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環境人間学と地域

No Life, No Forest

熱帯林の「価値命題」を暮らしから問う

阿部 健一・柳澤 雅之 編著

A5上製・296頁

ISBN: 9784814003341

発行年月: 2021/03

  • 本体: 3,600円(税込 3,960円
  • 在庫あり
 
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内容

「熱帯林問題」がリオ・サミットの最重要課題となって以来,数多くのプロジェクトが立ち上がり,誰もが真摯に問題に取り組んできた。にもかかわらず熱帯林は減少し続け,地域によっては,この間に熱帯林の消失が加速されたところすらある。それは何故か? 森の民に寄り添ってきた若い研究者たちが「“生活なき”森林保護」の枠組みをラディカルに問い直し,そこに暮らし関わる人々の姿から,「森の価値」と,新しい人と森との関係を提案する。

プロフィール

阿部健一(あべ けんいち 編者:序章,終章)
人間文化研究機構 総合地球環境学研究所教授。専門は環境人類学・相関地域研究。
主な著書に,『生物多様性:子どもたちにどう伝えるか』(編著,昭和堂,2012年),Good Earths: Regional and Historical Insights into China’s Environment(共編著,Kyoto University Press + NUS Press, 2009年)など。

石丸香苗(いしまる かなえ 第9章)
福井県立大学学術教養センター准教授。専門は森林科学,地域研究(ブラジル)。
主な著作に『森林生態学』(分担執筆,朝倉書店,2019年),『抵抗の森・創造の森:アマゾン開発と民衆運動』(分担執筆,現代企画室,2017年)など。

大橋麻里子(おおはし まりこ 第3章)
日本学術振興会特別研究員(RPD)/東京大学大学院総合文化研究科文化人類学。専門・関心はアマゾニア地域研究,環境社会学,資源利用,食文化研究。
主な著書に『狩猟採集民からみた地球環境史:自然・隣人・文明との共生』(分担執筆,東京大学出版会,2017年),『衣食住からの発見』(分担執筆,古今書院,2014年)など。

近藤宏(こんどう ひろし 第4章)
早稲田大学教育学部助教。専門は文化人類学,ラテンアメリカ地域研究。
主な著書に『異貌の同時代:人類・学の外へ』(分担執筆,以文社,2017年),訳書に,『森は考える:人間的なものを越えた人類学』(共監訳,亜紀書房,2016年)など。

坂梨健太(さかなし けんた 第2章)
龍谷大学農学部講師。専門は農業経済学,地域研究。
主な著作に,『アフリカ熱帯農業と環境保全:カメルーンカカオ農民の生活とジレンマ』(昭和堂,2014年),Rethinking African Agriculture: How Non-Agrarian Factors Shape Peasant(分担執筆,Routlege,2020年)など。

鈴木遥(すずき はるか 第7章)
インドネシアリアウ大学社会学研究科客員教員。専門は地域研究,林学。
主な著作に,「インドネシアスマトラ東岸における杭上住居のメンテナンス:木杭の追加に関する一考察」(東南アジア研究No. 57(1),2019年)など。

藤澤奈都穂(ふじさわ なつほ 第8章)
京都大学東南アジア地域研究研究所 日本学術振興会特別研究員(CPD)。研究テーマは農業生態,アグロフォレストリー,中米地域研究。

渕上ゆかり(ふちがみ ゆかり 第6章)
大阪大学大学院工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター特任助教。専門は地域研究,フューチャー・デザイン,学際研究。
主な著作に,「西表島の社会情勢に伴うマングローブ利用形態の変遷:利用を通じた資源管理の一事例」(島嶼研究21(1),2021年)など。

松浦直毅(まつうら なおき 第1章)
静岡県立大学国際関係学部助教。専門は人類学,アフリカ地域研究。
主な著作に,『現代の<森の民>:中部アフリカ,バボンゴ・ピグミーの民族誌』(昭和堂,2012年),『コンゴ・森と河をつなぐ:人類学者と地域住民がめざす開発と保全の両立』(共編著,明石書店,2020年)など。

柳澤雅之(やなぎさわ まさゆき 編者:第5章,序章,終章)
京都大学東南アジア地域研究研究所准教授。専門・関心は東南アジアの生態史,ベトナム農村発展史,地域情報学。
主な著書に,『景観から風土と文化を読み解く』(京都大学学術出版会,2019年),『衝突と変奏のジャスティス』(共編著,青弓社,2016年)など。

目次

序 章 熱帯林の価値を問う――「内なる他者」の考えていること
[阿部健一・柳澤雅之]

第1章 「しなやかさ」と「はかなさ」のはざまで揺れ動く生のかたち――中部アフリカ,バボンゴ・ピグミーの社会変容の経験から[松浦直毅]
1 「しなやかさ」か「はかなさ」か――変わりゆく狩猟採集社会
2 ピグミー社会の特徴とその変容
3 外部社会による影響と当事者の経験
4 「しなやかさ」と「はかなさ」のはざまで揺れ動く生のかたち

第2章 森への道,森からの道
――カメルーン南部のカカオ農民の事例から[坂梨健太]
1 道沿いの村のジャンとビリー
2 調査地概要
3 移動を活発にさせる道
4 舗装道路工事
5 カカオ農民の未来

第3章 揺らぐ食の「分かちあい」――ペルー・アマゾニア,シピボの森林利用から[大橋麻里子]
1 はじめに:「一緒に食べよう(フーマンピ)」
2 ドスデマジョ村のシピボ
3 森が引き寄せる外部者とのかかわり
4 持続的森林管理プロジェクトが村にもたらしたもの
5 揺らぐ食の「分かちあい」
6 おわりに――「食べにおいで(ピーブッカンウー)」

第4章 〈持続可能性〉の時代と未来――パナマ東部先住民エンベラの暮らしと新たなキカイ[近藤 宏]
1 社会的な位置を変える森
2 木材伐出活動の概要
3 変化にある暮らしのなかの問い
4 機械の力
5 樹木の力
6 会社の力
7 動物の生命力
8 伐出活動が切り開く未来のイメージ
9 誰かともにある意識

第5章 伐採会社と地域住民の緊張関係と協働――カリマンタンにおけるダヤックの森林利用[柳澤雅之]
1 調査地の概要
2 伐採会社以前
3 コンセッションの設定――伐採会社のかかわり
4 生業体系の変容
5 伐採会社と地域住民の変化
6 対立と協調の新たな形を求めて

第6章 開発の光と影――インドネシア・バタム島のマングローブ林[渕上ゆかり]
1 不思議な島
2 グローバル化の光と影――バタム島における工業発展と雇用問題
3 バタム島のマングローブ林と製炭業
4 手作業で行う木炭の製造過程
5 製炭村の人々にとってのマングローブ

第7章 大規模火災からの復興に関わる――インドネシア・スマトラの熱帯泥炭地の事例から[鈴木 遥]
1 泥炭地火災の被災地域と関わるということ
2 調査地域の選定にあたって
3 調査地域の概要
4 クパウバル村の開拓史
5 大規模火災からの復興
6 自分にできることをする
7 おわりに――火災からの復興に向けた地域内外をつなぐ共通意識

第8章 “自分らしく生きること”がつくる懐の深いコーヒーの森――異なる生業が支え合うパナマ中部の農村の暮らし[藤澤奈都穂]
1 農地だけではない農村の人々の生活空間
2 コクレ県北部の生業の変遷
3 それぞれの生業戦略
4 コーヒー栽培と森
5 異なる生業が支え合う暮らし
6 街に出つつも村で暮らす

第9章 ママイはとても幸せ――尊厳を取り戻す場所としてのアマゾン熱帯林[石丸香苗]
1 出会い
2 ブラジルの社会構造と民衆運動の歴史
3 エスペディト・ヒベイロ集落
4 エスペディト・ヒベイロの人々の人生
5 土地なし農民の社会的再生と連帯経済
6 彼らと私
7 この世界のマルキーニョたち

終 章 人を生かす森,森を生かす人[柳澤雅之・阿部健一]
1 森林と人のかかわり方で,同時代の熱帯林を区分して考える
2 同時代に起きていること 1――国家とグローバル社会による被覆
3 同時代に起きていること 2――人々のローカルなアクション
4 人間らしく成長し,生きるための森
5 No Life, No Forest――熱帯林の価値命題を暮らしから問う
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