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プリミエ・コレクション 105

桑原正雄の郷土教育

〈資本の環〉の中の私達

須永 哲思

A5上製・430頁

ISBN: 9784814002726

発行年月: 2020/03

  • 本体: 4,800円(税込 5,280円
  • 在庫あり
 
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内容

「社会科は,子どもの目に映ったチンドン屋の仕事を,どのように教えているのでしょうか?」戦争の時代から戦後の急速な都市化へ,20世紀日本の近代化の中で大きく変貌する郷土の現実から,単なる資本―労働の二項対立ではない,社会の生きたメカニズムを伝えようとした一教師の実践。現代の教育は彼から何を学べるか。

プロフィール

須永 哲思 (すなが さとし)
日本学術振興会特別研究員PD,京都外国語大学非常勤講師
1986年生まれ.京都大学大学院教育学研究科博士課程修了,博士(教育学).
「小学校社会科教科書『あかるい社会』と桑原正雄―資本制社会における「郷土」を問う教育の地平」(『日本の教育史学』第56集,2013年),「1950年代社会科における「郷土教育論争」再考―資本を軸とした生活の構造連関把握の可能性―」(『教育学研究』第82巻第3号,2015年).

目次

序 章
第1節 郷土が消えていく時代の郷土教育――〈資本の環〉の中の私たちを考えるために
第2節 「生活者」からの資本主義観
第3節 戦後郷土教育の「新しさ」――先行研究の批判的検討
(1) 教育の場で「資本」の働きを対象化すること
(2) 生活主義と科学主義のはざまに立脚すること
第4節 本書の構成

第1章 一九四五年以前における「郷土」の位置
第1節 明治期・大正期の教育課程における郷土
(1) 直観主義・合科主義のための地理教育上の範域概念として
(2) 教則上の郷土の消失、郷土教育運動の隆盛
第2節 一九三〇年代における郷土教育運動とそれへの批判的言説の隆盛
(1) 新旧「国土」の一部として――小田内通敏の郷土地理学
(2) 「郷土の喪失」と「郷土なき郷土科学」として――マルクス主義による植民地主義批判
(3) 「資本主義的生産機構」の「利害相反」として――生活綴方による郷土教育批判
(4) 共有・交換すべき「郷土認識の限界」として――「調べる綴方」
(5) 地誌研究の対象として――郷土教育連盟機関誌の投稿者の分類
第3節 「郷土ノ観察」の実施
(1) 国民学校令の制定
(2) 『郷土の観察』教師用書
(3) 同心円状の郷土概念の問題点

第2章 戦後に連続する同心円的な郷土概念
第1節 残された問題構図――戦後における「郷土の観察」の再開
(1) 批判されなかった郷土教育――敗戦直後の文部省の動向と連合軍総司令部による教育指令
(2) 地理授業の再開に伴う戦後「郷土ノ観察」の実施
(3) 戦前地理教育から戦後社会科への「転向」
第2節 「学習指導要領(試案)」における「郷土」と「地域」
(1) 「郷土」・「地域」・「community」――社会科における訳語の混乱
(2) 第一期「学習指導要領(試案)」(一九四七年~)――「community」をどう翻訳するか――
(3) 第二期「学習指導要領(試案)」(一九五一年~)――「郷土愛」規程の登場――
(4) 京都における戦後の「郷土愛」「コミュニティ」「進歩的郷土教育」
第3節 一九四〇年代後半~一九五〇年代における「郷土」を冠した教育関係出版物
(1) 「郷土」を冠した教育関係出版物の発行状況
(2) 郷土地理学、戦前の郷土教育運動の系譜
(3) 旧師範学校の系譜
(4) 民俗学の系譜
(5) 郷土史・郷土誌(地方史)の系譜
(6) クラブ活動・教職員組合運動

第3章 郷土全協の成立過程
第1節 郷土全協創設者・桑原正雄
(1) 桑原正雄(くわはらまさお、一九〇六~一九八〇)の略歴
(2) 戦時体制下の文学・創作活動
(3) 一九四〇年代の教務手帳と疎開日記
(4) 世田谷教職員組合設立と「レッド・パージ」
(5) 武蔵野児童文化研究会の立ち上げ
第2節 郷土教育全国連絡協議会の成立
(1) 生活綴方と歴史教育の「結合」の機運
(2) 第一回郷土教育研究大会の開催
(3) 大会当日の様子、大会直後の桑原による回想と反省
第3節 「新しい民族教育」としての戦後郷土教育
(1) 一九五〇年代の教育における「民族」
(2) 桑原による戦後の児童文学作品「コップニの歌」
(3) 『日本の社会科』に見る「郷土」・「民族」・「歴史」
第4節 生活綴方と「科学」、「問題解決学習」との論争
(1) 桑原・国分による「科学」概念をめぐるやり取り
(2) 「問題解決学習」と「系統学習」をめぐる論争

第4章 フィールドワークを通じた「自由労働者」の教材化
第1節 戦前の郷土教育・地理教育への批判の深化
(1) 小田内通敏―飯塚浩二の系譜
(2) 飯塚浩二の『地理学批判』
(3) 小田内通敏との懇談
(4) 飯塚・桑原の共著論考にみる尾崎乕四郎への批判
第2節 第三回郷土教育研究大会での「バタヤ部落」のフィールドワーク
(1) 『第三回郷土教育研究大会フィールド資料』
(2) 「バタヤ」はどう描かれたのか
(3) 資本主義社会に向き合う「子どもの主体性」とは――議論の行方
第3節 社会科副教材の中の「自由労働者」――関根・桑原の副教材の比較検討
(1) 入江敏夫編・関根鎭彦著『新しい地理教室』第2巻
(2) 桑原正雄『郷土をしらべる』

第5章 小学校社会科教科書『あかるい社会』の編纂
第1節 第三期「学習指導要領」(一九五五年~)――「自分の属する町や村」より広い範域として――
第2節 一九五五年度小学校社会科教科書の比較分析――『あかるい社会』を中心に
(1) 『あかるい社会』の編纂体制
(2) 『あかるい社会』の内容分析
(3) 日本書籍・東京書籍教科書との比較
第3節 『あかるい社会』と桑原正雄
(1) 『あかるい社会』の執筆分担
(2) 桑原正雄の「郷土教育的教育方法」
第4節 「生活綴方的教育方法」と「郷土教育的教育方法」の交錯
(1) 『あかるい社会』の著者講演と郷土全協
(2) 生活綴方的教育方法と『綴方風土記』
(3) 民間教育運動の中の『あかるい社会』
第5節 『あかるい社会』と『綴方風土記 別巻』
(1) 『綴方風土記 別巻』の概要
(2) 『別巻』における肥料・鉄道の記述
第6節 「資本家」ではなく「資本」を問題にする視点
   コラム1 桑原正雄『郷土をしらべる』(国土社、一九五五年)
     「機械の力 9 戦争のかなしみ 朝鮮の人たち」
     「はたらく人びと 10 わたしたちのくらし 農村のくらし」
     「はたらく人びと 10 わたしたちのくらし 海べのくらし」

第6章 戦後「郷土教育論争」再考
第1節 第四期学習指導要領(一九五八年~)――行政区画としての都道府県へ――
第2節 「郷土教育論争」の展開と背景
(1) 先行研究における論争の分析・評価
(2) 論争の展開過程――歴教協・郷土全協の提携解消、生活綴方の方針転換
第3節 「郷土教育論争」における論点
(1) 教師と親・子どもの関係性の捉え方の相違
(2) 社会科の性格と社会認識をめぐる対立
第4節 論争後の副教材に見る、地域社会の「資本」をめぐる生活現実
(1) 副教材『町やむらをしらべよう』に見る「小さな町」の「資本」の動き
(2) 「他人の郷土」における「他所者」としての自覚
   コラム2 桑原正雄『町やむらをしらべよう』(国土社、一九六三年)
     「さまざまな土地さまざまな生活 水田の村 2 コンクリート畦畔」
     「さまざまな土地さまざまな生活 水田の村 5 田植え」
     「さまざまな土地さまざまな生活 水田の村 6 クワとスキ」

終 章 桑原正雄の郷土教育の今日的可能性
第1節 なぜ地域でなく「郷土」だったのか
第2節 資本主義社会のあり方を教育の問題として考えるために――事実への主体的認識と共感的理解
第3節 戦後史の中の郷土教育――桑原の試みを周縁化させたもの
第4節 今後の課題

文献目録(本文中で引用した文献の一覧)
◇教科書
◇副教材
◇桑原正雄・郷土全協の著作物
・図書
・雑誌論文等
◇参考文献(辞書、辞典・事典、資料集等)
◇参考文献(図書)
・一九六〇年以前
・一九六〇年以後
◇参考文献(雑誌論文等)
・一九六〇年以前
・一九六〇年以後

資料編
【別表1】学習指導要領における「郷土」「地域」の登場回数・内容の変遷
【別表2】戦後における「郷土」を冠した教育関係書籍
【別表3】『私たちの郷土○○県』(実業教科書)
【別表4】『わが郷土○○県』(清水書院)
【略年表】

初出一覧
あとがき――桑原正雄さんへ――
索引
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