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プリミエ・コレクション 123

文法と身体

曖昧な文を伝達するイントネーションとジェスチャー

岡久 太郎

A5上製・238頁

ISBN: 9784814004669

発行年月: 2023/03

  • 本体: 3,400円(税込 3,740円
  • 在庫あり
 
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内容

「小さいバッグのポケット」のような曖昧な表現を、人は意味ごとに声の高低や身振りの型を変化させて伝えようとする。このような身体的工夫は、はたして文を正しく伝えているのだろうか? 統語的曖昧文に共起するイントネーションとジェスチャーの相互作用を、産出・理解の両面から検討。両者を認知構文論の観点から文法的解釈とセットの「構文」として提案し、マルチモーダル研究の新たな可能性を切り拓く。

プロフィール

岡久 太郎(おかひさ たろう)

1991年東京生まれ。静岡大学情報学部情報社会学科助教。京都大学博士(人間・環境学)。京都大学大学院人間・環境学研究科特定研究員、京都大学大学院情報学研究科特定研究員を経て現職。専門分野は認知言語学、マルチモーダル研究。

主な著作
Influence of Hand Gestures on Prosodic Disambiguation of Syntactically Ambiguous Phrases (Acoustical Science and Technology 39(2)、2018年、共著)、「階層構造の外在化における言語外的特徴 ――統語的曖昧性を解消するジェスチャー」(岡ノ谷一夫・藤田耕司編『言語進化学の未来を共創する』、ひつじ書房、2022年、共著)、「統語的曖昧性を解消するイントネーションとジェスチャーの共起可能性」(言語科学論集28、2022年、共著)、Constructing a culinary interview dialogue corpus with video conferencing tool(Proceedings of the 13th International Conference on Language Resources and Evaluation(LREC 2022), 2022, 共著)など

目次

はじめに

第1章 序論
1.1 言語表現以外の要素に対する伝統的な見方
1.2 言語研究と言語外的要素研究の融合
1.3 本書の目的と構成

第2章 認知的構文文法における言語外的要素
2.1 構文的アプローチと認知的構文文法
2.2 Langacker(2001)における言語外的要素の分析
2.3 言語外的要素についての認知的構文文法的研究の具体例
2.4 認知的構文文法における言語外的要素研究が抱える課題
2.5 本書の位置づけと「構文」「統語」の定義

第3章 ダウンステップによる統語構造の表示
3.1 ダウンステップと統語構造の対応関係
3.1.1 日本語におけるダウンステップの生起を決める要因
3.1.1.1 要因1:先行語のアクセントパターン
3.1.1.2 要因2:韻律的構成素
3.1.2 統語的曖昧文におけるダウンステップ
3.1.3 ダウンステップのドメインは統語構造から決定できるのか
3.1.3.1 XPの左端を跨いだダウンステップ
3.1.3.2 先行語のアクセント型の影響
3.1.4 ダウンステップと統語構造との関係を適切に捉えるために
3.2 構文としてのダウンステップの生起とリセット
3.2.1 ダウンステップの生起に関する構文の形式
3.2.2 ダウンステップの生起に関する構文の機能
3.2.3 ダウンステップを逐次処理の観点から構文として捉えた場合の課題
3.3 実験1:発話処理の観点から捉えたダウンステップの生起
3.3.1 刺激の設定と予測される結果
3.3.2 実験参加者と手続き
3.3.3 分析手法
3.3.4 結果
3.3.5 考察
3.3.5.1 ダウンステップの生起とリセットの構文的機能
3.3.5.2 与格型の長単位修飾型解釈におけるピッチ上昇
3.4 本章のまとめ ――ダウンステップの生起とリセットは発話処理を志向した構文である

第4章 ジェスチャーによる統語構造の表示
4.1 移動イベントを表す発話の統語構造とジェスチャーの対応
4.1.1 Talmy類型論:移動表現に関する2つの言語タイプ
4.1.2 移動イベントを表すジェスチャーの言語間差異
4.1.3 移動イベントを表す発話の統語構造とジェスチャーとの対応関係
4.1.4 言語発達の観点から見た移動イベントを表す発話とジェスチャーの言語間差異
4.1.5 認知的構文文法による統語構造に対応したジェスチャーの説明
4.1.6 統語構造に対応するジェスチャーを構文として捉えた場合に生じる予測
4.2 実験2:統語的曖昧文と共起するジェスチャー
4.2.1 刺激の設定と予測される結果
4.2.2 実験参加者と手続き
4.2.3 分析手法
4.2.4 結果
4.2.5 考察
4.2.5.1 階層性に基づいたジェスチャー
4.2.5.2 線条性に基づいたジェスチャー
4.3 本章のまとめ ――統語構造を区別するジェスチャーには日常的に用いるジェスチャーとの共通性が見られる

第5章 イントネーションとジェスチャーの相互作用
5.1 韻律的特徴と身体動作の結びつき
5.1.1 イントネーションの上下と身体動作の上下との平行性
5.1.2 韻律的特徴と身体動作の生起タイミングの共起性
5.1.3 ジェスチャー共起による韻律的特徴の向上
5.1.4 認知的構文文法のアプローチから見た韻律的特徴と身体動作の対応関係
5.2 実験3:統語的曖昧性を区別する韻律的特徴とジェスチャーの共起
5.2.1 実験条件の設定と予測される結果
5.2.2 実験参加者と手続き
5.2.3 分析手法
5.2.4 結果
5.2.5 考察
5.3 実験4:認知的・運動的負荷の増大による統語構造の韻律的区別への影響
5.3.1 条件設定と予測される結果
5.3.2 実験参加者と手続き
5.3.3 分析手法
5.3.4 結果
5.3.5 考察
5.4 本章のまとめ ――統語構造を区別するイントネーションとジェスチャーは認知的に同一の言語的領域を占める要素である

第6章 理解の側面からみた言語外的要素を形式とする構文
6.1 曖昧性を解消するイントネーションとジェスチャーの理解に関する先行研究
6.1.1 ダウンステップの有無と統語的曖昧文の理解
6.1.2 ジェスチャーと局所的曖昧文の理解
6.1.3 統語的曖昧性を区別するイントネーションとジェスチャーに関する仮説
6.2 実験5:言語外的要素が統語的曖昧文の発話理解に与える影響
6.2.1 刺激の設定と予想される結果
6.2.2 参加者と手続き
6.2.3 分析手法
6.2.4 結果
6.2.5 考察
6.3 本章のまとめ ――聞き手は統語的曖昧文の解釈にジェスチャーよりもイントネーションを有効に活用する

第7章 結論
7.1 本書全体の総括
7.2 リサーチクエスチョンへの回答
7.3 今後の展望 ――言語の実使用の中で構文を捉えるために

付録A 実験1、実験3、実験4で使用した刺激文
付録B 実験2で使用した刺激文

参考文献
おわりに
索 引
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