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森と海をむすぶ川

沿岸域再生のために

京都大学フィールド科学教育研究センター 編/向井 宏 監修

A5並製・330頁

ISBN: 9784876985753

発行年月: 2012/06

  • 本体: 2,800円(税込 3,080円
  • 在庫あり

関連書:
『改訂増補 森里海連環学:森から海までの統合的管理を目指して』

 
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内容

森と海は,川をとおしてどのようにつながっているか。流域管理のあり方が沿岸域へ与える影響や,ダムをはじめとする大規模構造物のインパクトなど,具体例に基づいて紹介し,森里海の連環を意識しながら河川の上流域と下流域の関係を現在改善するための取り組みや、統合的管理のあり方を考えるための基礎的な知識を提供する.

プロフィール

浅岡  聡(あさおか さとし)[第3章1節]
広島大学環境安全センター研究員
専門は,環境分析化学,水圏環境化学,環境修復学など.

Ileva, Nina Yordanova(いれば にーな よるだのば)[第1章1節]
北海道大学大学院環境科学院・大学院生(現所属:(株)エコニクス・研究員)
専門は,環境科学.河川の水質化学(栄養塩類・溶存遊離アミノ酸など)を環境科学的に研究している.

上田  宏(うえだ ひろし)[第1章1節]
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・教授
専門は,魚類生理学.サケの嗅覚による母川記銘・回帰機構を,動物行動学的・生殖内分泌学的・神経生理学的に研究している.
主な著書に,『水産海洋ハンドブック』(共著,生物研究者,2004年),『魚類のニューロサイエンス』(分担執筆,恒星社厚生閣,2002年)など.

上野 正博(うえの まさひろ)[第2章2節]
京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所・助教
専門は,水産海洋学,日本海学,森里海連環学など.
主な著書に,『河川水質環境指標生物図鑑』(監修,人を自然に近づける川いい会,2012年),『自然保護事典㈪海』(共著,緑風出版,1995年)など.

久保田 信(くぼた しん)[第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所・准教授
専門の「腔腸動物の系統分類学」に加え,各種生物の「博物学的研究」,並びに「生命の星」=地球の平和ソングを鋭意制作中.
主な著書は,『神秘のベニクラゲと海洋生物の歌』(単著,紀伊民報,2005年),『宝の海から—白浜で出会った生物たち』(単著,紀伊民報,2006年),『地球の住民たち—動物篇』(単著,紀伊民報,2007年),『動物系統分類学 追補版』(共著,中山書店,2000年),『無脊椎動物の分類と系統』(単著,裳華房,2000年)など.

佐藤 真行(さとう まさゆき)[第4章2節,第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・特定准教授.
専門は,環境経済学,環境政策評価,持続可能な発展の経済分析など.
主な著書に,『Achieving Global Sustainability: Policy Recommendations』(共著,United Nations University Press,2011年),『環境リスク管理と予防原則』(共著,有斐閣,2010年),『グリーン産業革命』(共著,日経BP,2010年)など.

柴田 昌三(しばた しょうぞう)[巻頭言,第2章1節,第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・教授
専門は,里山資源保全学,竹類生態学,森林育成学,緑化工学,景観生態学.里山の再生に関する研究や,竹類の開花生理に関する研究を行うほか,新たな学問領域である森里海連環学について実践的研究を行い,森から海に至るさまざまな連環の科学的な検証を試みている.
主な著書に,『竹・笹のある庭』(単著,創森社,2006年),『ネコとタケ』(共著,岩波書店,2001年),『地球環境学のすすめ』(共著,丸善,2004年),『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(共著,京都大学学術出版会,2007年),『最新 環境緑化工学』(共著,朝倉書店,2007年),『環境デザイン学』(共著,朝倉書店,2007年)など.

柴田 英昭(しばた ひであき)[第1章1節]
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・教授
専門は,生物地球化学・土壌学・生態系生態学,環境変動下における陸域生態系の環境保全機能に関する研究に取り組んでいる.
主な著書に,『北海道の森林』(編著,北海道新聞社,2011年),『地球環境と生態系—陸域生態系の科学』(分担執筆,共立出版,2006年)など.

柴沼成一郎(しばぬま せいいちろう)[第1章1節]
北海道大学大学院環境科学院 博士後期課程
専門は,沿岸海洋環境学.主要な研究テーマは,汽水域の生物生産におよぼす環境諸因子の抽出および解析.

嶋永 元裕(しまなが もとひろ)[第4章2節]
熊本大学沿岸域環境科学教育研究センター・准教授
専門は,海洋生態学.干潟から海溝,熱水噴出域まで,さまざまな環境に生息する小型底生生物(メイオベントス)の群集構造解析を行っている.
主な著書に,『カイアシ類学入門』(共著,東海大学出版会,2005年).

白岩 孝行(しらいわ たかゆき)[第1章3節]
北海道大学 低温科学研究所・准教授
“Glacier to Ocean”をモットーに,陸域の水・物質循環研究に取り組んでいる.アムール川流域の問題のみならず,北海道の流域共生研究にも進出中.
主な著書に,『魚附林の地球環境学』(単著,昭和堂,2011年),『The Dilemma of Boundaries』(共編著,Springer,2012年).

白山 義久(しらやま よしひさ)[第4章2節,第6章]
海洋研究開発機構(JAMSTEC)・理事
専門は海洋生物学.特に小型底生生物(メイオベントス)の生態学,線形・動吻・胴甲動物の系統分類学,深海生物の保全生物学などの研究を主に進めてきた.近年は,海洋酸性化の生物影響などの研究も行っている.CoMLプロジェクトでは,科学推進委員会の委員を務めた.
主な著書に,『無脊椎動物の多様性と系統』(共編著,裳華房,2000年),『水の生物』(共著,小学館,2005年)など.

田中  克(たなか まさる)[第3章2節,第6章]
京都大学名誉教授,(財)国際高等研究所・チーフリサーチフェロー
有明海や日本海の沿岸性魚類の初期生態研究を通じて陸域と海域の境界域の重要性に気付き,森里海連環学にたどり着く.NPO法人森は海の恋人理事として,気仙沼舞根湾において,東日本大震災の海への影響に関する調査研究を進める.
主な著書に,『魚類学下』(共著),『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(共著,京都大学学術出版会,2007年),『稚魚学—多様な生理生態を探る』(共編,京都大学学術出版会,2009年),『稚魚—生残と変態の生理生態学』(共著,京都大学学術出版会),『水産の21世紀—海から拓く食料自給』(共編,京都大学学術出版会,2010年)など.

徳地 直子(とくち なおこ)[第2章4節,第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・准教授
専門は,森林生態系ならびに森林−河川生態系における物質循環についての研究.
主な著書に,『森のバランス』(共著,東海大学出版会,2012年)など.

長尾 誠也(ながお せいや)[第1章1節]
金沢大学環日本海域環境研究センター・教授
専門は,地球化学・環境放射化学,河川流域と沿岸域を流域圏と捉えた物質動態研究・地下環境における放射性核種の動態研究.
主な著書に,『腐植物質分析ハンドブック』(共編著,三恵社,2007年),『溶存有機物の動態と機能』(分担執筆,博友社,2011年)など.

中島  皇(なかしま ただし)[第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・講師
専門は,砂防学を基とする森林保全学.
主な著書に,『森林フィールドサイエンス』『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(共著,京都大学学術出版会,2007年)『昆虫科学が拓く未来』(共著,京都大学学術出版会,2009年)など.

中村 洋平(なかむら ようへい)[第1章1節]
北海道大学大学院環境科学院・博士前期課程2年(現在,NEC)
専門は,地球化学.

長谷川尚史(はせがわ ひさし)[第2章1節]
京都大学フィールド科学教育研究センター・准教授
専門は,森林利用学.精密林業を中心とした持続的森林管理法について研究を行っている.
主な著書に,『豊かな森へ—日本語版』(共編・訳,昭和堂,1997年),『人工林の適地とはなにか—生態情報と技術論の連携』(共編著,森林空間利用研究会,2004年)など.

深見 裕伸(ふかみ ひろのぶ)[第4章2節]
宮崎大学農学部海洋生物環境学科・准教授
専門は,造礁性イシサンゴ類の分類および系統進化についての研究.また,造礁性イシサンゴ類の産卵生殖,生態についても同様に研究を行なっている.最近は,地球温暖化と南方系イシサンゴ類の北上や宮崎県におけるサンゴ群集の基礎調査,新燃岳の降灰とイシサンゴ類への影響なども研究している.

福島慶太郎(ふくしま けいたろう)[第2章4節]
京都大学フィールド科学教育研究センター・特定研究員
専門は,森林生態系生態学.
主な著書に,『森のバランス—植物と土壌の相互作用』(共著,東海大学出版会,2012年)がある.

向井  宏(むかいひろし)[監修,はじめに,第1章2節,第5章,第6章,おわりに]
京都大学フィールド科学教育研究センター・特任教授,北海道大学名誉教授
専門は海洋生物生態学.日本および太平洋各地で,浅海のアマモ場などの群集生態を中心に研究を行い,ジュゴンの生態研究も続けている.2000年から陸上生態系と海洋生態系の相互作用の研究を進めてきた.
主な共著書に,『海洋ベントスの生態学』(共著,東海大学出版会,2003年),『サンゴ礁—生物の作った生物の楽園』(共著,平凡社,1995年),『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(共著,京都大学学術出版会,2007年)など.

門谷  茂(もんたに しげる)[第1章1節]
北海道大学大学院水産科学研究院環境科学院・教授
専門は,海洋生物生産環境学.「海底堆積物を対象とした有機地球化学的研究」,「底生微細藻類から始まる食物網解析とその生態学的評価」などに取り組んでいる.
主な著書に,『ベントス,水環境ハンドブック』(分担執筆,朝倉書店,2006年),『地球温暖化と日本 第3次報告—自然・人への影響予測』(分担執筆,古今書院,2003年)など.

山下  洋(やました よう)[第2章2節,第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・教授
専門は,沿岸資源生態学,森里海連環学
主な著書に,『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(監修,京都大学学術出版会,2007年),『森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産』(共編,恒星社厚生閣,2008年),『浅海域の生態系サービス—海の恵みと持続的利用』(共編,恒星社厚生閣,2011年)など.

山本 民次(やまもと たみじ)[第3章1節,第6章]
広島大学大学院生物圏科学研究科・教授
専門は,水圏環境学,水圏生態学など.
主な著書に,『閉鎖性海域の環境再生』(共編著,恒星社厚生閣,2007年),『川と海—流域圏の科学』(共編著,恒星社厚生閣,2008年),『「里海』としての沿岸域の新たな利用』(編著,恒星社厚生閣,2010年)など.

山本 裕規(やまもと ひろのり)[第3章1節]
復建調査設計(株)環境技術部水圏環境課・課長補佐
専門は,数値モデルを用いた閉鎖性海域における物質循環解析など.

吉岡 崇仁(よしおか たかひと)[第2章2節,第6章]
京都大学フィールド科学教育研究センター・教授
専門は,生物地球化学,森里海連環学に基づき,森林集水域や流域スケールでの物質循環,さらには環境と人間との関係について研究.
主な著書に,『生物地球化学』(共編著,培風館,2006年),『環境意識調査法—環境シナリオと人々の選好』(編著,勁草書房,2009年),『川と湖を見る・知る・探る—陸水学入門』(共著,地人書館,2011年)など.

目次

口絵
巻頭言[柴田昌三]
まえがき[向井 宏]

第1章 自然河川流域と沿岸生態系—農業と沿岸—
1 天塩川—日本最北の大河流域—
(1) はじめに
(2) 天塩川流域の土地利用変化と栄養塩動態
(3) 溶存腐植物質の特性と流域内変化
(4) 下流感潮域におけるシジミを巡る物質動態
(5) おわりに
[柴田英昭,上田 宏,イレバ・ニーナ,長尾誠也,中村洋平,門谷 茂,柴沼成一郎]
2 別寒辺牛川における森と海の関わり
(1) 厚岸水系(別寒辺牛川・厚岸湖・厚岸湾)の概観
(2) 人間の利用とその影響
(3) 森と海の連環
(4) 海の利用と問題
(5) 水質改善の取り組み 農業における取り組みも
(6) 上流下流問題
(7) 砂防ダム問題
[向井 宏]
3 アムール川とオホーツク海・親潮
(1) 豊穣の海 オホーツク海
(2) オホーツク海が豊かな理由
(3) 鉄が豊かなオホーツク海・親潮
(4) 巨大魚附林としてのアムール川流域
(5) 劣化する巨大魚附林
(6) アムール川流域とオホーツク海・親潮の環境保全にむけて
[白岩孝行]

第2章 森林の管理と沿岸域管理—林業と沿岸—
1 仁淀川
(1) はじめに
(2) 仁淀川流域に設定された調査地
(3) 調査地および下流に至る地域における仁淀川の状況
(4) おわりに
[柴田昌三,長谷川尚史]
2 由良川
(1) 由良川の構造と大水害
(2) 由良川河口域の物理環境
(3) 由良川の流域利用と水質—遡及的アプローチ
(4) 河川有機物の起源—探検的アプローチ
(5) 森は海の恋人—川から流れ出す有機物は海の生物にどのように利用されているか
[上野正博,山下 洋]
3 琵琶湖集水域
(1) 琵琶湖
(2) 森林からの硝酸イオン(NO3−)の流出
(3) 渓流水質から見た森林生態系(土壌)における窒素と炭素の循環
(4) 野洲川の水質と土地利用・土地被覆の関係
(5) 琵琶湖に流入する炭素と窒素の量
(6) 琵琶湖の環境問題
(7) 流域管理への住民参加
[吉岡崇仁]
4 人工林化と河川水質
(1) 我が国における人工林の拡大
(2) 森林の伐採が渓流水質に及ぼす影響
(3) 渓流水質を規定する森林の成長
(4) 水質に配慮した森林施業
(5) 人工林化が渓流水の水質に及ぼす影響
(6) 渓流水質の指標としての人工林率
(7) これからの人工林化
[徳地直子,福島慶太郎]

第3章 沿岸管理の現実と理想—水産業と沿岸—
1 太田川—広島湾流域圏—
(1) 太田川の環境—現状と修復事業
(2) 広島湾の環境の現状と再生計画
(3) 江田島湾の環境再生
(4) 太田川—広島湾をトータル・システムとして捉える
[山本民次,山本裕規,浅岡 聡]
2 森里海連環学の原点
 —有明海特産稚魚の生態に学ぶ—
(1) はじめに
(2) 稚魚学の教え
(3) 有明海 この不思議の海の魅力と悲劇
(4) 特産種スズキの初期生活史
(5) 特産カイアシ類を育む高濁度水塊
(6) 有明海特産魚成立の不思議
(7) 豊穣の海の悲劇
(8) おわりに
[田中 克]

第4章 大型構造物による連環の分断と沿岸域
1 河川の公共事業と政策評価—豊川を事例に—
(1) はじめに
(2) 費用便益分析と公共事業・政策評価
(3) 環境の経済評価と市民参加
(4) おわりに—公共事業と環境・地域の調和
[佐藤真行]
2 古座川・七川ダム・串本湾から考える森川里海の連環
(1) はじめに
(2) 古座川の概要
(3) ダムの放水と河川および河口域環境との関係
(4) 海洋生物の時空間的変動と,河川の変動特にダムの放水との関係
(5) まとめ
[白山義久,深見裕伸,嶋永元裕]

第5章 環境保全のための流域管理と海洋保護区
1 流域管理の必要性
2 日本における土地利用の変遷
3 統合管理としての流域管理
4 流域ガバナンス
5 沿岸域管理と海洋保護区(Marine Protected Area)
6 国際的な動向
7 国内の動向
8 国内の「海洋保護区」とその現状
9 どのような保護区が必要か
10 おわりに
[向井 宏]

第6章 森・里・海の統合的な沿岸管理をめざして—討論—
1 流域・沿岸域管理とはなにか?
2 多様性のための流域・沿岸域管理
3 どのように管理するか?
4 森里海連環学の役割
5 人工林と天然林
6 上流と下流のコンフリクト
7 今,何が問題か?
8 管理の方法としての海洋保護区
9 森里海連環学における「里」の意味について
10 生命(いのち)の里
[白山義久,山下 洋,吉岡崇仁,柴田昌三,向井 宏,佐藤真行,中島 皇,久保田信,
山本民次,上野正博,徳地直子,田中 克]


用語解説
引用文献
おわりに[向井 宏]
索引
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