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国際法の誕生

ヨーロッパ国際法からの転換

中井 愛子

A5上製・720頁

ISBN: 9784814002580

発行年月: 2020/11

  • 本体: 5,900円(税込 6,490円

12月初旬発売予定

 
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内容

独立と自由を守るために築いた「秩序」の防波堤。集団安全保障、外交的庇護、武力行使の禁止……国際秩序のドクトリンは、西洋の支配に抗うためにラテンアメリカ諸国がつくったものだった。スポットライトを浴びなかった国際法の実質的起源を明らかにした瞠目の書。「西洋から発展した国際秩序」の常識がくつがえる。

プロフィール

中井 愛子(なかい あいこ)
大阪市立大学大学院法学研究科准教授(国際法)。中央大学法学部卒業。ブリュッセル自由大学欧州学研究所修了(DES)。パリ第1大学大学院博士課程中退。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、外務省経済局調査員、京都大学白眉センター・法学研究科特定助教を経て、2020年より現職。
主な著作に、共著書として、Guerrero, J. C., ed., Perspectivas multidisciplinarias sobre la Argentina contemporánea(Universidad Nacional de Córdoba, et. al., 2019)。共訳書として、ジグムント・バウマン著『グローバリゼーション:人間への影響』(法政大学出版局、2010年)、ギヨーム・ダンドロー著『NGOと人道支援活動』(白水社クセジュ、2005年)。

目次

序 論 国際法と非欧州
    ――非欧州諸国は国際法に何をもたらしたか?
 1 本書の目的、問題意識および構成
  (1) 国際法とは何か――近代国際法と非欧州諸国
  (2) 本書の構成
 2 本書の研究対象
  (1) ラテンアメリカ国際法の定義
  (2) ラテンアメリカ諸国の範囲

第一部 ラテンアメリカ国際法の生成

はじめに

第Ⅰ章 ラテンアメリカ国際法の誕生
    ――「米州公法」の追求
 1 ラテンアメリカ国際法の起源
  (1) ラテンアメリカ諸国の独立
  (2) ラテンアメリカ国際法のはじまり
 2 ボリーバルの米州公法構想
  (1) 米州公法の構想
  (2) 米州公法とモンロー主義――共通点と相違点
 3 パナマ会議――第1回地域的国際会議
  (1) パナマ会議における米州公法創出計画
  (2) パナマ条約
 4 結論――米州公法としてのラテンアメリカ国際法の本質
  (1) ラテンアメリカ国際法の存在理由
  (2) ラテンアメリカ国際法と一般国際法
  (3) ラテンアメリカ国際法と欧州公法

第Ⅱ章 パナマ会議後のラテンアメリカ国際法の展開
1 パナマ会議後の地域的国際会議
  (1) 連合化を目的とする諸会議(1847-64)
  (2) 法の問題に関する専門的・技術的諸会議(1877-)
 2 汎アメリカ会議
  (1) 米州諸国国際会議・米州会議
  (2) 特別会議
 3 地域的国際会議とラテンアメリカ国際法の展開
 4 ラテンアメリカ国際法の実定的諸原則およびドクトリン
  (1) ラテンアメリカ国際法の諸原則
  (2) 地域的特徴を有するドクトリンおよびその他の実行

第Ⅲ章 ラテンアメリカ国際法の理論の形成
 1 ラテンアメリカ国際法の概念化
  (1) ラテンアメリカ国際法の概念をめぐる学術的議論
  (2) 本章の構成
 2 ラテンアメリカ国際法の理論の形成(1844-)
  (1) アルベルディのラテンアメリカ国際法論
 3 ラテンアメリカ国際法の「存否」をめぐる3つの論争(1883-1923)
  (1) アルコルタのラテンアメリカ国際法論:第1論争(1883)――Nueva revista de Buenos Aires 誌
  (2) アルバレスのラテンアメリカ国際法論:第2論争(1908)――第1回汎アメリカ科学会議
  (3) 第3論争(1923)――第5回米州諸国国際会議
 4 地域的国際学会および地域的機関の決議
  (1) 第1回汎アメリカ科学会議(1908)
  (2) 米州システムの諸会議
  (3) 米州国際法に言及したその他の諸文書
 5 国家実行におけるラテンアメリカ国際法の概念の承認
  (1) ラテンアメリカ国際法をめぐる諸国の見解
  (2) ICJ庇護権事件(1950)
 6 結論――ラテンアメリカ国際法の理論的基礎とその意義
  (1) ラテンアメリカ国際法論争の本質
  (2) ラテンアメリカ国際法の理論的基礎
  (3) 先行研究の問題点

第Ⅳ章 欧州におけるラテンアメリカ国際法概念の受容
    ――欧州国際法の相対化
 1 欧州における国際法の地理――文明国間の国際法としての欧州国際法
  (1)「欧州国際法」の登場
  (2) 欧州国際法と「国際法」
 2 非欧州諸国と国際法の適用範囲――文明の基準論
  (1) 非欧州の諸国民・諸民族と国際法
  (2) アジアと米州への異なる帰結
 3 米州における国際法の地理
  (1)「欧州国際法」から「欧州と米州の国際法」へ
  (2) ラテンアメリカからの批判――「欧州と米州の国際法」から「欧州国際法と米州国際法」へ
 4 20世紀の欧州における国際法の地理の変容
    ――ラテンアメリカ国際法の帰結
  (1) 欧州の国際法学の初期の反応
  (2) 地域的国際法概念の受容
 5 結論――国際法の誕生
  (1) 米州の国際法学がもたらした変化
  (2) ラテンアメリカ国際法のインパクト

第二部 現代国際法解釈とラテンアメリカ国際法

はじめに
 1 ラテンアメリカ国際法と一般国際法
  (1) ラテンアメリカ国際法と一般国際法
  (2) 第二部の問題意識
 2 ラテンアメリカ諸国の一般国際法への特別な寄与
  (1) 2つの変化
  (2) 具体的な国際法領域・国際法規則

第Ⅴ章 国家責任追及手段の制限
    ――カルボ主義およびドラゴ主義
 1 問題の所在
  (1) 国家責任法とラテンアメリカ
  (2) 本章の対象と課題
 2 カルボ主義の形成
  (1) カルボ主義の形成の歴史的背景
  (2) 国家実行における内国民待遇ドクトリンの発現
 3 カルボ主義とは何か
  (1) 原典にみるカルボ主義――『国際法の理論と実践』
  (2) カルボ主義の根拠と論理
  (3) カルボ主義の理論的特徴
 4 カルボ主義の解釈論――理解と誤解
  (1) カルボ主義と外交的保護
  (2) 国家責任発生の実体的要件
  (3) カルボ主義と国際的な司法による紛争解決
  (4) カルボ主義とカルボ条項
 5 ラテンアメリカ諸国によるカルボ条項の実践
  (1) カルボ条項の諸類型および実例
  (2) カルボ条項と国際法
 6 国家責任法の展開とカルボ主義・カルボ条項
  (1) 19世紀の国家実行における国内救済完了原則
  (2) 混合請求委員会による国際仲裁の主要裁定
  (3) 混合請求委員会仲裁裁定におけるカルボ条項の効力・効果の判断
  (4) 北米浚渫会社事件裁定
 7 国際的な司法による紛争解決の推進とカルボ主義
  (1) 汎アメリカ会議
  (2) ハーグ平和会議
  (3) カルボ条項の変化
  (4) カルボ主義・カルボ条項の敗北か
 8 残された問題――「内国民待遇ドクトリン」としてのカルボ主義
 9 ドラゴ主義とは何か
  (1) ドラゴ主義とカルボ主義
  (2) 原典にみるドラゴ主義
  (3) ドラゴ主義の修正――欧州の諸学説との対話
  (4)「国家の借財論」による修正
  (5) 残された問題――「比較衡量ドクトリン」としてのドラゴ主義
 10 国家責任法の展開とドラゴ主義
  (1) ドラゴ・ポーター条約
  (2) ドラゴ主義の貢献と限界
 11 結論

第Ⅵ章 外交的庇護
 1 問題の所在
  (1) 外交的庇護の史的展開
  (2) 本章の対象と課題
 2 現代の国際法上の庇護
  (1) 庇護の起源と国際法
  (2) 国際法上の庇護の定義と諸類型
  (3) 違法な行為としての外交的庇護
 3 欧州における外交的庇護の史的展開――適法性の否定
  (1) 欧州における国家実行と学説の展開
  (2) 外交的庇護の「消滅」
  (3) スペイン内戦――外交的庇護をめぐるチリ・スペイン対立
 4 ラテンアメリカにおける外交的庇護の史的展開――適法性の付与
  (1) ラテンアメリカにおける国家実行と学説の展開
  (2) 外交的庇護の国際的規律の模索の開始
  (3) 地域的諸条約の採択
  (4) ラテンアメリカにおける特殊な展開と背景
 5 地域的諸条約の規定
  (1) 適法な外交的庇護の対象者
  (2) 緊急性の要件
  (3) 領域国への報告義務および被庇護者の行動制限
  (4) 外交的庇護の終了
  (5) 外交的庇護の理論的側面に関する諸規定
 6 ラテンアメリカ諸国の主要な国家実行および公式見解
  (1) 南米諸国
  (2) 北中米・カリブ海諸国
 7 外交的庇護に関するICJ判決
  (1) 1つの事案、2つの判決――庇護権事件判決とアヤ・トーレ事件判決
  (2) 庇護権事件の事案および当事者の請求
  (3) 庇護権事件判決の判旨
  (4) 庇護権事件の反対意見およびICJ規程第63条1項の諸国の見解
  (5) 判決と反対意見の分岐点
 8 ラテンアメリカの外交的庇護は法的性質を欠くか
  (1) ICJによる判断と論理
  (2) ICJ判決の妥当性の検証
  (3) カラカス条約による法的権利義務関係の明文化
 9 条約と実行からみるラテンアメリカの外交的庇護
  (1) 法的義務としての政治的庇護の尊重
  (2) 事実上の尊重との相違
  (3) ラテンアメリカの外交的庇護は地域的慣習法か
  (4) 人道的な法制度としての性質
  (5) 未解決または将来的に変化がありうる諸問題
 10 在外公館での個人の保護をめぐるグローバルな議論とラテンアメリカの外交的庇護
  (1) 他地域には外交的庇護は存在しないのか
  (2) 一時的避難
  (3) 法制度化の是非
  (4) 人権条約の領域外適用と外交的庇護
 11 結論
  (1) ラテンアメリカの外交的庇護の性質
  (2) 国際的な個人の保護をめぐるグローバルな展開との関係

第Ⅶ章 ウティ・ポシデティス・ユリス
 1 問題の所在
  (1) 脱植民地化の領土・国境問題とラテンアメリカ
  (2) 本章の対象と課題
 2 ウティ・ポシデティスの前史と基本概要
  (1) 前史――18世紀までの国内法・国際法上のウティ・ポシデティス
  (2) ラテンアメリカのウティ・ポシデティスの基本概要
 3 ウティ・ポシデティス・ユリスの提唱
  (1) ウティ・ポシデティス・ユリスの提唱
  (2) 各国の憲法にみる領土の認識
 4 諸条約におけるウティ・ポシデティス・ユリス
  (1) 1850年代までの二国間条約
  (2) 1860年代以降の二国間条約
  (3) ブラジルを一方当事国とする二国間条約
  (4) 地域的多国間条約におけるウティ・ポシデティス・ユリス
 5 ウティ・ポシデティス・ユリスの法と実際
  (1) 諸条約に反映されたウティ・ポシデティス・ユリス
  (2) 国境画定の実際――共通点と相違点
 6 事例検討1:仲裁・裁判でウティ・ポシデティス・ユリス線を特定した諸事例
  (1) コロンビア・ベネズエラ国境
  (2) コロンビア・コスタリカ国境
  (3) ボリビア・ペルー国境(河川流域地帯)
  (4) エルサルバドル・ホンジュラス国境
  (5) グアテマラ・ホンジュラス国境
  (6) 小括
  7 事例検討2:合意でウティ・ポシデティス・ユリス線を特定した諸事例
  (1) ボリビア・ペルー国境(高地地帯)
  (2) アルゼンチン・チリ国境
  (3) 小括
 8 事例検討3:ウティ・ポシデティス・ユリス線を特定しなかった諸事例
  (1) アルゼンチン・ボリビア国境
  (2) エクアドル・ペルー国境
  (3) 武力による現状変更が介在したその他の事例
  (4) 小括
 9 事例検討4:ウティ・ポシデティス・ユリスの不適用
  (1) ウルグアイ――国家の成立経緯に起因する不適用
  (2) パラグアイ――植民地権力の継承の否定による不同意
  (3) マプーチェ独立運動(アラウカニア・パタゴニア王国)――先住民の独立運動
  (4) 小括
 10 検討結果の総括――ウティ・ポシデティス・ユリスの本質
  (1) ウティ・ポシデティス・ユリスの本質と性質
  (2) ウティ・ポシデティス・ユリスの構造
  (3) ウティ・ポシデティス・ユリスの応用
  (4) ウティ・ポシデティス・ユリスの実際の機能と限界
 11 結論
  (1) ウティ・ポシデティス・ユリスはいかなる原則であったのか
  (2) 今日の理解と本章の検討結果

結論――多様性の擁護と共通の価値の探求
 1 第一部の総括
  (1) ラテンアメリカ国際法の存在理由
  (2) ラテンアメリカ国際法の理論の構築
  (3) 欧州国際法の相対化
  (4) 国際法の観念の転換の背景
 2 第二部の総括
  (1) 国家責任追及手段の制限――カルボ主義およびドラゴ主義
  (2) 外交的庇護
  (3) ウティ・ポシデティス・ユリス
 3 終わりに

あとがき

索引
 判例・事例
 条約・国際文書
 事項
 人名
 国名・地域名
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