラトン哲学について、古代後期の人たちによって書かれた手引き書。アルビノス、アルキノオス、アプレイウス、ディオゲネス・ラエルティオス、オリュンピオドロス、著者不明(2~5世紀)などの入手しがたい解説書をここに一書にまとめる。現代人とは異なるさまざまな読み方があって興味深い。

ガレノス
ヒッポクラテスとプラトンの学説2 内山勝利・木原志乃 訳

ガレノスの主たる関心は、ストア派のクリュシッポスなどの同時代の医学理論との格闘にあったが、常に生命システムの有機的な連関を念頭に置きながら、人間の本質を見すえている。第1分冊では、心臓統括論やプネウマ論を批判したが、本書ではさらに進んで、視覚理論や要素理論、探求の方法論へと論争を拡大させる。(全2冊)

クイントス・スミュルナイオス
ホメロス後日譚 森岡紀子 訳

ホメロス『イリアス』の終わった時点より歌い始めた一四巻の英雄叙事詩。アマゾン族ペンテシレイアの戦いと死、エチオピア人メムノンの戦いと死、アキレウスの死とその武具をめぐる争い、争いに敗れたアイアスの狂気と死、木馬の建造、神官ラオコオンが大蛇に襲われる次第等々、ホメロスにはないトロイア戦争の出来事を一続きに語る。

クセノポン
ソクラテス言行録 内山勝利 訳

『ソクラテスの思い出』を中心とする一連の「ソクラテス書」は、健全な良識家クセノポンの目に映った理想的人物としてのソクラテスを描き出している。哲学者プラトンの対話篇中のソクラテス像との相違が、かえってその歴史的実像に深い陰影をあたえている点でも興味深い。他に『饗宴』『家政論』『ソクラテスの弁明』を収録する。

セクストス・エンペイリコス
学者たちへの論駁3 金山弥平・金山万里子 訳

『自然学者たちへの論駁』『倫理学者たちへの論駁』の二書を収める。懐疑主義の立場から、この領域における独断的主張を論駁し、判断保留(エポケー)を勧める。前者は、神の概念およびその存在、場所・運動・時間の存在などについて、後者は、善悪と無差別的なもの、善悪の判断と幸福との関係、生を導く技法などの問題を扱う。(全3冊)

テオプラストス
植物誌1 小川洋子 訳

本書は、植物学書として顕微鏡発明以前の最高水準の観察記録である500余種の記載を残した点で時代を超えた価値をもつ。植物に関する多くの重要な概念をつくった功績も大きいが、農学、林学、薬学の応用科学書、実用書という面をももっている。学問が理論と応用を総合するものであった時代精神を伝えるものとして意義深い一書である。(全3冊)

デモステネス
弁論集2 木曽明子訳

前336年デモステネスに栄冠を授けるべしという提言がなされたが、アイスキネスは彼の全公共生活を攻撃してそれに反対した。これに対するデモステネスの弁明演説が、古代の生んだ最も完璧な弁明作品『冠について』である。この弁論によってアイスキネスはアテナイ退去をよぎなくされる。他に公訴弁論『使節義務不履行について』を収める。(全7冊)

ピロストラトス
ギリシア図像解説集 羽田康一 訳

原題は『エイコネス』。絵や彫刻を言葉で記述するエクプラシスという技法は早くから用いられるが、後の叙事詩にも多用され、修辞学上の技法となり美学理論とも結びついていく。ティティアーノ等の画家は、逆に本書から実際の絵を描いた。祖父、孫二人のピロストラトスの手になる作品を訳出し、本書の記述に基づく絵を多数収録する。本邦初訳。

ピロストラトス
テュアナのアポロニオス伝1, 2  秦 剛平 訳

フラウィオス・ピロストラトスがセウェルス帝の后ユリアの依頼を受けて執筆した、1世紀のピュタゴラス主義者アポロニオスを主人公とする異色の聖人伝。ピュタゴラスの生を再び生きることを自らに課したアポロニオスは予言の力をもち、悪魔祓いや病人の治療、死者の甦生など幾多の奇蹟をおこないながら諸国を遍歴する。本邦初訳(全2冊)

アリストクセノス/プトレマイオス
古代音楽論集 山本建郎 訳

古代劇や抒情詩における音楽の役割は重要であるが、いまだ十分な研究がされていない。本書は古代の著名な音楽理論を収載する。アリストクセノス(前4世紀)の『ハルモニア原論』は聴覚を重んじ、音程を数比で決めるピュタゴラス派の見解を排したことで知られる。あわせて、天文学者プトレマイオスの手になる小品『ハルモニア論』を収める。

プラトン
饗宴/パイドン 朴 一功 訳

『饗宴』では、悲劇作家アガトンが悲劇競演で優勝した折りに、祝賀の宴が催され、喜劇作家アリストパネスなど、参加者たちの面々が「エロース(恋)讃美」を繰り広げる。『パイドン』は、ソクラテスの死刑に立ち会った友人たちを相手に、死にゆく師ソクラテスが「魂の不死」をテーマに交わした対話篇。いずれも中期プラトンを代表する至高の名品。

プルタルコス
英雄伝1, 2 柳沼重剛 訳

わが国で『英雄伝』の名前で親しまれている対比列伝は、ギリシア・ローマの著名な政治家をそれぞれ比較しつつ、歴史書によくある事績や戦功を記すよりは、むしろその人物の性格、生きざまを生き生きと描いた言行録である。古くから多くの読者に愛読され、その近代語訳はシェイクスピアやモンテーニュにも影響をあたえた。ここに新訳を提供する。

プルタルコス
モラリア1 瀬口昌久 訳

おべっかと真の友人をどのように見分けるかを説いた『似て非なる友について』、子供を賞めたり叱ったりしても、けっして手をあげてはならないと諭す『子供の教育について』、拍手喝采よりも真理があるかを見逃すなと警告する『講義を聴くことについて』など、感受性豊かなモラリストのプルタルコスが古典から引用しつつ読者に語りかける教育的エッセー。

プルタルコス
モラリア5 丸橋 裕 訳

エジプト古来の宗教や神性を多様な史料をもとに述べた『イシスとオシリスについて』、アポロン神殿に掲げられていた謎の文字をめぐる『デルポイのEについて』、昔に比べ宗教的信仰が衰え、神々の力や善意を人間が疑うようになったのはなぜなのかを論じた『神託の衰微について』など、デルポイの神官職にあった著者が得意の神学的思索を展開する。

プルタルコス
モラリア7 田中龍山 訳

ソクラテスの行動をさまざまな場面で抑止したとされるダイモニオンを話題に、くしゃみ説などを検討した『ソクラテスのダイモニオンについて』、筆者自身が登場人物になって、悪人が罰をうけないのはなぜかを論じた『神罰が遅れて下されることについて』、厳しい境遇にある相手に語りかけた書簡『亡命について』など珠玉のエッセー9篇を収める。

ポリュビオス
歴史2 城江良和 訳

前3世紀の第三次マケドニア戦争の後、人質としてローマに送られてきたポリュビオスが、小スキピオの庇護の下につぶさに見聞したことを材料に、前220年から146年までの歴史を詳細に記述する。本書では、王制、貴族制、民主制の国制循環論やローマの混合共和制度など、後世に大きな影響をあたえた歴史観が語られる。本邦初訳(全4冊)

アエリウス・スパルティアヌス他
ローマ皇帝群像3 桑山由文・井上文則 訳

本分冊は、まず、理想の皇帝とされたアレクサンデル・セウェルス帝の治世に始まり、次いで、それを殺害した最初の軍人皇帝マクシミヌスとこのマクシミヌスに反旗を翻したバルビヌスとプピエヌス、三人のゴルディアヌス(ゴルディアヌス三世の統治は244年まで)の伝記へと続き、一部欠落を経て、ウァレリアヌス帝の治世末期とその息子ガリエヌスの治世が叙述される。そして、本分冊の最後にあたる「三〇人僭主」は、主としてガリエヌスに対して各地で反乱を起こした簒奪帝たちの伝記である。(全4冊)

クインティリアヌス
弁論家の教育2 森谷宇一他 訳

わずか2年ほどで書き上げられたとされる『弁論家の教育』全12巻は、自身の教育者としての経験を生かしつつ、幼児から一人前の弁論家になるまでの弁論術教育について詳述する。以来キリスト教教父や文人の間で読み継がれ、近代以降においてその文化・教育理念は広く受け入れられた。本書には第3巻から第5巻まで収載する。本邦初完訳。(全5冊)

リウィウス
ローマ建国以来の歴史1  岩谷 智 訳

古代ローマ最大の歴史家ティトゥス・リウィウスは、約40年間の歳月を費やして、ローマ建国者ロムルス(前753年)からティベリウス帝の弟ドルススの死(前9年)までに及ぶ『ローマ建国以来の歴史』142巻を著わした。このうち現存するのは35巻とわずかな断片である。このうち本書はローマ太古の伝説的な部分を扱っている。(全14冊)

リウィウス
ローマ建国以来の歴史3  毛利 晶 訳

ガリア人によるローマ占拠(前390年)という災厄から立ち直ったローマが周辺諸国を征服し、ラティウム=カンパニア地域に覇権を築き上げるまでの歴史を編年体で描く。本書は原著の第6巻から第8巻第24章までを収録する。単に事実に即して歴史を編纂したものではなく、文学的資質に富んだ臨場感あふれる記述になっている。(全14冊)