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会話の人類学

ブッシュマンの生活世界2

菅原和孝 著

A5上製・367頁

ISBN: 9784876980628

発行年月: 1998/08

  • 本体: 3,800円(税込 4,180円
  • 在庫なし
 
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内容

人々の社会的な存在様態が、対面相互行為すなわち会話の構造とどのように相関しているか--日常会話の精緻な分析に、言語哲学、語用論、認知心理学等にまたがるコミュニケーション理論をつきあわせることで、言語活動の自然誌的「記述」と言語によって表象される世界の「解釈」とを結びつける斬新な研究戦略を示す。

プロフィール

菅原和孝(すがわら かずよし)
1949年 東京生まれ。
1973年 京都大学理学部卒
1980年 京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。北海道大学文学部助手、京都大学教養部助教授、京都大学総合人問学部助教授を経て、
現 在 京都大学総合人間学部教授。
主要著書
『身体の人類学』(1993)河出書房新社。
『性と出会う』(1996共著)講談社。
『コミュニケーションとしての身体』(1996共編著)大修館書店。
『語る身体の民族誌』(1998)京都大学学術出版会。

目次

プロローグ——一九九七年四月
読者のために
   原語の発音と表記/会話資料の表記法/おもな登場人物
第一章 会話の人類学——その射程と方法
 なぜ日常会話か
 グイとはどのような人たちか
 理論的背景と方法論
   西欧の理論との対時/グライスの「論理と会話」/アイロニーの論理/ベッギングの場から/インタラクションの運動
第二章 成熟の言説——年長者と青年の関係をめぐって
 年長者のイデオロギーと「センス」——大ヤギ所有者、ツェマコ
 「説教」の論理——砂をはらいおとす青年
   「人称空間」の構造
 知識の落差
   謎をかける
第三章 配慮の形式——会話構造と社会関係
 会話の基本構造とはなにか?
   順番どりシステム/ターンとはなにか?
 冗談・忌避関係
 「形式化」される会話——姻族どうしのやりとりから
   分析のための用語/会話の時間的構造/二者会話のプロフィル/沈黙が意味すること/「順番」はいかにして交替するか/会話の形式化
 否認と非難の動態——青年どうしの応酬から
   即時反射的な応答
 会話構造からみた冗談・忌避関係
 形式化と「心」
第四章 重なりあうことば——同時発話の構造と動態
 同時発話という問題
 同時発話の三類型
   話す権利と聞く義務
 オリエンタリズムなのか?
 経験の流れのなかに
  「あたりまえ」なオーバーラップ/唱和からオーバーラップヘ/<ひきとり>と<復唱>
 かたり、同時発話、そして直接話法
 かたりの時制と「知っていること」——日常会話の「分類学」
   I 聞き手は知らない(かのようにふるまう)/II 聞き手は知っている(ことを明白にする)
第五章 分岐する語り——連関性の認知をめぐって
 連関性とはなにか?
 「関連性の過剰」再考
 連関性の分岐
 トピックの転換を促す力
 いつでもしゃべりたいことをしゃべる
 表面的な応酬性棚
 トピックの流れと「独我論」
第六章 交渉する身体——生活世界の合理性へ向けて
 あたりまえな世界へ
 「貸せ」という要求
   言明=応答の微視的な構造/なぜ持続するのか?/<ムープ>とはなにか?
 「払え」という要求
   命題成分の分析/関係あるいは事態の叙述/「交渉」の流れ
   「異議申し立て」とはなにか?/必然的な持続/メタコミュニケーション
 交渉は言語ゲームなのか?
第七章 会話にみる共同性と対等性——「平等主義」再考
 平等主義は幻想なのか?
 「平等主義」とはコミュニケーションの問題である
 会話の「内容」が志向する世界——年長者の言説
 共同性と対等性
   即時反射的な運動から「乗りこみ」へ/連関性の分岐から並行的な共在へ
   連関性の収東から生活世界の合理性ヘ
 インタラクションのセンス

エピローグー一九九七年四月
注/参照文献
あとがき
索引

事例一覧
*事例名の冒頭に「語り」と付したものは、会話のなかである一人の参与者が長いあいだしゃべり続けた部分を抽出し編集したもの。とくに断り書きがなく事例名のみを示している場合は日常会話のほぼ忠実な転写である。
【番外】「どういう予定でおるの?」
【1】語り(抄)「あんたはまさか子どもを産むんじゃないわよね」
【2】フィールドノート「ツァーを採集に行く」
【3】「女はロバのようなものだ」
【4】「ヤギに苦労した」
【5】「おれの飲む酒はきれいな瓶に入ったやつ」
【6】「砂などほおっておいて坐れ」
【7】語り「おまえには手がない
【8】「おまえの妻はまだ生まれていない」
【番外】「イイジマくんなの」
【9】会話あらすじ「あなたがたに別れを告げる」
【10】「同右」断章1——長い沈黙
【11】「同右」断章2——「子どもを思うと心配で……」
【12】「同右」断章3——「この年のものたち」
【13】「馬を鞭打つ」(青年の口論 ステージI)
【14】「馬の心ずが?」(同右 ステージII)
【15】「父さんのために馬を借りた」(同右 ステージIII)
【補足資料】会話抄「固い砂に立つ]
【16】「あんなことを姉さんがするなんて」
【17】会話あらすじ「母と娘の会話」
【18(1)】「同右」——四つのセグメント
【18(2)】「同右」——唱和の応酬
【19】「同右」——「彼に石鹸を買ってもらえ」
【20】「くぼみに水はあるか」
【21】集会での証言(要約)
【22】「おれには罠がない」
【23】語り(抄)「皮の切れ端に入れて結んでおいた」
【24】「テベの子はすぐ大きくなる」
【25】「心臓を感づく(タオシ)」
【26】フィールドノート「犬が食うと痩せて死ぬ」
【27】「おれは迷った」
【番外】「Hくん、笑ってるねえ」
【28】「ボオツィを貸せ」
【29】会話あらすじ「払え、いや払わぬ」
【30】「同右」断章1「一〇プーラを払え」
【31】「同右」断章2「おまえ、見ろ」
【32】「同右」断章3「ヤスリでおれはそいつを打った」
【33】「同右」断章4「毛はむしっていた」
【34】「同右」断章5「おれの砂糖を買う」
【35】「同右」断章6「おれは拒む」
【36】「同右」断章7「それはなんのことだ?」
【37】フィールドノート「ふざけあっていた」
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