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生態人類学は挑む SESSION 5

関わる・認める

河合 香吏 編

A5並製・356頁

ISBN: 9784814003853

発行年月: 2022/01

  • 本体: 3,500円(税込 3,850円
  • 在庫あり
 
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内容

単独になりがちなオランウータン、努力して群れるゴリラ、離合集散するチンパンジー、いくつもの集団を生きるヒト。葛藤と喜びのはざまで常に隣人とともにある世界。否応なく開始される不断の交渉と、あらゆる相をみせる共存の形が生み出す他者への想像力は、いかに独自の秩序を形成していくのか? 霊長類とヒトの比較から、「ともに生きること」の諸相に迫る。

プロフィール

執筆者紹介(掲載順)

河合香吏 (かわい かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授.1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).主な著作に,『ものの人類学2』(共編著,京都大学学術出版会,2019年),『極限―人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2020年)などがある.

北村光二 (きたむら こうじ)
岡山大学名誉教授.1949年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.主な著作に,『人間性の起源と進化』(共編著,昭和堂,2003年),「自己肯定的な生き方を支えているもの―トゥルカナ社会における「物乞い」のコミュニケーション」(太田至・曽我亨編『遊牧の思想―人類学がみる激動のアフリカ』昭和堂,2019年,17-35頁)などがある.

田島知之 (たじま ともゆき)
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定助教.1984年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,『はじめてのフィールドワーク① アジア・アフリカの哺乳類編』(共著,東海大学出版部,2016年),Tajima, T., Malim, T.P., Inoue, E. 2018. “Reproductive success of two male morphs in a free-ranging population of Bornean orangutans,” Primates, 59(2): 127-133.などがある.

山内太郎 (やまうち たろう)
北海道大学大学院保健科学研究院教授,総合地球環境学研究所教授・プロジェクトリーダー.1968年生まれ.東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(保健学).主な著作に,「子どもの身体に異変が起きている―世界の子どもの体格・体力の現状と時代変化」(『日本健康学会誌』83(6):174-183,2017年),Yamauchi, T., Nakao, S., & Harada, H. (Eds.) 2022. The Sanitation Triangle: Socio-Culture, Health and Materials. Springer.などがある.

岩田有史 (いわた ゆうじ)
一般財団法人あしなが育英会会長室課長.1981年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).主な著作に,“Food dropping as a food transfer mechanism among western lowland gorillas in Moukalaba-Doudou National Park, Gabon,” Primates 55: 353-358, 2014. “Decaying toxic wood as sodium supplement for herbivorous mammals in Gabon,” Journal of Veterinary Medical Science, 77: 1247-1252, 2015.などがある.

夏原和美 (なつはら かずみ)
東邦大学看護学部教授.1964年生まれ.東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(保健学).主な著作に,Natsuhara, K., Inaoka, T., Umezaki, M., Yamauchi, T., Hongo, T., Nagano, M., & Ohtsuka, R. 2000. “Cardiovascular risk factors of migrants in Port Moresby from the highlands and island villages, Papua New Guinea,” American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Association, 12(5): 655-664. Morita, A., Natsuhara, K., Tomitsuka, E., Odani, S., Baba, J., Tadokoro, K., ... & Umezaki, M. 2015. “Development, validation, and use of a semi‐quantitative food frequency questionnaire for assessing protein intake in Papua New Guinean Highlanders,” American Journal of Human Biology, 27(3): 349-357.などがある.

川添達朗 (かわぞえ たつろう)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員.1981年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(理学).主な著作に,「オスの生活史ならびに社会構造の共通性と多様性」(辻大和・中川尚史編『日本のサル―哺乳類学としてのニホンザル研究』東京大学出版会,2017年,100-119頁),“Male-male social bonds predict tolerance but not coalition formation in wild Japanese macaques.” Primates, 62: 91-101, 2021.などがある.

生駒美樹 (いこま みき)
東京外国語大学大学院特別研究員.1981年生まれ.東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(学術).主な著作に,「パトロン=クライアント関係と負債―ミャンマーのチャ摘みの事例から」(『白山人類学』22:17-37,2019年),「少数民族組織の活動にみる統制・公共圏・共同体のありよう―パラウン(タアン)民族を事例に」(土佐桂子・田村克己編『転換期のミャンマーを生きる―「統制」と公共性の人類学』風響社,2020年,241-273頁)などがある.

座馬耕一郎 (ざんま こういちろう)
長野県看護大学准教授.1972年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了,博士(理学).主な著作に,『チンパンジーは365日ベッドを作る―眠りの人類進化論』(ポプラ社,2016年),「霊長類の1日の活動」(山口大学時間学研究所監修,時間学の構築編集委員会編集『時間学の構築Ⅲ ヒトの概日時計と時間』恒星社厚生閣,2019年,65-83頁)などがある.

馬場 淳 (ばば じゅん)
和光大学表現学部教授.1975年生まれ.東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了,博士(社会人類学).主な著作に,『この子は俺の未来だ―パプアニューギニア&ケニア “つながり”の文化人類学』(佼成出版会,2014年),『萌える人類学者』(共編著,東京外国語大学出版会,2021年)などがある.

目次

序 [河合香吏]

第Ⅰ部 秩序と社会の起原 

第1章 何が社会に「秩序」をもたらすのか?[北村光二] 
 1 社会の秩序とは何か?
 2 「パラドックス=決定不能な状態」の克服による新しい「秩序」の生成
 3 「価値ある物の他者への移譲」という相互行為が切り開く新たな秩序の地平
 4 「意味の共有」を手がかりにした「協働」による問題対処

第Ⅱ部 社会に生きる,社会で育つ

第2章 群れない類人猿—オランウータンの関わり合いから見える「集まらない」社会性[田島知之] 
 1 野生オランウータン調査のある1日
 2 オランウータン―群れない類人猿
 3 集まり,離れることで生成される社会
 4 集まらない理由―環境による制約と行動の違い
 5 オランウータンが集まるとき
 6 共存実現のメカニズム―社会的葛藤への対処行動
 7 離れながらの相互作用―オスの二型成熟と繁殖戦術
 8 まとめ:離れながらつながる社会性の原型

第3章 狩猟採集民の子どもはどのようにして大人になるのか—育児協働と子どもの狩猟採集活動[山内太郎]
 はじめに
 1 人間のライフサイクル
 2 狩猟採集社会における乳幼児と人々との関わり
 3 子どもと森との関わり
 おわりに

第Ⅲ部 食べることとささえあい

第4章 全体の努力と個体の努力—群れはいかに維持されるのか[岩田有史]
 はじめに
 1 方法
 2 ニシゴリラの採食行動の季節変化
 3 体サイズによる採食行動の違い
 おわりに―「関わる・認める」結果としての群れ

第5章 栄養生態学からみた人との関わりと子どもたち—近代化過程にあるパプアニューギニア東高地州におけるフードシェアリング[夏原和美]
 はじめに
 1 「何をどのくらい食べるか」を規定する要因
 2 調査地の概要と調査方法
 3 フードシェアリングの実態
 4 近代化とフードシェアリング
 おわりに

第Ⅳ部 行為のやりとり,もののやりとり

第6章 群れの「外」の関わり合い—ニホンザルの互恵性からみる社会[川添達朗]
 はじめに
 1 ニホンザルの社会とオスの生活史
 2 群れの内と外―オスのメンバーシップと交渉
 3 親和的関係の持続性と機能
 4 互恵的利他行動のメカニズム
 おわりに

第7章 格差のある二者の共生にみる力学—ミャンマーのチャ農家と労働者によるチャ摘み制度の調整を事例に[生駒美樹]
 はじめに―格差のある二者の共生
 1 シャン州ナムサン郡の茶生産
 2 農家と労働者の「支援」関係
 3 制度の調整
 4 揺らぐ農家と労働者の境界
 5 「制度」の調整と共生

第Ⅴ部 婚姻と家族のすがた

第8章 離合集散が織りなす集団の動態—ヒトとチンパンジーの社会にみる概日性多相集団[座馬耕一郎]
 1 人間が作る集団の特徴
 2 人間が作る集団の起原
 3 霊長類の社会構造
 4 観察事例
 5 離合集散と周期性
 おわりに

第9章 振る舞いをつむぎ,他者とともに生きる—パプアニューギニア・マヌス島の結婚生活と相互行為[馬場 淳]
 はじめに―相互行為の深遠な森へ
 1 民族誌的背景
 2 プヌオウ―クルティ社会における相互行為の鍵概念
 3 「振る舞い」の指標としての婚資
 4 開示される「振る舞い」―パラ・ソウエ儀礼
 5 相互行為への意思―他集団との姻戚交流
 おわりに―他者のための行為へ

第Ⅵ部 ともに生きることの方途

終 章 共存の諸相—他者と関わり,他者を認めるとはどのようなことか[河合香吏]
 はじめに
 1 人類学と霊長類学の協働―異種間比較という視点と方法
 2 群居のなかから
 3 行為のやりとり,もののやりとり
 4 集団レベルの「関わる・認める」
 おわりに

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