集団
人類社会の進化

河合 香吏 編

菊上製・364頁・税込 4,320円
ISBN: 9784876989379
発行年月: 2009/12
在庫なし

書評

『日本経済新聞』、'10.4.4朝刊「読書」面
『文化人類学』75-2、300-303頁、評者:青木恵理子氏
『アジア・アフリカ地域研究』2010年第10-1号、71-74頁、評者:水谷雅彦氏
『アフリカ研究』78、95-97頁、評者:木村大治氏

内容

ペア/家族から民族/国家まで,ヒトはなぜ「集まる」のか? 集団形成における「暴力」と「誘惑」の役割,「見えない仲間」を描き出す表象能力,構造化されたsocietyにおける非構造のsocialなど,集団形成のメカニズムを進化の中で解き明かす.霊長類学と生態・社会文化人類学の第一人者による,本格的な共同研究.

目次

序章 集団:人類社会の進化史的基盤を求めて[河合香吏]
1●はじめに
2●人類学と霊長類学における集団研究と進化論
3●伊谷純一郎の人類社会の進化論とフィラバンガの行列
4●本書の内容
5●用語について
6●今村仁司の存在

第1部 社会性の進化

1章 非構造の社会学:集団の極相へ[足立 薫]
Keywords:非構造,生活形,混群,霊長類社会学,種社会
1●はじめに
2●社会構造進化論とBSU
3●構造と非構造
4●生活形の社会学
5●非構造から進化をみる
6●おわりに

2章 単独者の集まり:孤独と「見えない」集団の間で[内堀基光]
Keywords:単独者,孤独,ペア,共在様態,ネットワーク
1●孤独から
2●集団性と社会性
3●ひとりとペア,そして人の群れ
4●「集まり」の効用
5●集団とネットワーク
6●「集まる」ことから制度へ

3章 人間の共同性はどこから来るのか?:集団現象における循環的決定と表象による他者分類[北村光二]
Keywords:集団現象,進化,対称的な他者,循環的決定,分離された表象
1●はじめに
2●集団現象の生物学的基礎
3●群居的な生活形を採用した系統における集団現象
4●人間社会における環境との関係づけの活動の集合化
5●おわりに:サルと人間の間の差異を橋渡しするもの

4章 霊長類における集団の機能と進化史:地理的分散の性差に着目して[中川尚史]
Keywords:系統的慣性,社会構造,淘汰圧,適応,父系社会
1●はじめに
2●社会構造の類型化
3●現在の社会生態学モデル
4●地理的分散の視点から父系社会の進化史を考える
5●まとめに代えて:初期人類の社会構造に関する新仮説

Article 1 チンパンジーの集団:メスから見た世界[伊藤詞子]
Keywords:できごと,離合集散,全体性,境界,構造

第2部 社会集団のなりたち

5章 集団のオントロギー:「分かち合い」と生業のメカニズム[大村敬一]
Keywords:カナダ・イヌイト,生業,食べ物,分かち合い,贈与
1●はじめに:出発点としての一元的な世界
2●日常世界を生成する社交の装置:イヌイト社会における生業
3●「信頼」と「誘惑」:イヌイトの生業における「人間」と「野生生物」
4●集団のオントロギー:人類社会の進化史的基盤としての「分かち合い」

6章 暴力と集団の自己産出:海賊と報復の民族誌から[床呂郁哉]
Keywords:集団形成,海賊,報復,暴力Iと暴力II,暴力の遠心性と求心性
1●暴力と集団
2●スールーにおける暴力の民族誌(その㈰):海賊
3●スールーにおける暴力の民族誌(その㈪):報復
4●暴力と集団のオートポイエーシス

7章 徒党を組む:牧畜民のレイディングと「共同の実践」[河合香吏]
Keywords:東アフリカ牧畜民,レイディング,交易,興奮,社会共同性
1●はじめに
2●「好戦的な牧畜民」像
3●レイディング・プログラム
4●レイディングにおける「共同の実践」
5●おわりに

Article 2 昨日の友は今日の敵:パプアニューギニア・フリの社会[梅崎昌裕]
Keywords:集団の流動性,争い,サポート,人口移動,都市住民

第3部 「われわれ」意識の生成と展開

8章 「今ここの集団」から「はるかな集団」まで:狩猟採集民のバンド[寺嶋秀明]
Keywords:バンド,狩猟採集民,絆,ネットワーク,自立
1●はじめに
2●バンドのモデル
3●バンドの実態:「今ここの集団」から「はるかな集団」まで
4●バンドを生きる人びと:絆と自立

9章 感知される「まとまり」:可視的な「集団」と不可視の「範疇」の間[曽我 亨]
Keywords:行為の同調,一時的な集団,感知される「まとまり」,「まとまり」の表象,文化範疇
1●はじめに
2●集団の可視性
3●同調する行為によって生成される一時的な集団
4●集団の重なりによって感知される「まとまり」
5●文化範疇と「まとまり」の相克
6●おわりに

10章 「われらベンバ」の小さな村:居住集団の日常と王国をつなぐしかけ[杉山祐子]
Keywords:居住集団,王国,炉帯組,離散と集合のサイクル,参照する位相
1●はじめに
2●ベンバ王国と村の構成
3●さまざまな「集い」と相互交渉の蓄積がつくる村の輪郭
4●離散と集合:村の発展サイクルと権威
5●「参照する位相」の複層化
6●おわりに

Article 3 ケニア・ルオという「集団」:社会人類学からの点描[椎野若菜]
Keywords:ケニア・ルオ,植民地化,意識的な集団化,政治的闘争,アイデンティティ

第4部 新たな集団論へ

11章 集団的興奮と原始的戦争:平等原則とは何ものか?[黒田末寿]
Keywords:チンパンジー属,対等性,平等原則,集団的興奮,原始的戦争
1●はじめに
2●集団現象と興奮
3●平等原則と闘争と興奮
4●一体化を求める興奮性動物

12章 エイジェントは誘惑する:社会・集団をめぐる闘争モデル批判の試み[田中雅一]
Keywords:エイジェンシー,ネットワーク,代理,暴力,エロス
1●はじめに
2●闘争モデル:ジラール,今村,クラストル
3●ネットワークと関わり合い:対人関係の概念化
4●代理性:エイジェントとネットワーク
5●誘惑:エイジェントとエイジェントの相互作用
6●肉の共同体:メルロ=ポンティとともに
7●おわりに

13章 人間集団のゼロ水準:集団が消失する水準から探る,関係の意味,場と構造[船曳建夫]
Keywords:場,場面,意味,高さ,構造
1●はじめに
2●人間関係の場と構造
3●人間集団が消失する水準
4●意味の場と,高さと構造

終章 「集団」から「制度」へ:まとめと展望[河合香吏,黒田末寿,北村光二,内堀基光]
1●Social集団の非構造性をあぶり出す:霊長類学領域から
2●「表象」を手がかりにした「活動の集合化」:生態人類学領域から
3●象徴化能力と制度による束ねへ:社会文化人類学領域から

 今村仁司先生の遺したもの[西井凉子]

 あとがき[河合香吏]
 索  引

プロフィール

足立 薫(あだち かおる)
立命館大学非常勤講師
1968年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『人類の起源と進化』(昭和堂,共著).

伊藤詞子(いとう のりこ)
財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー
1971年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,京都大学博士(理学). 主な著書に,『マハレ山塊のチンパンジー』(京都大学学術出版会,共著),『人間性の起源と進化』(昭和堂,共著).“Chimpanzee grouping patterns and food availability in Mahale Mountains National Park,Tanzania” Primates 48: 87-96(共著).

内堀基光(うちぼり もとみつ)
放送大学教授
1948年生まれ.オーストラリア国立大学太平洋地域研究所博士研究課程修了,Ph. D.
主な著書に,『死の人類学』(講談社学術文庫,共著),『森の食べ方』(東京大学出版会), 『論集資源人類学』全9巻(弘文堂,総合編者)など.

梅崎昌裕(うめざき まさひろ)
東京大学大学院医学系研究科准教授
1968年生まれ.東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(保健学).
主な著書・論文に,『中国・海南島―焼畑農耕の終焉』(東京大学出版会,共著),『ブタとサツマイモ』(小峰書店),“Adaptive strategies of Highlands-origin migrant settlers in Port Moresby,Papua New Guinea” HumanEcology31: 3-25.

大村敬一(おおむら けいいち)
大阪大学大学院言語文化研究科准教授
1966年生まれ.早稲田大学大学院文学研究科考古学専攻博士後期課程満期修了,博士(文学).
主な著書に,Self and Other Images of Hunter-Gatherers(National Museum of Ethnology,共編著),『文化人類学研究:先住民の世界』(放送大学教育振興会,共編著),『極北と森林の記憶:イヌイットと北西海岸インディアンのアート』(昭和堂,共編著)など.

河合香吏(かわい かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『野の医療:牧畜民チャムスの身体世界』(東京大学出版会) ,『社会空間の人類学:マテリアリティ・主体・モダニティ』(世界思想社,共著),『生きる場の人類学:土地と自然の認識・実践・表象過程』(京都大学学術出版会,編著)など.

北村光二(きたむら こうじ)
岡山大学大学院社会文化科学研究科教授
1949年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士
主な著書に,『人間性の起源と進化』(昭和堂,共編著) ,『生きる場の人類学:土地と自然の認識・実践・表象過程』(京都大学学術出版会,共著)など.

黒田末寿(くろだ すえひさ)
滋賀県立大学人間文化学部教授
1947年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『ピグミーチンパンジー:未知の類人猿』(筑摩書房・以文社) ,『人類進化論再考:社会生成の考古学』(以文社) ,『自然学の未来:自然との共感』(弘文堂),『アフリカを歩く:フィールドノートの余白に』(以文社,共編著)など.

椎野若菜(しいの わかな)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教
1972年生まれ.東京都立大学大学院社会科学究科社会人類学専攻満期退学,博士(社会人類学).
主な著書に,『結婚と死をめぐる女の民族誌:ケニア・ルオ社会の寡婦が男を選ぶとき』(世界思想社),『やもめぐらし:寡婦の文化人類学』(明石書店,編著),『セックスの人類学』(春風社,共編著)など.

杉山祐子(すぎやま ゆうこ)
弘前大学人文学部教授
1958年生まれ.筑波大学大学院歴史・人類学研究科後期博士課程修了,京都大学博士(地域研究).
主な著書に『アフリカ女性の民族誌』(明石書店,共著),『生きる場の人類学:土地と自然の認識・実践・表象過程』(京都大学学術出版会,共著).

曽我 亨(そが とおる)
弘前大学人文学部准教授
1964年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『自然の資源化』(弘文堂,共著) ,『遊動民(ノマッド):アフリカの原野に生きる』(昭和堂,共著),『遊牧民の世界』(京都大学学術出版会,共著)など.

田中雅一(たなか まさかず)
京都大学人文科学研究所教授
1955年生まれ.ロンドン大学経済政治学院人類学博士課程,Ph. D.(Anthropology)
主な著書に,『供犠世界の変貌:南アジアの歴史人類学』(法藏館),『ミクロ人類学の実践:エイジェンシー/ネットワーク/身体』(世界思想社,共編著) ,『フェティシズム研究』(全3巻)(京都大学学術出版会,編著)など.

寺嶋秀明(てらしま ひであき)
神戸学院大学人文学部教授
1951年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『共生の森』(東京大学出版会),『エスノ・サイエンス』(京都大学学術出版会,共編著),『平等と不平等をめぐる人類学的研究』(ナカニシヤ出版,編著) .

床呂郁哉(ところ いくや)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1965年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退,学術修士,文化人類学専攻.
主な著書に,『越境:スールー海域世界から』(岩波書店) ,Globalization in Southeast Asia: Local ,National ,and Transnational Perspectives.(BerghahnBooks,共著) .

中川尚史(なかがわ なおふみ)
京都大学大学院理学研究科准教授
1960年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『サルの食卓:採食生態学入門』(平凡社),『食べる速さの生態学:サルたちの採食戦略』(京都大学学術出版会),『サバンナを駆けるサル:パタスモンキーの生態と社会』(京都大学学術出版会)など.

西井凉子(にしい りょうこ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1959年生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学,総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程中途退学,文学博士.
主な著書に,『死をめぐる実践宗教』(世界思想社),『社会空間の人類学:マテリアリティ・ 主体・モダニティ』(世界思想社,共編著) ,『生きる場の人類学:土地と自然の認識・実践・ 表象過程』(京都大学学術出版会,共著)など.

船曳建夫(ふなびき たけお)
東京大学大学院総合文化研究科教授
1948年生まれ.ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程卒業,Ph. D.(学術博士)
主な著書に,『国民文化が生れる時』(リブロポート,共編著),『新たな人間の発見』(岩波書店,共編著) ,『「日本人論」再考』(NHK出版)など.