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緑の帝国

世界銀行とグリーン・ネオリベラリズム

マイケル・ゴールドマン 著/山口富子 監訳

A5上製・312頁

ISBN: 9784876987245

発行年月: 2008/02

  • 本体: 3,800円(税込 4,180円
  • 在庫あり

【原著推薦】
『緑の帝国』は,幅広い層の読者を魅了し,絶賛され,引用されることであろう.ゴールドマンが提案する新しい社会学の視座は,きっと多くの人に研究の方向性を与えてくれる.
ジェームズ C.スコット(イェール大学教授, Seeing Like a State 著者)

独創的で,洞察に満ちた『緑の帝国』は,「開発」の名のもと,途上国がどのようにして発展ではなく衰退へと追いやられてゆくのかを暴き出している.
ナオミ・クライン(『ブランドなんか,いらない』著者)

……ゴールドマンは緻密な研究を経て,世界銀行の秘密主義的な活動がどのようにして世銀の利益に結びつくのか,またそこにかかわる多国籍企業がどのように途上国の環境,経済を圧殺し,貧しい者から資源と権利を剥奪しているのかを明らかにしている.
ヴァンダナ・シヴァ(『アース・デモクラシー』著者)

世界銀行が開発に関わる知識生産の最重要拠点のひとつとして勃興していることを生き生きと描きだす本書は,……知識が権威を得,そして圧力のもとでどのように転化するかという過程を記録することによって,オルタナティブな開発の方向性を示唆している.
ジリアン・ハート(カリフォルニア大学バークレー校教授,Disabling Globalization 著者)

 
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内容

本書を読まずして世界銀行は語れない。ブレトンウッズ体制とともに誕生した世界銀行。市場重視の開発政策と環境保護主義の「思いがけない結びつき」であるグリーン・ネオリベラリズム。そのヘゲモニーが持つ権力性を言説分析によって明らかにし,「静かな支配」の実像に迫る。

書評

『週刊東洋経済』'08年5/3-10合併特大号、174頁、評者:橋本努氏
『東京新聞』'08.5.11朝刊「読書」、評者:粉川哲夫氏
『讀賣新聞』'08.6.22朝刊「本のよみうり堂」、評者:米本昌平氏
『週刊金曜日』'08年7/11号、42頁
『讀賣新聞』'08.12.28朝刊「読書委員が選ぶ2008年の3冊」、評者:米本昌平氏

プロフィール

[著者紹介]

マイケル・ゴールドマン(Michael Goldman)
1994年,社会学博士(カリフォルニア大学).現在,ミネソタ大学社会科学部准教授,マクナイト・プレジデンシャル・フェロー(McKnight Presidential Fellow,将来有望な准教授に授与される米国のフェローシップ).主な著作に,Privatizing Nature: Political Struggles for the Global Commons. Rutgers University Press, 1998. "Under New Management: Historical Context and Current Challenges at the World Bank." 2007. Brown Journal of World Affairs, special issue on Wolfowitz's Bank, Vol. XIII: 2, Summer 2007. ほか,グローバル化と専門知識の普及にかかわる論文多数.

[監訳者紹介]
山口 富子(やまぐち とみこ)
1986年南山大学外国語学部卒業,1995年バース大学社会科学科開発学修士,2004年ミシガン州立大学社会学部博士課程修了.現在,国際基督教大学教養学部准教授.

論文:
「科学技術をめぐる言説論的アプローチの展望」『国際基督教大学社会科学研究所モノグラフシリーズ』 No.12, 2007年.
メControversy over Genetically Modified Crops in India: Discursive Strategies and Social Identify of Farmersモ Discourse Studies. Vol.9, 2007.
"The Economic Hegemonization of Bt Cotton Discourse in Indiaモ Discourse and Society. Vol. 15, 2004.

目次

日本語版への序文
謝辞

第1章 世界銀行を理解する
  グリーン・ヘゲモニーの興隆,世銀スタイル
  開発学における緊張関係
  第三の道——「巡り合わせの領域」の分析論
  脆弱なヘゲモニー

第2章 世界銀行の台頭
  幸先の良いスタート
  マクナマラの時代
  世銀の権力の種をまく
  負債と構造調整
  グリーンとネオリベラルの緊張関係
  結論

第3章 知識の生産——世界銀行のグリーン・サイエンス
  研究課題と組織的制約
  環境研究とプロジェクト・サイクル
  職員の環境アセスメント研修
  環境モニタリングは至難の業
  知識のヒエラルキー
  ナルキッソスの回帰?
  ピラミッド型支配構造の維持
  経済学者の中の人類学者
  合意形成
  組織の内部制約と対外的圧力の狭間で
  結論

第4章 あたらしい学問の誕生——環境知識の生産
  ラオスにおける環境知識の生産
  グリーン・ネオリベラリズムの主観性
  結論

第5章 エコ統治性と環境国家の生成
  ラオスを緑化する
  新たな法,機関,プロジェクト
  ハイブリッドな国家主体の生成
  不均衡開発
  結論

第6章 水の民営化,市民社会のネオリベラル化——越境する政策ネットワークの権力
  越境する政策ネットワークの台頭
  水をめぐる新たな世界的課題とネットワーキング
  水の民営化という言説空間とその拡張
  水改革に関する国際合意
  水の民営化の強要
  パイプの亀裂
  矛盾あふれる「非」市民社会の台頭か?
  結論

第7章 それは閉鎖できるか?
  政治活動家からの反応
  マイケル:ハイチ中央電力労働組合オルガナイザー
  ジェイムズ:債務と開発を考えるジンバブエ連合のオルガナイザー

[監訳者解題]拡がる「緑」のヘゲモニー

参考文献
索引
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