制度
人類社会の進化

河合 香吏 編

菊上製・410頁・税込 4,536円
ISBN: 9784876982820
発行年月: 2013/04
在庫あり

書評

『朝日新聞』2013年6月17日朝刊「読書」、評者:萱野稔人氏
『霊長類研究』Vo.32 No.1 (2016.6)、40-43頁、評者:市川光雄氏
『アフリカ研究』No.83(2013.12)、評者:関谷雄一氏

内容

複雑な連鎖としての現代から議論しようとすると,【制度】の本質には迫れない。サルとヒトの共通祖先にまで遡って捉えてこそ,それは見えてくるのだ。言語を媒介しない「自然制度」にまで一旦遡行し,そこから,狩猟採集社会,より近代的な社会へと 分析することで,制度の起源に迫り,更にはヒトの社会関係の本質を捉えようとする秀作。

目次

序章 「集団」から「制度」へ —人類社会の進化史的基盤を求めて[河合香吏]
 1 「制度」を「人類社会の進化」の文脈で語ること
 2 人類進化学としての霊長類学はなぜ「制度」をあつかってこなかったのか2
 3 制度研究会の経緯
 4 本書の構成
 5 そして「他者」へ

第1部 制度の生成機序

第1章 制度が成立するとき[曽我 亨]
Keyword:対面的な他者,様々な「第三者」,ダンバー数,行為平面
 1 対面的行動と制度
 2 具体的な第三者による対面的行動の統制
 3 ヒトの制度的現象
 4 制度が成立する場所
第2章 死という制度 —その初発をめぐって[内堀基光]
Keyword:死ぬこと,チンパンジーの死,人間の死,死者,共同性
 1 死はどこからどこまでが制度か
 2 制度としての「死」の初発
 3 制度としての「死」の機能
 4 「死者」の反転
 5 制度以前と制度の円環的一体性へ —まとめとして
第3章 制度と儀礼化あるいは儀礼行動[田中雅一]
Keyword:日常実践,意図,正当化,ディスプレイ,強迫性障害
 1 日常実践と儀礼
 2 制度とは何か?
 3 儀礼論の系譜
 4 儀礼化をめぐって
 5 動物のディスプレイと個人儀礼について
 6 実践の束としての制度—おわりに
第4章 子ども・遊び・ルール —制度の表出する場を考える[早木仁成]
Keyword:ごっこ遊び,自然制度,他者理解,形式性
 1 遊びの本質としてのルール
 2 ルールのある遊びの源
 3 闘争遊びにみられる自己抑制と形式性
 4 ごっこ遊びのルール性
 5 遊びとルール,そして制度
第5章 教えが制度となる日 —類人猿から人への進化史的展望[寺嶋秀明]
Keyword:学習,教えない教育,メタ認知,心の理論,ステイタス機能
 1 学ぶことと教えること
 2 学びの原点
 3 なぜ人はもっと教えないのか
 4 学習と教師の役割
 5 心の理論・メタ認知・メタ学習
 6 制度と教育

第2部 制度表出の具体相

第6章 アルファオスとは「誰のこと」か? —チンパンジー社会における「順位」の制度的側面[西江仁徳]
Keyword:順位,記号(化),儀礼(化),慣習convention,自生的秩序spontaneous order
 1 チンパンジー社会における「順位」と「アルファオス」
 2 アルファオス失踪の顛末
 3 「過剰な」毛づくろいとパントグラント —「形式化した」=「儀礼的」相互行為
 4 「自生的秩序spontaneous order」としての「順位」
 5 「制度」の進化論へ向けて
第7章 共存の様態と行為選択の二重の環 —チンパンジーの集団と制度的なるものの生成[伊藤詞子]
Keyword:「みんな」/「私たち」,問題,行為選択,共存の様態,social集団,「そうするもの」
 1 共存の様態—離合集散システム
 2 みんながそうすること
 3 チンパンジーが出会うとき
 4 ごちゃまぜの世界
第8章 見えない他者の声に耳を澄ませるとき—チンパンジーのプロセス志向的な慣習と制度の可能態 [花村俊吉]
Keyword:離合集散,長距離音声,行為接続のパターン,慣習,場,プロセス志向
 1 言語のない世界における慣習
 2 チンパンジーの長距離音声・パントフートと離合集散
 3 「呼びかけ−応答」の意味を帯びた鳴き交わしのパターンと非対面下の出会い
 4 相互行為を試みる際の行為接続のやり方
 5 場の構成に続く行為接続のやり方の多様性
 6 プロセス志向的な慣習と場の生成変化
第9章 野生の平和構築 —スールーにおける紛争と平和の事例から制度を考える [床呂郁哉]
Keyword 制度Ⅰ,制度Ⅱ,紛争,平和,偶有性(contingency),サマ人
 1 近代主義的理解に束縛されない制度論へ
 2 事例分析—スールー海域世界における紛争とその処理
 3 象徴的回路による紛争処理
 4 出来事の民族誌—駆け落ち,紛争,病と死
 5 偶有的プロセスの集積としての制度
第10章 制度としてのレイディング —ドドスにおけるその形式化と価値の生成[河合香吏]
Keyword:東アフリカ牧畜民,レイディング,牧畜価値共有圏,情動と昂揚感,価値
 1 奪い,奪われる日常の中の制度
 2 ドドスにおけるレイディング
 3 「殺人」をめぐるメンタリティとレイディングの動機
 4 レイディングの肯定と牧畜価値共有圏の可能性
 5 価値の体現としてのレイディングとその進化史的意味の可能性—むすびにかえて

第3部 制度進化の理論

第11章 制度以前と以後を繋ぐものと隔てるもの[北村光二]
Keyword:問題への共同対処,相互行為システム,循環的な決定,禁止の規則,儀礼の規則
 1 対象の「意味」の識別と行為への「意味」の付与
 2 「もの」との関係づけと人間相互の関係づけにおける循環的な決定
 3 制度への道 —「禁止の規則」へと向かうルート
 4 制度への道 —「儀礼の規則」へと向かうルート
 5 「規則に従うこと」の成立と言語の獲得
第12章 役割を生きる制度—生態的ニッチと動物の社会[足立 薫]
Keyword:ニッチ,混群,役割,種間関係,場,コミュニケーション
 1 ニッチと行動選択の様相
 2 混群における役割
 3 ニッチの理論
 4 部分と全体の再帰的な決定を可能にする「場」
 5 ニッチから制度を考える
第13章 数学の証明と制度の遂行 —ケプラー方程式から出発する進化の考察[春日直樹]
Keyword:アナロジー,パターン,志向,遂行指令,正統化
 1 ケプラー方程式の証明を展開する
 2 証明を成り立たせる諸要素を考える
 3 方程式の証明と制度の遂行をつなげる
第14章 制度の基本構成要素 —三角形,そして四面体をモデルとする『制度』の理解[船曳建夫]
Keyword:三者間関係,四面体,象徴,意味空間,調整
 1 三者間関係
 2 第三者とならない第三項
 3 四面体モデル

第4部 制度論のひろがり

第15章 感情のオントロギー —イヌイトの拡大家族集団にみる〈自然制度〉の進化史的基盤 [大村敬一]
Keyword:〈自然制度〉,感情,言語,他者との共在,イヌイト,拡大家族集団
 1 出発点としての「言語なしの制度」論
 2 イヌイトの拡大家族集団の規則 —生業システムが産出する〈自然制度〉
 3 〈自然制度〉の条件 —自己意識,他者への自己投影,他者との共在の欲求
 4 原初的な〈自然制度〉 —他者との共在をめぐる感情と欲求の制度化
 5 感情のオントロギー —〈自然制度〉の進化史的基盤

第16章 「感情」という制度 —「内面にある感情」と「制度化された妬み」をめぐって [杉山祐子]
Keyword:感情,共にいること,内面にある感情,「いまここ」からの離脱,妬み
 1 共同認知の土台としての感情
 2 ベンバの村の共在空間
 3 表明される「怒り」と取り出される「怒りのできごと」
 4 「隠された感情」としての「妬み」
 5 「内面にある感情」と社会関係の操作可能性
 6 「いま,ここ」からの二様の離脱
第17章 老女は自殺したのか —制度の根拠をめぐる一考察[西井凉子]
Keyword:自殺,倫理,社会性,儀礼,否定性
 1 死と制度をめぐる別のアプローチ
 2 老女の死の状況
 3 老女は自殺したのか
 4 老女の死をめぐる村人の関心
 5 自殺と制度
 6 「時が至れば死ぬ」 —むすびにかえて
第18章 制度の進化的基盤 —規則・逸脱・アイデンティティ[黒田末寿]
Keyword:言語なしの制度の定義,規則の構造,逸脱,二次規則,規則の潜勢化,私たち型制度,間主観型制度
 1 拘束と逸脱/構造と非構造
 2 規則・制度の定義
 3 規則・制度が現れる構造

あとがき  [河合香吏]

索 引

プロフィール

足立 薫(あだち かおる)
立命館大学非常勤講師
1968年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『人間性の起源と進化』(共著,昭和堂,2003年),『集団—人類社会の進化』(共著,京都大学学術出版会,2009年)など.

伊藤詞子(いとう のりこ)
京都大学野生動物研究センター研究員
1971年生まれ.京都大学大学院理学研究課博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『人間性の起源と進化』(共著,昭和堂,2003年),『集団—人類社会の進化』(共著,京都大学学術出版会,2009年),『インタラクションの境界と接続—サル・人・会話研究から』(共著,昭和堂,2010年)など.

内堀基光(うちぼり もとみつ)
放送大学教授
1948年生まれ.オーストラリア国立大学太平洋地域研究所博士研究過程修了,Ph. D.
主な著書に,『森の食べ方』(東京大学出版会,1996年),シリーズ『資源人類学』(全9巻,総合編者,弘文堂,2007年),『「ひと学」への招待—人類の文化と自然』(放送大学教育振興会,2012年)など.

大村敬一(おおむら けいいち)
大阪大学大学院言語文化研究科准教授
1966年生まれ.早稲田大学大学院文学研究科後期課程満期修了,博士(文学).
主な著書に,Self and Other Images of Hunter-Gatherers(共編著,National Museum of Ethnology,2002年),『文化人類学研究—先住民の世界』(共編著,放送大学教育振興会,2005年),『極北と森林の記憶—イヌイットと北西海岸インディアンのアート』(共編著,昭和堂,2009年),『グローバリゼーションの人類学—争いと和解の諸相』(共編著,放送大学教育振 興会,2011年)など.

春日直樹(かすが なおき)
一橋大学大学院社会学研究科教授
1953年生まれ.大阪大学大学院人間科学研究科博士課程退学.
主な著書に,『太平洋のラスプーチン—ヴィチ・カンバニ運動の歴史人類学』(世界思想社,2001年),『貨幣と資源(資源人類学第5巻)』(編著,弘文堂,2007年),『現実批判の人類学—新世代のエスノグラフィへ』(編著,世界思想社,2011年)など.

河合香吏(かわい かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『野の医療—牧畜民チャムスの身体世界』(東京大学出版会,1998年),『集団—人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2009年),『ものの人類学』(共編著,京都大学学術出版会,2011年)など.

北村光二(きたむらこうじ)
岡山大学大学院社会文化科学研究科教授
1949年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『人間性の起源と進化』(共編著,昭和堂,2003年),『生きる場の人類学—土地と自然の認識・実践・表象過程』(共著,京都大学学術出版会,2007年),『集団—人類社会の進化』(共著,京都大学学術出版会,2009年)など.

黒田末寿(くろだ すえひさ)
滋賀県立大学人間文化学部教授
1947年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程満期退学,理学博士.
主な著書に,『人類進化再考—社会生成の考古学』(以文社,1999年),『自然学の未来—自然との共感』(弘文堂,2002年),『アフリカを歩く—フィールドノートの余白に』(共編著,以文社,2002年)など.

杉山祐子(すぎやま ゆうこ)
弘前大学人文学部教授
1958年生まれ.筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得退学,博士(京都大学,地域研究).
主な著書に,『ジェンダー人類学を読む』(共著,世界思想社,2007年),『集団—人類社会の進化』(共著,京都大学学術出版会,2009年),『ものづくりに生きる人々—旧城下町・弘前の職人』(共編著,弘前大学出版会,2011年),『アフリカ地域研究と農村開発』(共著,京都大学学術出版会,2011年)など.

曽我 亨(そが とおる)
弘前大学人文学部教授
1964年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,理学博士.
主な著書に,『グローバリゼーションと〈生きる世界〉—生業からみた人類学的現在』(分担執筆,昭和堂,2011年),『シベリアとアフリカの遊牧民—極北と砂漠で家畜とともに暮らす』(共著,東北大学出版会,2011年),『ケニアを知るための55章』(分担執筆,明石書店,2012年)など.

田中雅一(たなか まさかず)
京都大学人文科学研究所教授
1955年生まれ.ロンドン大学経済政治学院人類学博士課程,Ph. D. (Anthropology).
主な著書に,『供儀世界の変貌—南アジアの歴史人類学』(法藏館,2002年),『フェティシズム研究』(全3巻既刊1巻,編著,京都大学学術出版会,2009年〜),『コンタクト・ゾーンの人文学』(全4巻,共編著,晃陽書房,2011〜13年)など.

寺嶋秀明(てらしま ひであき)
神戸学院大学人文学部教授
1951年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程終了,理学博士.
主な著書に,『共生の森(シリーズ 熱帯林の世界6)』(東京大学出版会,1997年),『平等と不平等をめぐる人類学的研究』(編著,ナカニシヤ出版,2004年),『平等論—霊長類と人における社会と平等性の進化』(ナカニシヤ出版,2011年)など.

床呂郁哉(ところ いくや)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
1965年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退,学術博士.
主な著書・論文に『越境—スールー海域世界から』(岩波書店,1999年).「プライマリー・グローバリゼーション—もうひとつのグローバリゼーションに関する人類学的試論」(『文化人類学』75巻1号,2010年),『ものの人類学』(共編著,京都大学学術出版会,2011年),『東南アジアのイスラーム』(共編著,東京外国語大学出版会,2012年),『グローバリゼーションズ—人類学,歴史学,地域研究の視点から』(共編,弘文堂,2012年)など.

西江仁徳 (にしえ ひとなる)
京都大学野生動物研究センター教務補佐員
1976年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程認定退学,博士(理学).
主な著書・論文に,「チンパンジーの「文化」と社会性—『知識の伝達メタファー』再考」『霊長類研究』24(2),2008年),『インタラクションの境界と接続—サル・人・会話研究から』(共著,昭和堂,2010年),“Natural history of Camponotus ant-fishing by the M group chimpanzees at the Mahale Mountains National Park, Tanzania”(Primates 52,2011年)など.

西井凉子(にしい りょうこ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
1959年生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学,総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程中途退学,博士(文学).
主な著書に,『死をめぐる実践宗教—南タイのムスリム・仏教徒関係へのパースペクティヴ』(世界思想社,2001年),『社会空間の人類学—マテリアリティ・主体・モダニティ』(共編著,世界思想社,2006年),『時間の人類学—情動・自然・社会空間』(編著,世界思想社,2011年)など.『情動のエスノグラフィ—南タイの村で感じる・つながる・生きる』(京都大学学術出版会,2013年)など.

花村俊吉(はなむら しゅんきち)
京都大学野生動物研究センター・日本学術振興会特別研究員PD
1980年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,修士(理学).
主な著書・論文に,『インタラクションの境界と接続—サル・人・会話研究から』(共著,昭和堂,2010年),「チンパンジーの長距離音声を介した行為接続のやり方と視界外に拡がる場の様態」(『霊長類研究』26,2010年),「行為の接続と場の様態との循環的プロセス」(『霊長類研究』26,2010年)など.

早木仁成(はやき ひとしげ)
神戸学院大学人文学部教授
1953年生まれ,京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『チンパンジーのなかのヒト』(裳華房,1990年),『生活技術の人類学』(共著,平凡社,1995年),『マハレのチンパンジー—<パンスロポロジー>の37年』(共著,京都大学学術出版会,2002年)など.

船曳建夫(ふなびき たけお)
東京大学名誉教授
1948年生まれ.ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程卒業,PH. D.(学術博士).
主な著書に,『国民文化が生れる時』(共編著,リブロポート,1994年),『「日本人論」再考』(講談社学術文庫,2010年),『Living Field』(東京大学総合研究博物館,2012年)など.