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ことばの力

あらたな文明を求めて

横山 俊夫 編著

A5上製・380頁

ISBN: 9784876982011

発行年月: 2012/03

  • 本体: 4,000円(税込 4,400円
  • 在庫あり
 
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内容

専門用語が氾濫し意思疎通が難しくなった現代社会で,つながり,ひびきあう対話は可能か.江戸〜近代の辞書編纂者らの「ことば磨き」から伝統技芸の語りまで多彩な事例を紹介し,文明を成りたたせる媒介としての言語の可能性を探る.異領域の専門家6人が「パーソナルゲノム時代の人間を語ることば」をテーマに語り合った座談会も収録.

書評

『WEDGE』2012年6月号、51頁「気になる新刊」
『京都新聞』2012年7月6日朝刊 文化面

プロフィール

横山俊夫 (よこやま としお、編者)

京都大学人文科学研究所教授。1947 年京都府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻、修士課程修了、哲学博士(オックスフォード大学)。研究分野は、日本文化史、日欧文化交渉史、 文明学。

主な著作に、『Japan in the Victorian Mind』(Macmillan, 1987)、『視覚の一九世紀』(編著、思文閣出版、1992)、『貝原益軒 ― 天地和楽の文明学』(編著、平凡社、1995)、『日用百科型節用集の使われ方』(共著、人文科学研究所、1998)、『鮫島尚信在欧外交書簡録』(共編、思文閣出版、 2002)、‘Even a sardine’s head becomes holy ...,’ Sansai, An Environmental Journal for the Global Community, No.1, 2006.

遠藤 彰 (えんどう あきら)

立命館大学理工学部教授、同 大学院先端総合学術研究科教授(2011 年 11 月逝去退職)。1947年兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科動物学専攻博士課程修了、理学博士(京都大学)。 研究分野は、動物生態学、生物群集論。
主な著作に、『ベッコウバチのクモがり』(岩波書店、1982)、『見えない自然』(昭和堂、1993)、「江戸の虫たちをめぐる表象と言説 ― 秋草の美学から虫のパロディへ」「ファーブル『昆虫 記』の翻訳と読者 ― 「虫好き文化ルネサンス」の現代と未来」(上田哲行編『トンボと自然 観』京都大学学術出版会、2004)、「現代の「環境問題」と生態学」(松原洋子、小泉義之編『生 命の臨界 ― 争点としての生命』人文書院、2005)。

加藤和人 (かとう かずと)

京都大学人文科学研究所准教授、同 大学院生命科学研究科兼任准教授、物質-細胞統合システム拠点連携准教授。1961 年京都府生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、 理学博士(京都大学)。研究分野は、現代生命科学論、先端医学情報動態研究。
主な著作に、「ヒトゲノムプロジェクトの展開」(塚原修一、綾部広則編『日本の科学技術』第3巻、原書房、2011)、「生命科学の倫理と科学コミュニケーション ― 日本の課題と科学コミュ ニティへの期待」(位田隆一、矢野智司ほか編『倫理への問いと大学の使命』京都大学学術出版会、2010)。

菊地 暁 (きくち あきら)

京都大学人文科学研究所助教。1969 年北海道生まれ。大阪大学大学院文学研究科日本学専攻博士課程修了、博士(文学)(大阪大学)。研究分野は、民俗学。
主な著作に、『柳田国男と民俗学の近代』(吉川弘文館、2001)、『身体論のすすめ』(編著、丸善、 2005)、「京大国史の「民俗学」時代 ― 西田直二郎、その<文化史学>の魅力と無力」(丸山 宏ほか編『近代京都研究』思文閣出版、2008)、「智城の事情 ― 近代日本仏教と植民地朝鮮 人類学」(坂野徹ほか編『帝国日本の視角/死角』青弓社、2010)。

木村大治 (きむら だいじ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授。1960 年愛媛県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士(京都大学)。研究分野は、人類学、コミュニケーション研究。

主な著作に、『共在感覚 ― アフリカの二つの社会における言語的相互行為から』(京都大学学 術出版会、2003)、『インタラクションの境界と接続 ― サル・人・会話研究から』(編著、昭 和堂、2010)、『括弧の意味論』(NTT 出版、2011)。

倉島 哲 (くらしま あきら)

関西学院大学社会学部准教授。1974 年長野県生まれ。京都大学大学院文学研究科社会学専修博士課程修了、博士(文学)(京都大学)。研究分野は、社会学、身体論。
主な著作に、『身体技法と社会学的認識』(世界思想社、2007)、「マルセル・モース ― 挑戦と しての贈与」(大澤真幸編『3.11 以降の思想家 25 人』左右社、2011)、「身体技法とハビトゥス」(井上俊ほか編『社会学ベーシックス 8』世界思想社、2010)、「身体技法の習得と身体の抵抗」 (『人文学報』98、2009)。

後藤静夫 (ごとう しずお)

京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター教授。1946 年静岡県生まれ。京都大学文学部史学科卒業。研究分野は、日本近世芸能史、日本文化論、人形浄瑠璃・文楽の実態研究。
主な著作に、『日本の伝統芸能 4 人形芝居と文楽』(小峰書店、1995)、「現代の文楽 ― 現状と展望(II)制作の側から」(鳥越文蔵ほか編『岩波講座 歌舞伎・文楽』第 10 巻、岩波書店、 1997)、「近松と文楽」(神戸女子大学古典芸能センター編『近松再発見 ― 華やぎと哀しみ』 和泉書院、2010)、『近代日本における音楽・芸能の再検討』(編著、京都市立芸術大学日本伝 統音楽研究センター、2010)。

斎藤清明 (さいとう きよあき)
著述家。もと毎日新聞記者(~2003)、総合地球環境学研究所教授(~09)。1945 年和歌山県生まれ。京都大学農学部、教育学部卒業。研究分野は、自然学、登山探検史、ジャーナリズム。
主な著作に、『京大人文研』(創隆社、1986)、『今西錦司 ― 自然を求めて』(松籟社、1989)、『メ タセコイア ― 昭和天皇の愛した木』(中央公論社、1995)、『南極発・地球環境レポート』(中 央公論新社、2000)。

田辺明生 (たなべ あきお)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授、同 研究科附属現代インド研究センター長。1964 年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学、 博士(学術)(東京大学)。研究分野は、南アジア地域研究、歴史人類学。

主な著作に、The State in India: Past and Present(共編、Oxford University Press, 2006),『南アジア社会を学ぶ人のために』(共編、世界思想社、2010)、『カーストと平等性 ― インド社会 の歴史人類学』(東京大学出版会、2010)。

廣瀬千紗子 (ひろせ ちさこ)

同志社女子大学表象文化学部教授、同 大学院文学研究科教授。1949 年京都府生まれ。立命館大学大学院文学研究科日本文学専攻修士課程修了。文学修士(立命館大学)。研究分野は、日 本近世文学、日本芸能史。
主な著作に、「歌舞伎役者論」(熊倉功夫編『日本の近世』11、中央公論社、1993)、「歌舞伎の 完成」(久保田淳ほか編『岩波講座 日本文学史』9、1996)、『馬琴の戯子名所図会をよむ』(共 編著、和泉書院、2001)、「並木正三追善の戯作をめぐって」(熊倉功夫編『遊芸文化と伝統』、 吉川弘文館、2003)、『古今いろは評林 ― 本文と注釈』(共編著、私家版、2008)。

深澤一幸 (ふかざわ かずゆき)

大阪大学大学院言語文化研究科教授。1949 年京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学修士(京都大学)。研究分野は、中国言語文化(唐宋の宗教と文学、清末民初の中国人海外交流など)。
主な著作に、『唐詩三百首』(角川書店、1989)、『唐詩選』(角川学芸出版、2010)、『中国文学歳 時記』(共編著、同朋舎、1988)、『魯迅全集第 14 巻 書簡 I』(共訳、学習研究社、1985)、『初級中国語』(共著、大阪大学出版会、2007)。

松田文彦 (まつだ ふみひこ)

京都大学医学研究科教授。同 研究科附属ゲノム医学センター長。1960 年徳島県生まれ。京都大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士(京都大学)。研究分野は、分子生物学、人類 遺伝学、ゲノム医学。
主な著作に、ヒト全ゲノム解読に先駆けて抗体H鎖可変部遺伝子領域の全塩基配列を決定した ‘The complete nucleotide sequence of the human immunoglobulin heavy chain variable region locus,’ Journal of Experimental Medicine, 188: 2151―2162, 1998(共著)、欧米人の肺がん感受性遺 伝 子 の 発 見 を 報 じ た ‘A susceptibility locus for lung cancer maps to nicotinic acetylcholine receptor subunit genes on 15q25,’ Nature, 452: 633―637, 2008(Hung, R. J. らと共著)、高脂血症 薬スタチンで稀に起こる横紋筋融解症の原因遺伝子を同定した ‘SLCO1B1 variants and statin- induced myopathy,’ New England Journal of Medicine, 359: 789―799, 2008(Link, E. らと共著)。

山極寿一 (やまぎわ じゅいち)

京都大学大学院理学研究科教授。1952 年東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士(京都大学)。研究分野は、人類学、霊長類学。
主な著作に『家族の起源』(東京大学出版会、1994)、『父という余分なもの』(新書館、1997)、『ゴ リラ』(東京大学出版会、2005)、『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』(NHKブックス、2007)、『人類進化論 ― 霊長類学からの展開』(裳華房、2008)、『ゴリラ図鑑』(文渓堂、 2008)。

目次

序—ことばの力と文明化 [横山俊夫]
   いまこそ対話のならいを
   文明化とは
   あやをなすことばを
   本書のことばはどうか

第 Ⅰ 部 ことば学びとことば使い—あやをなすこころざし

第1章 〈ことばの聖〉ふたり— 新村出と柳田国男 [菊地 暁]
   一 関口出と松岡国男
   二 京都帝大と郷土研究
   三 南島と南蛮
   四 「辞書編者」と「民俗学者」
   五 方言研究と国語問題
   六 「馬鹿」な話
   七 戦後そして晩年
   八 「生きていることば」のために
第2章 十八世紀日本の言葉なおし — 浪華のものしり山本序周の場合 [横山俊夫]
   一 若い女性へのおくりもの
   二 文の道へ
   三 文明をもたらす言葉と心
   四 言葉いやしからず、ただなだらかに読みやすく
第3章 廓の言葉— 十七世紀上方の色道手引き [廣瀬千紗子]
   一 廓と遊興指南書
   二 遊興の戒め
   三 『たきつけ草』の弁明
   四 傾城と誠
   五 『難波鉦』の問答

第 Ⅱ 部 ことばの力と身体—ともに感じるよろこび

第4章 わざをめぐる言葉—マンチェスターの太極拳を題材に [倉島 哲]
   一 問題の所在
   二 太極拳とマンチェスター
   三 文化的価値を帯びた言葉
   四 毎週の練習の概要
   五 文化的価値の空白
   六 他者の言葉
   七 他者の世界の不透明性
   八 言葉の人称性
第5章 語りの力と時間—文楽の義太夫節を考える [後藤静夫]
   一 義太夫節の曲節
   二 演奏の目指すもの
   三 伝承における時間
   四 見えてきたこと
第6章 清朝詩人と十九世紀末欧州—竹枝詞がうたうサンクト・ペテルブルグ [深澤一幸]
   一 ペテルブルグへの旅立ち
   二 劇場めぐりのうた
   三 大聖堂のうた
   四 市街と温泉のうた
   五 冬宮周辺のうた
   六 田舎の舞踏会のうた

第 Ⅲ 部 ことばの力と自然—あらたな知がうまれるとき

第7章 狩蜂の「本能」—ファーブル『昆虫記』の言葉を考える [遠藤 彰]
   一 ジガバチの謎
   二 怪物が通る—ファーブルとメーテルリンク
   三 ファーブル『昆虫記』の逸脱と画期性
   四 「虫の視点」をとらえたファーブルの叙述
   五 ダーウィンの「徐々に変化する本能」 へのファーブルの異議
   六 ベルクソンは「本能は共感である」という
   七 ウィーラーのファーブル批判と昆虫社会の発展段階説
   八 ジガバチと青虫の間にあるもの—動物行動学への一瞥
   九 虫たちへ —まだ寡黙なわれわれからの挨拶
第8章 サルの名付けと個体識別 [山極寿一]
   一 野生動物個体への名付けと動物観
   二 日本の霊長類学と名付け
   三 欧米での批判と類人猿の名付け
   四 名付けによって見えてきたサルと類人猿の社会
第9章 今西錦司の「すみわけ」発見と言語化 [斎藤清明]
   一 「すみわけ」が辞書項目に
   二 今西錦司と『生物の世界』
   三 『生物の世界』と「すみわけ」
   四 「棲みわけ原理」として
   五 「すみわけ」の発見
   六 発見から学術論文にするまで
   七 「発見」の言語化
   八 学界の外で広がる「すみわけ」
   九 「すみわけ」から自然学へ

第 Ⅳ 部 ことば直しと未来—対話をひろげるたのしみ

第10章 パーソナルゲノム時代の人間を語る言葉 [加藤和人]
   一 ライフサイエンス研究の今
   二 iPS細胞の登場が迫る言葉の変革
   三 多くの人々のゲノムが解読される時代に
   四 パーソナルゲノム解読—未知の世界へ
   五 ライフサイエンスの知見をめぐる対話を
     
座談会 現代生命科学と言葉—「パーソナルゲノム時代の人間を語る言葉」をめぐって
加藤和人・木村大治・斎藤清明  
田辺明生・松田文彦・横山俊夫
   「老い」の多様化がすすむ気配
   ゲノム解読で、人間についての認識がどう変わるか
   自然観や人間観の変化を、まずは現在進行形でとらえつづける
   「すべてが分かる」という誤解はなぜ生じるのか
   「科学の言葉」を選ぶ—安易な比喩にたよらない努力
   相互作用のシステムとして自然をとらえる科学を
   ゲノム科学と人間集団の語られかたの今後
   科学の政治性、あるいは科学と人との距離感
   決定論的な知識は活かしつつ、その先になお自由を楽しむ精神を
   自然と人間を分断してとらえない言語が求められる
   新しい「文明」の涵養のために
   座談会記録編集拾遺

あとがきにかえて—「ことばの力」雑考(菊地 暁)
共同研究の歩み、そして謝辞(横山俊夫)
編著者、座談会出席者紹介
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