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霊長類進化の科学

京都大学霊長類研究所 編

菊上製・510頁

ISBN: 9784876987238

発行年月: 2007/06

  • 本体: 4,200円(税込 4,620円
  • 在庫なし

長谷川壽一氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)推薦

人間理解のための統合生物学——もうサル学なんて呼ばせない
お猿さんの研究所として知られる京都大学霊長類研究所は40歳を迎えた——不惑である。日本の霊長類研究は60歳——こちらは還暦である。この節目の年に、霊長類研究所のスタッフ全員が、霊長類研究の最前線をわかりやすく、ときにユーモアを交えて紹介してくれたのが本書である。 現代「サル学」の集大成?  もちろんそういう読み方もできるだろうが、いえいえ、けっしてそれだけではありません。分子、ゲノムから脳、心理、生態、保全まで。そして、それぞれの研究分野におけるフィールド研究とラボ研究が織りなす知の絨毯。本書を読むと、現代生物学の広がりと、それぞれの専門分野が関連し、連携しあっている様子が、手を取るように分かる。科学技術が細分化し続ける時代に、個別の領域を統合する道筋を明瞭に示す本書は、希有の書である。そもそも霊長類研究所のような統合生物学の研究拠点は世界でもほんの数ヶ所しかないのだ。人類も霊長類の一員であり、ヒトの生物学的、進化的基盤を知るには、霊長類を知ることが不可欠なのは言うまでもない。しかし、本書の裏側から放たれている強烈なメッセージは、本書で展開されるのと同じような研究の枠組みで、ヒトについての統合生物学が待望されているということだ。願わくは、近い将来、霊長類研究所の双子姉妹として人類研究所が作られ、ヒトの生物学が集大成されるべきなのだ。本書は、その意味で人間理解研究への重要な滑走路とも言えよう。

 
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内容

キツネザル、リスザル、ニホンザル、チンパンジー、ヒト……世界中にはさまざま霊長類が暮らしている。同じ「霊長類」の仲間と見なされるかれらが、どうしてこんなにも多彩なのだろうか。その謎を解く鍵が「進化」である。本書は、進化を軸として形態・生態・生理・遺伝など、あらゆる角度から霊長類に迫る。

書評

『LOGiN』07年10月号、評者:鹿野司氏、154-155頁

プロフィール

相見 満(アイミ ミツル)進化系統研究部門・前助教授[第1章3]
淺岡一雄(アサオカ カズオ)分子生理研究部門・助教[第11章2]
今井啓雄(イマイ ヒロオ)分子生理研究部門・准教授[第13章2
上野吉一(ウエノ ヨシカズ)人類進化モデル研究センター・准教授[第11章3]
遠藤秀紀(エンドウ ヒデキ)進化系統研究部門・教授[第2章1]
大石高生(オオイシ タカオ)分子生理研究部門・准教授[第8章2]
景山 節(カゲヤマ タカシ)人類進化モデル研究センター・教授[第13章1]
川本 芳(カワモト ヨシ)進化系統研究部門・准教授[第12章2]
國松 豊(クニマツ ユタカ)進化系統研究部門・助教[第1章2]
香田啓貴(コウダ ヒロキ)流動部門 多様性保全研究分野・助教[第5章1]
佐藤 弥(サトウ ワタル)比較認知発達(ベネッセコーポレーション)研究部門・准教授[第7章1]
清水慶子(シミズ ケイコ)分子生理研究部門助教[第10章2]
杉浦秀樹(スギウラ ヒデキ)社会生態研究部門助教[第3章1]
鈴木克哉(スズキ カツヤ)ニホンザル野外観察施設・教務補佐員 第3章3
鈴木樹理(スズキ ジュリ)人類進化モデル研究センター・准教授[第10章3]
髙井正成(タカイ マサナル)進化系統研究部門・教授[第1章1]
田中洋之(タナカ ヒロユキ)進化系統研究部門・助教[第12章3]
田中正之(タナカ マサユキ)行動神経研究部門・助教[第6章1]
友永雅己(トモナガ マサキ)行動神経研究部門・准教授[第6章2]
中村 伸(ナカムラ シン)分子生理研究部門・助教[第11章1]
橋本千絵(ハシモト チエ)社会生態研究部門・助教[第4章3]
Huffman, Michael Alan(ハフマン, マイケル・アラン)社会生態研究部門・准教授[第4章2]
濱田 穣(ハマダ ユズル)進化系統研究部門・准教授[第2章3]
林 美里(ハヤシ ミサト)比較認知発達(ベネッセコーポレーション)研究部門・助教[第6章4]
林 基治(ハヤシ モトハル)分子生理研究部門・教授[第8章1]
半谷吾郎(ハンヤ ゴロウ)社会生態研究部門・准教授[第3章2]
平井啓久(ヒライ ヒロヒサ)分子生理研究部門・教授[第12章1]
正高信男(マサタカ ノブオ)行動神経研究部門・教授[第5章2]
松井智子(マツイ トモコ)行動神経研究部門・准教授[第7章2]
松沢哲郎(マツザワ テツロウ)行動神経研究部門・教授[第6章3]
松林清明(マツバヤシ キヨアキ)人類進化モデル研究センター・教授[第10章1]
三上章允(ミカミ アキチカ)行動神経研究部門・教授[第9章1]
宮地重弘(ミヤチ シゲヒロ)行動神経研究部門・准教授[第9章2]
宮部貴子(ミヤベ タカコ)人類進化モデル研究センター・助教[第10章4]
毛利俊雄(モウリトシオ)進化系統研究部門・助教[第2章2]
脇田真清(ワキタ マスミ)行動神経研究部門・助教[第9章3]
渡邊邦夫(ワタナベ クニオ)社会生態研究部門・教授[第4章1]
(以上,京都大学霊長類研究所)
榎本知郎(エノモト トモオ)東海大学准教授[第10章1]
下岡ゆき子(シモオカ ユキコ)京都大学大学院理学研究科・教務補佐員[第3章1]
室山泰之(ムロヤマ ヤスユキ)兵庫県立大学・教授[第3章3]

目次

序章 霊長類学への招待---研究の歴史と分類の基礎
1 霊長類の起源と日本の霊長類学の礎
2 霊長類研究の課題と京都大学霊長類研究所の足跡
第 I 部 形をみる
第1章 過去を探る
1 サルの生まれた日[高井正成]
2 アフリカ類人猿の進化[國松 豊]
3 霊長類の共通祖先は夜行性だったか[相見 滿]
第2章 体を測る
1 形を追う執念[遠藤秀紀]
2 頭蓋計測からみたニホンザルの進化[毛利俊雄]
3 霊長類における成長・発達パターンの進化[濱田 穣]
第 II 部 生活をみる
第3章 生 態
1 霊長類の群れのかたち[杉浦秀樹・下岡ゆき子]
2 温帯の霊長類の生態学的適応[半谷吾郎]
3 ヒトとサルの生活空間と境界のうつりかわり[室山泰之・鈴木克哉]
第4章 行 動
1 道具を使うサルたち[渡邊邦夫]
2 チンパンジーの自己治療行動と人類の医療行為の進化[MICHAEL A. HUFFMAN]
3 ボノボとチンパンジーの性行動---メスたちは性行動から何を得るのか[橋本千絵]
第 III 部 心をみる
第5章 コミュニケーション
1 霊長類の音声とコミュニケーション[香田啓貴]
2 テナガザルの歌に言語の起源をさぐる[正高信男]
第6章 チンパンジーの視点
1 分類能力の進化[田中正之]
2 社会的認知の発達と進化[友永雅己]
3 ヒトとチンパンジーの認知発達[松沢哲郎]
4 物の操作と道具使用の発達[林 美里]
第7章 ヒトの視点
1 動的表情を処理する心のはたらき[佐藤 弥]
2 言語理解と心の理解[松井智子]
第IV 部 脳をみる
第8章 発達と可塑性
1 進化的観点からみた霊長類脳の発達と老化[林 基治]
2 中枢損傷によって失われた精緻運動機能の回復[大石高生]
第9章 活動と制御
1 思考過程の記憶を電気活動でみる[三上章允]
2 運動制御システムとしての前頭葉皮質[宮地重弘]
3 サルの脳と行動から考えた[脇田真清]
第 V 部 体をみる
第10章 生理と薬理
1 大型類人猿の雄性生殖器の進化[松林清明・榎本知郎]
2 霊長類の生殖内分泌現象の特性[清水慶子]
3 霊長類の成長に関する内分泌学的研究---ニホンザルを中心に[鈴木樹理]
4 霊長類と麻酔---作用機序の解明と質の向上をめざして[宮部貴子]
第11 章 モデル動物としての適用と福祉
1 免疫・アレルギー分野での新展開[中村 伸]
2 環境化学物質の霊長類応答[浅岡一雄]
3 動物福祉への進化的視点[上野吉一]
第 VI 部 ゲノムをみる
第12章 染色体と遺伝子
1 染色体進化から見えること[平井啓久]
2 遺伝子から見たニホンザルの地域分化[川本 芳]
3 テナガザル亜種・種分化の分子系統分析[田中洋之]
第13章 生体分子の機能と進化
1 酵素の機能多様性と進化[景山 節]
2 感覚受容体の退化と進化[今井啓雄]

あとがき
用語集
読書案内
索引
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