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学術選書 093

学習社会の創造

働きつつ学び貧困を克服する経済を

池上 惇 著

四六並製・342頁

ISBN: 9784814002931

発行年月: 2020/10

  • 本体: 2,000円(税込 2,200円
  • 在庫あり
 
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内容

経済が閉塞状態にあると言われる現代の日本社会で、「学びあい育ちあいの場つくり」はいかにして実現するだろうか。多くの教育現場や企業現場にあって、穏やかで、互いを尊重しあう、共に生きる場を求めることは可能なのか。本書は、文化政策・まちづくり大学校(市民大学院)の創立に関わった著者が、大きな広がりをもつ学習社会の構築を目指し、人口減少地域に学習拠点を置いて、試行錯誤を重ね、多数の篤志家の支援を得て、復興、地域再生の拠点とする試みの実践記録である。

書評

『月刊社会教育』2021年6月号、46-47頁、評者:佐藤一子氏

プロフィール

池上 惇(いけがみ じゅん)

1933年大阪市生まれ。
京都大学名誉教授、福井県立大学名誉教授、京都橘大学名誉教授
現在、国際文化政策研究教育学会会長。

著書に、『財政学』(岩波書店)、『財政思想史』(有斐閣)、『文化と固有価値の経済学』(岩波書店)、『文化資本論入門』(京都大学学術出版会)など多数

目次

はしがき―穏やかな、ともに生きる健康長寿社会を目指す方々へ

序 章 自然からの学習と「学びあい育ちあう」社会を目指して

第1章 これからの学習社会
―被災地での新たな活動をめぐって
1 はじめに―ふるさと創生大学による学習の場づくり
2 共に歩んだ道―池田清氏の神戸研究
3 社会人と留学生に博士の学位を―十名直喜氏の定年に思う
4 おわりに―高校生への感謝の言葉とふるさと創生大学憲章

第2章 学習社会の創造
―日本の思想としての学習社会構想
1 はじめに―学習社会の日米比較
2 日本における学習社会の構想
3 行基の実践
4 欧米の人権論の検討―人権論と学習論
第3章 学習格差を克服するには
―「恣意」と「生命・生活への欲求」、新たな人権論の登場
1 はじめに―法を暮らしの中に生かす動き
2 欧米の動き―学習権確立への道=学習社会論を提起したイギリス工場査察官の労働日研究
3 情報社会と学習社会
4 所得格差・文化格差の是正へ
5 生存競争社会における人間の孤立化と弱者の社会的排除

第4章 二宮尊徳の学習理論
―二宮尊徳による報徳=学習社会の実現
1 はじめに―報徳という表現による学習社会の創造
   ―自然や人間同士の共生・学びあい育ちあいを実現する道
2 食文化思想・実践から見た尊徳思想
3 衣の文化、インテリア・デザインの現代的な展開
4 学習社会の創造における私的所有の意義と限度
   ―尊徳思想における小農の位置と地域ファンド形成の役割

第5章 推譲思想と尊徳仕法
1 はじめに―現代に生きる尊徳思想
2 推譲による総有と信託制度の活用
   ―″荒蕪を開く物語″が生み出す推譲・総有と信託制度
3 推譲による総有と私的所有を維持しつつ超えるもの
   ―学習社会の創造を可能にする所有形態を考える
4 相互扶助の文化によって新しい地域の産業を創る
   ―地域循環型産業の展望を拓くには

第6章 文化資本の経営を生み出す学習社会
―文化資本の未熟な学習社会から、成熟した社会への発展
1 はじめに―人間発達史観から見た、実現可能な学習社会の目標=文化資本の経営
2 通信制教育研究システム
   ―第1回講義録「文化資本の経営 事始め」
3 コモン・ストックから人的投資へ(1)
4 コモン・ストックから人的投資へ(2)
5 結論と展望 コモン・ストックから人的投資へ(3)

第7章 討論の広場
1 コモン・ストック論に寄せて
   ―池上惇先生への応答
2 文化資本の経営を考える
3 文化資本の経営へのコメント
4 文化資本による自己確立と″微妙な差異を創造するデザイン能力″
5 ふるさと創生大学講義録を読んで

第8章 人権と能動的な力量
―A・センの所得貧困と能力貧困を基礎に貧困克服の道を探求する
1 はじめに―河上肇による現代貧困論の提起と生命・生活の危機
2 T・ピケティ『21世紀の資本』
3 能力貧困を克服する人類の経験
4 A・センの能力貧困論
5 身につけた力(エンタイトルメント)と能動的な力(エンパワーメント)

おわりに―学習社会の創造=格差克服への道が目指すもの
―ふるさと学校づくりを日本と世界に

参考文献
索 引
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