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なぜ田んぼには多様な生き物がすむのか

大塚 泰介・嶺田 拓也 編

A5並製・350頁

ISBN: 9784814002856

発行年月: 2020/10

  • 本体: 3,600円(税込 3,960円
  • 在庫あり
 
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内容

田んぼという人工的で新しい環境にさまざまな生き物が暮らしているのはなぜだろう? カエルや魚類、昆虫のような目につく生き物はもちろんのこと、イタチムシなどあまり知られていない生物にも焦点を当て、多様で複雑な生物間相互作用を解き明かす。そして、その相互作用を利用した総合的害虫管理、さらには総合的生物多様性管理を考える。

書評

『日本農業新聞』2021年3月14日 読書面

プロフィール

著者一覧(五十音順,*は編者)

市川 憲平(いちかわ のりたか)
姫路獨協大学・非常勤講師,元姫路市立水族館・館長
専門分野:淡水生物学,保全生態学
主著:『タガメはなぜ卵をこわすのか』偕成社(単著),『タガメとゲンゴロウの仲間たち』サンライズ出版(単著)

* 大塚 泰介(おおつか たいすけ)
滋賀県立琵琶湖博物館・総括学芸員
専門分野:水産微生物学,陸水生態学
主著:『淡水珪藻生態図鑑』内田老鶴圃(共著)『Social-Ecological Restoration in Paddy-Dominated Landscapes』Springer(分担執筆),https://www.biwahaku.jp/research/curator/

金尾 滋史(かなお しげふみ)
滋賀県立琵琶湖博物館・主任学芸員
専門分野:水族繁殖学,魚類保全生態学
主著:『滋賀県で大切にすべき野生生物滋賀県レッドデータブック 2015年版』サンライズ出版(分担執筆)『見えない脅威〝国内外来魚〟どう守る地域の生物多様性』東海大学出版会(分担執筆)
https://www.biwahaku.jp/research/curator/

鈴木 隆仁(すずき たかひと)
滋賀県立琵琶湖博物館・主任学芸員
専門分野:分類学(淡水産微小生物)
主著:『イタチムシの世界をのぞいてみよう』サンライズ出版(単著),『研究者が教える動物飼育第 1巻』共立出版(分担執筆)
https://www.biwahaku.jp/research/curator/

田和 康太(たわ こうた)
土木研究所・専門研究員
専門分野:湿地生態学,水田生態学
主著:『鳥類の良好な生息場の創出のための河川環境の整備・保全の考え方』国総研(共著)

中西 康介(なかにし こうすけ)
国立環境研究所・特別研究員
専門分野:保全生態学,環境毒性学
主著:『水生半翅類の生物学』北隆館(分担執筆)『にぎやかな田んぼ――イナゴが跳ね、鳥は舞い、魚の泳ぐ小宇宙』京都通信社,(分担執筆)

夏原 由博(なつはら よしひろ)
名古屋大学大学院環境学研究科・理学部・教授
専門分野:生態学
主著:『地球環境と保全生物学』岩波書店(分担執筆)『Landscape Ecological Applications in Man-Infuenced Areas』Springer(分担執筆),   http://ecol.mystrikingly.com/

日鷹 一雅(ひだ(た)か かずまさ)
愛媛大学大学院農学研究科・准教授
専門分野:農生態学,応用動物昆虫学
主著:『自然・有機農法と害虫 ――集約的でも粗放的でもない農法を求めて』冬樹社
(共著),『自然と結ぶ――「農」にみる多様性』昭和堂(分担執筆)
http://yoran.offce.ehime-u.ac.jp/profle/en.c42ba81c9a003e0760392a0d922b9077.html

藤田 裕子(ふじた ゆうこ)
京都大学基礎物理学研究所・特定講師
専門分野:環境微生物学
主著:『論集モンスーンアジアの生態史地域と地球をつなぐ第 1巻生業の生態史』弘文堂(分担執筆)『論集モンスーンアジアの生態史地域と地球をつなぐ第 3巻くらしと身体の生,態史』弘文堂(分担執筆)

* 嶺田 拓也(みねた たくや)
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究部門 上級研究員
専門分野:農生態学,雑草学
主著:『散歩で見つける花手帖』成美堂出版(監修),『有機農業大全』コモンズ(分担執筆)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/49/05-01.pdf

山崎 真嗣(やまざき まさつぐ)
一般財団法人 岐阜県環境管理技術センター
専門分野:微小水生生物の群集生態学
主著:『土のひみつ――食料・環境・生命』朝倉書店(分担執筆)
https://plankton.site/

目次

口  絵
はじめに

第I部 見過ごされてきたミクロの多様性
第1章 田んぼの小さな生物の見えざる多様性 [大塚泰介]
1.『田んぼの生きもの全種リスト』の穴
2. 田んぼの原核生物の底知れぬ多様性
3. 田んぼの隠れた主役,カイミジンコの多様性
4. 総合的生物多様性管理(IBM)のバージョンアップを

第2章 種類も生きざまも多様な水田の藻類
[藤田裕子・大塚泰介]
1. 藻類とはどんな生き物か
2. 水田の藻類相の構造――ルーツも生き方も多様
3. 多様性はコントロールできたのか
――窒素固定ラン藻と稲作との深い関係
4. コントロールされる多様性――藻類と農法
5. まとめ

第3章 田んぼのイタチムシの多様性 [鈴木隆仁]
1. 誰も知らないイタチムシ
2. 水田のイタチムシとの出会い
3. 意外な生息場所
4. イタチムシは水田に棲みつく
5. 水田のイタチムシはどこから来たのか
6. 水田の多様なイタチムシたち
7. 田んぼのイタチムシは何をしているのか
8. 田んぼのイタチムシを研究するために

第4章 水田に生息する微小水生動物群集の多様性 [山崎真嗣]
1. 是非とも会って欲しい田んぼのウズムシ
2. 田んぼのミジンコをめぐる食う食われるの関係
3. ミジンコとの遭遇に備えた田んぼのワムシ
4. 田んぼに住むユニークな繊毛虫
5. 水稲株のレストラン

第II部 水田と他の生息場所のネットワーク
第5章 水田とため池・水路を利用する昆虫たち [市川憲平]
1. はじめに
2. 水田で生活する水生昆虫
3. 水田で繁殖する水生昆虫
4. 水生昆虫の移動
5. おわりに

第6章 魚たちの様々な水田利用法 [金尾滋史]
1. 水田地帯に出現する魚たち
2. 水田地帯に出現する魚種は地域によって異なる
3. 水田のみを利用する魚はいない
4. 水田利用魚類は田んぼや水路をどう使うのか?
5. 恒久的水域-水路-水田のネットワーク
6. 魚類にとってのため池
7. 水田地帯における外来魚の問題
8. 水田地帯における魚類の保全のために

コラム 1 水田で稚魚の生残率が高い理由 [大塚泰介]

第7章 水田地帯の時空間パターンが生み出す
カエル群集の多様性 [夏原由博]
1. はじめに
2. カエルの生活史と水田
3. 山のカエルと里のカエル
4. 地球の歴史がカエル類群集を決めた
5. 水田生態系の中のカエル
6. カエルが水田からいなくなる

第III部 多様性に影響を及ぼす諸要因
第8章 水田生物多様性の成り立ちとその複雑性
――環境と生物群集の時・空間的な因果を読み解きながら
[日鷹一雅]
1. 水田の生物多様性とは何か?
2. 水田農業が育んできた水田の生物多様性
3. 水田生態系の構造本体の生物多様性「もし,水田農業なかりせば」
4. 水田生物多様性の「ただならぬ」生態系サービス
5. 遺伝子レベルの多様性
6. 再び,水田生物多様性は保全上特別なのか?
7. 多様性=安定性のドグマを越えて
8. 確かな因果解明の先のIBM
9. 結――恩師桐谷の遺した宿題

第9章 農法の違いは水生動物群集に影響を及ぼすか
[中西康介・田和康太]
1. 水稲の栽培管理の概要と農法の種類
2. 農薬が水生動物群集に与える影響
3. 水管理が水生動物群集に与える影響
4. 生物多様性保全型農法の実践と課題

コラム 2  絶滅した地域個体群を他地域からの導入により
復活させることの意義と問題点
――水田地帯の生き物を事例に [金尾滋史・大塚泰介]

第10章 かつての水田雑草は,なぜ絶滅危惧種になったのか
[嶺田拓也]
1. はじめに
2. 水田で見られる絶滅危惧種
3. 近年の急速な農業技術の発展がもたらしたもの
4. 耕作の放棄・粗放化による影響
5. 灌漑水源となっているため池の植生の危機
6. 水田に見られる絶滅危惧雑草を絶滅させないために

第IV部 水田に依存する生物の謎
第11章 田んぼに見られる植物はどこからやってきたのか
[嶺田拓也]
1. はじめに
2. 水田の造成と水田化以前の在来植物
3. 稲作とともにやってきた植物
4. 水田に定着した新たな帰化植物
5. 水路やため池に見られる水生植物
6. 自然攪乱による参入
7. 田んぼに見られる植物の構成

第12章  田んぼにしかいない生物は,田んぼができる前には
どこにいたのか [大塚泰介]
1. はじめに
2. ナゴヤダルマガエル
3. ハッタミミズ
4. おわりに

引用文献
索  引

BOX 1-1 PCR-DGGE 法
BOX 6-1 ドジョウ類とメダカ類の分類
BOX 6-2 水が無くても生きていける魚たち
BOX 6-3 生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン
BOX 12-1 イネに強く依存する生物
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