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評伝・西山夘三

20世紀の「すまい」を創った建築家

広原 盛明

A5上製・512頁

ISBN: 9784814004959

発行年月: 2023/09

  • 本体: 4,500円(税込 4,950円
  • 在庫あり
 
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内容

せまく密集した日本の住宅を分析し,「食寝分離論」で生活の風景を一変させた建築家・西山夘三。戦後復興,高度成長──発展の夢に酔いしれた時代のなか,その波に翻弄されながらも,建築の巨人が生涯をかけて考えつづけたグランドデザインと生活のリアル。彼が探し続けた「すまい」とは,そして,「街」は,今になにを残したか? 街を描くよろこびと,その苦悩を詰め込んだ大著。

プロフィール

広原盛明 (ひろはら もりあき)
1938年旧満州ハルビン市生れ。1965年京都大学大学院工学研究科博士課程退学,西山研究室の助手となる。1971年京都府立大学住居学科助教授,1985年同教授,1992~98年同大学長を務める。2000~10年龍谷大学法学部教授(都市政策),現在に至る。工学博士,一級建築士,技術士(都市計画・地方計画)。
主な著書に,『日本型コミュニティ政策――東京・横浜・武蔵野の経験』(晃洋書房、2011年),『増補版・町内会の研究』(共編著,御茶の水書房,2013年),『神戸百年の大計と未来』(共著,晃洋書房,2017年),『観光立国政策と観光都市京都』(文理閣,2020年)などがある。

目次

 まえがき

第I部 戦前戦中期──すまいの研究者を目指して

序章 生涯にわたる六冊の自伝 自伝執筆が物語るもの
1 六冊の自伝
2 なぜ、自伝を執筆したか
3 東大吉武研からのメッセージ
4 西山のルーツ、『安治川物語』から
5 父夘之助、鉄工職人から工場経営者へ

第1章 西山の離陸、三高から京都帝大へ
1 恵まれた家庭環境と受験生活
2 自立の場と機会を与えた第三高等学校
3 自治の一高、自由の三高
4 大正デモクラシーとマルクス主義の浸透
5 頭でっかちのマルクス主義
6 西山の転機と飛躍、京都帝大建築学科での活動
7 近代建築運動の二つの潮流
8 学生建築運動の展開とデザム
9 CIAMとの出会い、世界大会に作品応募
10 新興建築家聯盟の解体、その後

第2章 近代建築運動を生み出した工業社会
1 萌芽期の建築運動の限界
2 それでも近代建築運動は起こった
3 アメリカとヨーロッパにおける技術革新の影響
4 ワイマール社会国家の住宅政策・住宅建設
5 エルンスト・マイの建築・住宅思想が与えたもの

第3章 住宅調査に基づく研究方法論
1 兵役時代における住宅調査
2 記念碑的労作となった住宅論文三部作
3 戦時体制下、住宅営団の設立
4 住宅営団への奉職と誤算
5 住宅営団の結末

第4章 戦時社会政策と総力戦体制
1 大河内一男と西山夘三
2 戦時下における技術的主張の意図
3 ナチスドイツ国土計画の影響
4 国土計画のイデオローグ、石川栄耀
5 土木技術者の地位向上運動のなかで

第5章 戦時社会政策の虚構
1 大河内理論の批判をめぐって
2 戦時住宅政策という基本矛盾
3 歴史的早産だった戦時政策論
4 戦争被害の恐るべき実態
5 砂上の楼閣だった戦時住宅政策

第II部 戦後復興期──戦後の混乱の中で

第1章 終戦を迎えて
1 西山分析の縦軸と横軸
2 東大と京大の学風の違い
3 西山のハビトゥス
4 京都に戻ってから
5 学位論文「庶民住宅の研究」の反響
6 ポッダム宣言受諾、焼け野原となった国土
7 京都では建物疎開(打ち毀し)が進んでいた
8 戦後四〇年、西山の回顧談

第2章 京都は〝非戦災都市〟だったのか
1 京都は原爆投下計画第一号目標だった
2 米軍占領下の京都
3 西山の関心は京都になかった?
4 京大同学会綜合原爆展が開催される
5 原爆展掘り起こしの会が結成された

第3章 京大職組初代委員長として
1 京都大学百年史の記録から
2 京大職組結成と全学ストライキ
3 昭和家庭史年表にみる食糧危機、家計危機
4 マンモス職組結成の困難さ
5 大学教授も組合員になれるか
6 京大職組の変遷
7 されど京大職組

第4章 波乱に満ちた新日本建築家集団(NAU)の結成
1 NAUの歴史をどう辿るか
2 政党組織と見紛う綱領と規約
3 NAUはなぜ崩壊したのか
4 高山英華の歴史的証言
5 プロレタリア文化運動の一翼として
6 大同団結主義とは何だったのか
7 浜口隆一『ヒューマニズムの建築』をめぐって
8 偏狭なプロレタリアート主義
9 いまだ克服されない反体制的運動論
10 残された疑問、NAU設立とGHQとの関係
11 新しい運動史観が必要だ
12 プロレタリアート主義から市民社会論へ

第5章 民主主義科学者協会(民科)と国民的建築学
1 民主主義科学者協会とは
2 万歳三唱した民科創立総会の熱気
3 政治的活動方針の提起
4 国民的建築学は成功しなかった
5 新しく生まれた農村建築研究会
6 民科の危機
7 民科の総括をめぐって
8 そして、民科は姿を消した
9 京都支部だけが残った
10 西山の戦争責任の取り方

第III部 高度成長期以降──高度経済成長の波に抗して

第1章 調査研究から計画立案へ
1 戦後改革にも比すべき歴史的変化
2 研究活動の一大転機、日本住宅公団の創設
3 香里団地計画で新しいステージに
4 マスタープランと実施計画のギャップ
5 開発可能性に関する北大阪丘陵開発計画
6 北大阪丘陵開発計画のそれから
7 多種多様な委託研究が殺到した
8 研究スタイルの変化をどう評価するか

第2章 高度経済成長と国土計画の時代
1 所得倍増計画を実現するには
2 「日本列島の将来像」が新全総原案に
3 国土計画のカリスマ、丹下健三
4 世界デザイン会議へのデビュー
5 構想計画とは、イエポリスとは
6 戦時国土計画が大きく影響している

第3章 京都計画1964が意味するもの
1 〝天から降ってきた〟異次元の計画
2 京都計画における「空間の論理」
3 破綻した構想計画
4 撤回ではなく修正
5 後付けの論理、地獄絵と極楽図
6 時代の波に押し流されなかった大谷幸夫
7 麴町計画と京都計画の違い
8 大阪万博計画の結末をめぐって

第4章 新全総が破綻、総点検作業へ
1 日本経済が失速
2 公害問題、土地買い占めが激化
3 革新自治体の躍進と世論の変化
4 新全総から三全総へ
5 総理府コンペ、二一世紀の国土と国民生活の未来像の設計
6 学際的共同研究と構想計画のズレ
7 日本学術会議における学際的共同研究
8 学術会議「国土開発に関する提言(声明)」
9 環境白書の刊行、環境政策の転換

第5章 まちづくり運動への参加の中で
1 京都自治体問題研究所に軸足
2 伝統産業追い出し反対運動から始まった
3 京都計画における過大な観光需要予測
4 京都の市電をまもる会が訴えたもの
5 マンション建設反対がまちづくり運動に発展
6 住民運動と市民運動の差異と連携
7 景観保全が構想計画の主軸に

終章 西山は二〇世紀をどう生きたか
1 二〇世紀、極端な時代
2 近代建築運動の誕生
3 ソーシャルハウジングの計画論
4 新しい建築様式が新しい人間をつくるという〝空間テーゼ〟
5 空間秩序至上主義に基づく環境決定論
6 生活リアリズムに徹した西山住宅計画学
7 アメリカの資金援助による開発主義体制の成立
8 開発主義批判としての構想計画
9 危機の時代における環境政策と国土開発の変化
10 西山のすまい・まちづくり研究を貫くもの

 あとがき
 索引
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