Home > Book Detail Page

学術選書 091

発酵学の革命

マイヤーホッフと酒の旅

木村 光

四六並製, 272 pages

ISBN: 9784814002894

pub. date: 07/20

  • Price : JPY 1,800 (with tax: JPY 1,980)
  • In Stock
 
  • mixiチェック

推薦

福岡伸一氏(『生物と無生物のあいだ』著者)推薦
科学をほんとうに理解するための最良の方法は科学史を学ぶことである。本書は、生化学の祖マイヤーホッフの生涯と、著者自身の研究の旅を重ね合わせて20世紀の生命科学史を総覧した格好の科学読本である。

内容

マイヤーホッフ(1884-1951)は酵母菌がアルコールを生み出す過程を解明し、謎だった微生物の働きを明かして生命科学研究を新次元に押し上げた。発酵学に革命をもたらした「アルコール発酵の父」を知ってもらいたい! 酒と料理を愛する化学者である筆者は、敬愛する先達の事績を訪ね世界中を旅した。マイヤーホッフのナチスからの逃避行の顛末を明らかにし、偉大な人物像に迫る。マイヤーホッフ発酵研究史と、筆者の旅の記録の二部構成。

書評

『化学と生物』Vol.59 No.11, 2021、評者:小林達彦氏

プロフィール

木村 光(きむら あきら)
京都大学名誉教授
1936年京都市生まれ。京都大学農学部農芸化学科(発酵)卒業。塩野義製薬研究所勤務ののち,京都大学農学部助教授,同大食糧科学研究所教授を歴任。国際誌(Appl. Microviol. Biotech.)編集委員(1984~),大学初の研究ベンチャー設立(グリーンバイオ代表取締役)など,活動は多岐にわたる。1999年紫綬褒章受章,米国工業微生物学会チャールス・トム賞受賞,2011年叙勲(瑞宝中綬章)受章。

〈研究〉抗生物質/リポアミノ酸/酵母の遺伝子導入法の開発(論文の被引用回数が7,010回(2019年10月8日現在)(400回以上は古典的論文))
〈主な著書〉『食品微生物学』培風館,1988年

目次

口 絵

はじめに マイヤーホッフをご存知ですか?

第Ⅰ部 マイヤーホッフをめぐる旅
第Ⅰ章 アルコール発酵解明の歴史
「酵母」を生物体とみなす新しい立場
パスツールの登場
パスツールの偉大さ(身体的ハンディキャップと有益性)
無細胞抽出液によるアルコール発酵の発見

第Ⅱ章 オットー・マイヤーホッフの時代
マイヤーホッフの生涯
デンマークからの手紙
ヒトラーによるユダヤ人の弾圧
ドイツからフランスへ,パリからマルセイユへ
ジャン・ロッシュの支援で出国ビザを獲得
マイヤーホッフの晩年(心臓発作)

第Ⅲ章 発酵研究史とマイヤーホッフ
発酵と解糖(グリコリシス)
乳酸学説(その始まりとマイヤーホッフの解糖系の研究)
エムデン―マイヤーホッフ経路
エムデン―マイヤーホッフ経路における糖のリン酸化
EM経路における三炭糖リン酸の生成
EM経路における三炭糖リン酸の酸化
マイヤーホッフの「乳酸学説」の進化
マイヤーホッフ研究室の空気

第Ⅳ章 マイヤーホッフをめぐる旅
マイヤーホッフの長女エマーソン夫人に会う
マイヤーホッフの高弟,ナハマンゾーン教授
リップマン教授を訪問
マイヤーホッフが心臓発作で倒れた状況をグレヴィッチ夫人から聞く
カナダのハリファックスに住むマイヤーホッフの長男を訪問
マイヤーホッフの次男ウォーター・マイヤーホッフ教授に会う
ドイツのハイデルベルグに作られた“マイヤーホッフ通”と“哲学の道”
マイヤーホッフが滞在したバニュルスの海洋研究所を訪問
ルヴォフの存在が明らかになりマイヤーホッフの滞在につながる可能性が出て来た
ドイツのダーレムでマイヤーホッフの記録を永久保存する事が決定
マルセイユでホテル・スプランディッドを探す
マイヤーホッフが一時拘束されていたミルズ強制収容所を訪問
ホテル・スプランディッドを確かめに行く
ヴァリアン・M・フライとは何者か
当時の社会情勢について
マイヤーホッフのピレネー越えに関する問題点の発見

第Ⅴ章 マイヤーホッフの同時代人
ジャン・ロッシュ(Jean Roche, 1901-1992)とは何者か
ロッシュの業績
ロッシュの手紙
ピレネー山超えで無国籍者の表明を拒んでパスポートが期限切れ
脱出後にロッシュへ打った電報がフランス警察の手に
ロッシュの手紙を見た息子のウォーターの納得(国境越えの真相)
ワールブルグとその研究室
エムデンとマイヤーホッフの関係
マイヤーホッフ研究室のカール・ローマン
マイヤーホッフの批判者カール・マイヤー教授に会えず
マイヤーからの手紙(1977,11,4)
ブラシュコからの手紙(1977,12,9)
マイヤーとマイヤーホッフの関係に関する筆者の見解
クーンはナチスへの協力者か

第Ⅵ章 筆者らの微生物研究
概観
核酸関連物質から有用物質の生産
酵母による発酵から“遺伝子”の研究へ大きく舵を切った
解糖系メチルグリオキサール経路の研究

第Ⅱ部  旅の記憶―世界の酒・食・文化に触れる
ワインと料理をめぐるバイオの世界旅
カナダのバイオ会議後,アメリカ・ナパバレーへ(1980,07,18-08,15)
ドイツの町々(1984,09,08-25)
ヨーロッパのクリスマス(1989,12,10-27)
パスツールの故郷,ドールとアルボア(1990,08,18-)
年末のロンドンで国際シンポジウム (1992,12,12-26)
スペインのヘレスとカディス(1993,06,20-)

あとがき

オットー・マイヤーホッフの年譜
索引

コラム
天才化学者ラボアジェとギロチン
物質の光学活性(キラリティ)
ノーベル賞は仮説に対して与えられるか
歴史的ホテル・スプランディッド
ウズホールの海洋生物研究所
ノイベルグの娘イレーヌ・フォレスト博士に会う
アメリカのベンチャー企業と日本の企業
このページの先頭へ