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石の目を読む

石器研究のための破壊力学とフラクトグラフィ

アレ・ツィルク 原著 上峯篤史 訳編著

菊上製・242頁

ISBN: 9784814002559

発行年月: 2020/04

  • 本体: 4,000円(税込 4,400円
  • 在庫あり
 
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内容

小さなナイフから大きな構造物まで,人類は石を割って加工し,文化を彩り文明を築いて,現代にいたる暮らしを作ってきた。岩石を破壊しながら作られる石器を,破壊のメカニズムを知る破壊力学や,それを応用したフラクトグラフィ(破面解析)の視点から読み解くことで,確実な根拠をもって過去の人類文化史に迫る。考古学者と考古学を学んだ破壊力学研究者の出会いから生まれた稀代の一冊。

プロフィール

アレ・ツィルク(Are Tsirk)
1937年エストニアのタリン生まれ。
ニューヨーク大学で土木工学の博士号(PhD)を取得したのち,ニューヨーク大学人類学部で考古学を学ぶ。ニュージャージー工科大学准教授を務めたほか,メイン大学(アメリカ)やタルトゥ大学(エストニア)で教壇に立ち,石器づくりや石器のフラクトグラフィを講義。2015年3月逝去。
主著Fractography of Glasses and Ceramics V(I 分担執筆,The American Ceramic Society and John Wiley & Sons,2012年),Lithic Use-Wear Analysis(分担執筆,Academic Press,1979年)など。

上峯篤史(うえみねあつし)
1983年奈良県生まれ。
南山大学人文学部人類文化学科准教授,博士(文化史学)。
同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士課程(後期課程)修了。同志社大学高等研究教育機構・文学部助手,日本学術振興会特別研究員PD,京都大学白眉センター・人文科学研究所特定助教をへて,2019年4月より現職。
主著『縄文石器——その視角と方法』(京都大学学術出版会,2018年),『縄文・弥生時代石器研究の技術論的転回』(雄山閣,2012年)など。

目次

口  絵
原著者まえがき
訳編著者まえがき

第1章 石割りとは何だろうか
第1節 石割りの今昔
(1)先史時代の石割り
(2)近年まで残っていた石割りの伝統
(3)現代の石割り
(4)石割り研究の視角
第2節 石割りの道具と技術
(1)石割りに必要な道具
(2)石割りの技術
(3)石割りのコツ
(4)石割りを学ぶ方法
第3節 石器石材
(1)代表的な石器石材
(2)石器石材の獲得法
(3)石器石材の物理特性
(4)属性の変化と反応

第2章 石器に見られる破面模様
第1節 ハックルとテール
(1)ねじれハックル
(2)テール
(3)ハックルスカー
第2節 リップル
(1)リップル
(2)ウォルナー線
(3)リップルを発生させる応力変化
(4)リップルを作る実験
第3節 ミラー,ミスト,ハックル,亀裂分岐
(1)ミラー
(2)ミストと高速ハックル
(3)亀裂分岐,初期亀裂分岐,横割れ楔
(4)速度と力の考察
(5)ミラー定数と応力
第4節 ミストやハックルと関係する破面模様
(1)ウォルナー・ミスト‒ハックル状模様
(2)ミスト抑止模様
(3)ミスト線
第5節 その他の破面模様
(1)物質界面模様
(2)縦割れ模様と分界線
(3)ラフル
(4)液体誘起模様
第6節 石器研究に役立つ破面模様

第3章 石器づくりで生じる剝離現象
第1節 破壊力学の基礎知識
(1)力学系と石割りの諸要素
(2)応力・応力波・振動
(3)破壊の原理
(4)壊滅的亀裂成長と準臨界亀裂成長
(5)石器と関連する破壊力学・破面解析の研究史
第2節 石器づくりの破壊力学
(1)剝離の開始と剝離面の形成
(2)打撃法の力学
(3)被加工物のブレと固定
第3節 打面や剝離面のフラクトグラフィ
(1)剝離開始部の特徴
(2)剝片の打面近くの属性
(3)剝離面の特徴
(4)稜が剝離を誘導する理由
第4節 断面のフラクトグラフィ
(1)亀裂経路と石核の形状
(2)亀裂経路と加力
(3)ポップアウト剝離とそれに付随する割れ
(4)ステップアウト剝離とステップイン剝離
(5)波状亀裂経路
(6)剝片の末端部
第5節 破損面のフラクトグラフィ
(1)破損の力学と破面模様
(2)石刃や剝片の破損
(3)バイフェイスの破損
(4)横断破損
(5)その他の特徴的な破損

訳編著者あとがき
出典一覧
索  引

COLUMN 1 石器製作実験からはわからないこと
COLUMN 2 アステカ文明における力学の理解
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