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アフリカ潜在力 1

紛争をおさめる文化

不完全性とブリコラージュの実践

太田 至 シリーズ総編集/松田素二・平野(野元)美佐 編

A5上製, 406 pages

ISBN: 9784814000050

pub. date: 03/16

  • Price : JPY 3,900 (with tax: JPY 4,290)
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推薦

【推薦】立本成文氏(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 機構長)
ダイナミックで融通無碍な文化の技法——アフリカ潜在力!! 紛争の国々アフリカで醸成された新しい紛争解決の智慧が明らかになった。アフリカ社会の生の現場での,日本人とアフリカ人研究者との5年にわたる知的格闘の成果がここにある。危機に瀕している人間文化を見直し,これからのあるべき生き方に指針を与える人類の共通財産である。

内容

誰もが不完全であることを認める。これこそが,アフリカ文化に内在した世界観である。自らの「完全」性を信じ,それ以外のものへの不寛容や攻撃を「遅れたものを救済する」正義として正当化してきた西洋的近代の誤謬を糺す可能性がそこにはある。緻密な民族誌から,アフリカの日常的実践の持つ,紛争を回避し和解を進める力を析出する。

書評

『アフリカレポート』No.54(2016)、評者:武内進一氏
『アジア・アフリカ地域研究』2017 No.17-1、116-120頁、評者:田中正隆氏

プロフィール

【執筆者紹介】

石田慎一郎(いしだ しんいちろう)
首都大学東京人文・社会系・准教授
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了,博士(社会人類学)。
主な著書に,『法文化論の展開―法主体のダイナミクス』(信山社,共編著),『オルタナティブ・ジャスティス―新しい〈法と社会〉への批判的考察』(大阪大学出版会,編著),『グローバル世界の法文化―法学・人類学からのアプローチ』(福村出版,共編著)など。

太田至(おおた いたる)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学大学院理学研究科修了,理学博士。
主な著書に Displacement Risks in Africa(Kyoto University Press,共編著),『遊動民(ノマッド)』(昭和堂,共編著),『続・自然社会の人類学』(アカデミア出版会,共編著)など。

金子守恵(かねこ もりえ)
京都大学大学院人間・環境学研究科・助教
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士後期課程修了,博士(地域研究)。
主な著書に,『土器つくりの民族誌』(昭和堂),『ものの人類学』(京都大学学術出版会,共著)など。

木村大治(きむら だいじ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士。
主な著書に,『共在感覚―アフリカの二つの社会における言語的相互行為から』(京都大学学術出版会),『森棲みの生態誌―アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 I』(京都大学学術出版会,共編著),『森棲みの社会誌―アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 II』(京都大学学術出版会,共編著)など。

ウィルバート・Z・サドンバ(Wilbert Z. SADOMBA)
ジンバブエ大学応用社会科学研究所・講師
ヴァーヘニンゲン大学大学院博士課程修了,Ph.D.。
主な著書に,War Veterans in Zimbabwe’s Revolution: Challenging Neo-Colonialism and Settler and International Capital (James Curry), “Beyond Instrumentalism” (with Helliker K.), Journal of Asian and African Studies, XX(X):1―17, “Peasant Occupations within War veterans-led Occupations”, Journal of Peasant Studies, Vol. 36 no. 2.

重田眞義(しげた まさよし)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学農学研究科博士課程修了,博士(農学)。
主な著書に,『アフリカ農業の諸問題』(京都大学学術出版会,共編著)など。

フランシス・B・ニャムンジョ(Francis B. NYAMNJOH)
ケープタウン大学社会人類学部・教授
レスター大学大学院博士課程修了,Ph.D。
主な単著に,Africa’s Media, Democracy and the Politics of Belonging (Zed Books), Insiders and Outsiders: Citizenship and Xenophobia in Comtemporary Southern Africa (Zed Books), The Postcolonial Turn: Re-Imagining Anthropology and Africa (Langaa), Modernising Traditions and Traditionalising Modernity in Africa: Chieftaincy and Democracy in Cameroon and Botswana (Langaa)など。

松田素二(まつだ もとじ)
京都大学大学院文学研究科・教授
ナイロビ大学大学院修士課程修了(社会学),博士(文学)。
主な著書に,『日常人類学宣言』(世界思想社),『呪医の末裔』(講談社),『抵抗する都市』(岩波書店),Urbanisation from Below (Kyoto University Press), 『新書アフリカ史』(講談社,共編著),『都市を飼い慣らす』(河出書房新社)など。

松本尚之(まつもと ひさし)
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院・准教授
東北大学文学研究科博士後期課程修了,博士(文学)。
主な著書に,『アフリカの王を生み出す人々―ポスト植民地時代の「首長位の復活」と非集権制社会』(明石書店),『つながりの文化人類学』(東北大学出版会,共著),「在日アフリカ人の定住化とトランスナショナルな移動―ナイジェリア出身者の経済活動を通して」『アフリカ研究』(85号:1―12頁)など。

マモ・ヘボ(Hebo MAMO)
アジスアベバ大学社会科学部社会人類学科・准教授
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了,博士(地域研究)。
主な著書に, Land, Local Custom and State policies: Land Tenure, Land Disputes, and Disputes Settlement among the Arsii Oromo of Southern Ethiopia (Shoukadou Book Sellers.)など。

平野(野元)美佐(ひらの のもと みさ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了,博士(文学)。
主な著書に,『アフリカ都市の民族誌―カメルーンの「商人」バミレケのカネと故郷』(明石書店),『実践としてのコミュニティ―移動,国家,運動』(京都大学学術出版会,共著)など。

ジョン・ホルツマン(Jon HOLZMAN)
ウェスタン・ミシガン大学人類学科・准教授
ミシガン大学博士課程修了,Ph.D(文化人類学)。
主な著書に Uncertain Tastes: Memory, Ambivalence and the Politics of Eating in Samburu, Northern Kenya (University of California Press), Nuer Journeys, Nuer Lives: Sudanese Refugees in Minnesota(Allyn and Bacon)など。

アンジュ・B・レンジャ=ンニェムズエ(Ange B. LENDJA NGNEMZUE)
パリ第8大学 / ミドルベリー大学・非常勤講師
パリ大学博士課程修了,Ph.D(政治学・哲学)。
主な著書に『Les étrangers illégaux à la recherche de papiers』(L’Harmattan),『Politique et émigration irrégulière en Afrique: Enjeux d’une débrouille par temps de crise』(Karthala)など。

目次

シリーズ序論 「アフリカ潜在力」の探究―紛争解決と共生の実現にむけて [太田 至]

序章 「アフリカ潜在力」の社会・文化的特質 [松田素二]
   1 「アフリカ潜在力」という問題提起
   2 紛争の諸段階
   3 紛争に対処する文化
   4 アフリカ・フォーラムの経験
   5 アフリカ文化の潜在力
   6 本巻の構成―三部構成の流れ

第1部 伝統的慣習の再創造と「アフリカ潜在力」

第1章 グローバル化のなかの伝統的権威者―ナイジェリア・イボ社会における国際移民と首長位 [松本尚之]
   1 「アフリカ潜在力」としての伝統的権威者の地位
   2 現代イボ社会における王位/首長位の創造
   3 国際移民と首長位―在日イボ人の場合
   4 移民たちはなぜ首長位の称号を欲するのか
   5 移民たちはいかにして首長位の称号を手にするのか
   6 アフリカの伝統的権威者とグローバル化
第2章 現代に開かれた伝統という潜在力―カメルーン・バミレケ首長制社会の紛争処理と伝統的権威
   [平野(野元)美佐 アンジュ・B・レンジャ=ンニェムズエ]
   1 バミレケ伝統的権威者のもつ伝統性と現代性
   2 バミレケ首長制社会の変化と行政的位置づけ
    (一)バミレケ首長制社会/(二)バングラップ首長制社会
   3 目に見える紛争とその解決
    (一)目に見える紛争と処理方法/(二)目に見える紛争の具体的事例
   4 目に見えない紛争
    (一)目に見えない紛争と処理方法/(二)目に見えない紛争の処理とあいまいな境界線
   5 首長制社会を越える紛争処理
    (一)ヤウンデの同郷者コミュニティとバングラップ首長/(二)バンガンテ首長とングウ
   6 人びとが監視しうる権威―潜在力を支えるもの
第3章 ケニア中央高地イゲンベ地方の紛争処理における平等主義と非人格性 [石田慎一郎]
   1 当事者対抗的な紛争処理を保留する
   2 ムリンゲネ村―イシアロ利用の地域的文脈
   3 ムイシアロになる―平等主義と非人格性を備える
   4 ムイシアロの訪問―対面状況における平等主義と非人格性の行方
   5 告白指向の紛争処理における正しさの条件

コラム1 日常生活に埋め込まれた紛争と対立のマネージメント法
     ―エチオピア南部アルシ・オロモ地域における「遮断」と「回避」の効用
    [マモ・ヘボ(訳:松田素二)]

第2部 「アフリカ潜在力」的発想と実践

第4章 アフリカのローカルな会合における「語る力」「聞く力」「交渉する力」
    ―コンゴのパラヴァー、ボラナのクラン集会、トゥルカナの婚資交渉 [太田 至]
   1 相克をのりこえて共生を実現するために
   2 コンゴ人のパラヴァー―共同体の危機に対処する技法
    (一)アフリカで実践されるパラヴァー/(二)コンゴ人のパラヴァー
   3 ボラナ人のクラン集会―赦しと和解をひき出す技法
    (一)ボラナ社会/(二)ボラナのクラン会合
   4 トゥルカナ社会における婚資の交渉―交渉をとおして合意を形成する技法
    (一)トゥルカナ社会の概要と婚資の支払い/(二)婚資として支払われるべき家畜数をめぐる交渉
    (三)真剣勝負の交渉と気前のよさ/(四)婚資の交渉という困難な課題にともにむきあう
   5 三つの事例が語ること―「語る力」「聞く力」「交渉する力」
    (一)他者との共存をめざす力/(二)交渉に臨むときの「他者」認識
第5章 悪い友人と良い敵
    ―サンブル・ポコット・トゥルカナの三者関係における平和と暴力の構築
    [ジョン・ホルツマン(訳:楠 和樹)]
   1 「友人」ポコットと「敵」トゥルカナ
   2 ポコットとの「友人関係」の基盤
   3 トゥルカナとの「敵対関係」の基盤
   4 ジャッカルとの戦争
   5 本物の男たちとの戦争と平和
    (一)トゥルカナとの戦いの厳しさ/(二)トゥルカナとの共存
   6 悪い友人と良い敵
   7 平和と暴力の構築
第6章 「濃淡の論理」と「線引きの論理」
    ―コンゴ民主共和国ワンバ地域における森の所有をめぐって [木村大治]
   1 調査地ワンバの変容
   2 ワンバの人びと
    (一)ボンガンドの系譜と移住の歴史/(二)強固な父系リニージ/(三)生業活動と空間利用
    (四)自然保護活動のアクターたち
   3 保護区をめぐる軋轢
    (一)歴史的所有と日常的使用/(二)住民の森林活動と保護区の線引き
    (三)保護アクター間の対立と住民のリニージ構造
   4 「濃淡の論理」と「線引きの論理」
    (一)「線引きの論理」の導入/(二)段差を作らないやり方

コラム2 経済制裁による包囲網とグローバル化のるつぼのなかで
     ―ジンバブエのインフォーマルな金属産業にみられるアフリカ潜在力
    [ウィルバート・サドンバ(訳:松田素二)]

第3部 対立を防ぐ智慧と「アフリカ潜在力」

第7章 紛争予防のための潜在力―現代ケニアのコミュニティ・ポリシングの事例から [松田素二]
   1 ケニア社会に充満する暴力
   2 欧米型コミュニティ・ポリシングの導入
   3 ニュンバ・クミの導入
   4 コミュニティ・ポリシングの二つの潮流
    (一)外部のヘゲモニー/(二)コミュニティのヘゲモニー
   5 自生的コミュニティ・ポリシング
   6 カンゲミ地区におけるPEVの経験とコミュニティ・ポリシングの再創造
   7 アフリカ潜在力としてのコミュニティ・ポリシング―ブリコラージュの知恵
第8章 共存の作法としての在来知
    ―エチオピア西南部に暮らす農耕民アリと「他者」との出会い [金子守恵・重田眞義]
   1 「他者」との出会いを個人史で追う
   2 アリとガマの関係史―地域の背景
    (一)生業活動と子どもの役割/(二)北部からの侵略とアリ人の経験/(三)学校教育
   3 「他者」との出会いと「知ること」
    (一)息子Gの就学経験/(二)息子に言葉を知ってほしかった父/(三)学びつづけた息子
    (四)家出と新たな旅立ち
   4 他者との共存の作法としての在来知
第9章 フロンティアとしてのアフリカ、異種結節装置としてのコンヴィヴィアリティ
    ―不完全性の社会理論に向けて [フランシス・ニャムンジョ(訳:楠 和樹・松田素二)]
   1 アフリカと西欧近代との出会い
   2 「何がリアリティを構成するのか」に関する民衆的想像力
   3 フロンティア的存在としてのアフリカ人
   4 媒介的でフロンティア的な存在様式
   5 異種結節装置としてのコンヴィヴィアリティ
   6 コンヴィヴィアルな学問の未来に向けて
終章 紛争解決と社会的和解・共生のための「アフリカ潜在力」に向けて [平野(野元)美佐]
   1 ミクロな視点からみた「アフリカ潜在力」
   2 創造力、交渉力、想像力という「アフリカ潜在力」
    (一)「創造力」という「アフリカ潜在力」/(二)「交渉力」という「アフリカ潜在力」
    (三)「想像力」という「アフリカ潜在力」
   3 「アフリカ潜在力」から学ぶ

索引
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