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連帯の医学

大髙 道也

A5上製・340頁

ISBN: 9784876982486

発行年月: 2013/12

  • 本体: 3,400円(税込 3,740円
  • 在庫あり

【推薦】 一般財団法人聖路加国際メディカルセンター理事長 日野原 重明

  京都大学医学部出身の大髙道也先生が、ご自分の半生を顧みて、A5判328ページにわたる『連帯の医学』を出版された。大髙道也先生は、少年時代の長期療養に至った急性腎炎の病気体験がもとになり、私と同じ京都大学医学部に入学されて医師の道に進まれた。
 最初は心臓外科を選択し、国立姫路病院等において外科学の方面から医学を探求し、医学について観察するうちに、島根大学医学部での研究教育生活に入られたが、その後、厚生労働省に移られて、行政の立場から保健、医療、福祉、介護、環境等を扱われた。退官してからは、我が国のがん研究の振興等を担われ、欧米の最高のメディカルセンターであるメイヨー・クリニックやMDアンダーソンがんセンター等を視察する中で将来の医療を把握する資料を得て、ここに12章にわたる本書で「連帯の医学」とは何かを解明されたのである。
 常に若い医学生たちのリーダーとして、「大津医学生会」を興され、それを育まれる情熱は衰えをみせない。これまでの数々の邂逅により生かされたその人生の軌跡は、読者の心の奥に深く響くものである。
 このような内容の著書は稀なものであり、読者は心を奪われて読み終わることを確信し、私はこの著書を推薦する次第である。

 
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内容

心臓外科医から予防医学を志して研究教育生活に入り,その後,厚生労働技官として行政に携わってきた医師による提言の書。ボーダレス時代の感染症・輸入食品対策や育児休業の法制化を始め第一線での幅広い経験をもとに,これからの保健・医療・福祉・介護・環境、そして医の心を語る。大学や世代を超えた学び舎「大津医学生会」の活動も紹介。

書評

『京都新聞』2014年3月15日付滋賀

プロフィール

大髙 道也(おおたか・みちや)
医師,医学博士,元 厚生労働技官,「大津医学生会」名誉会長

1942年 滋賀県生まれ.
1972年 京都大学医学部卒業.京大医学部附属病院で研修後,赤穂市民病院(外科),国立姫路病院(心臓外科)に赴任.
1975年 大阪府立成人病センター集検一部に勤務.循環器疾患予防の疫学研究と実践活動に携わるとともに,京大医学部病理学教室との脳卒中ラットを用いた実験病理学の共同研究をまとめる.
1978年 島根医科大学第二病理学教室に文部教官として着任.医学教育,基礎研究(予防病理学)および地域保健に取り組む.
1979年 厚生省(現 厚生労働省)に入省.結核成人病課課長補佐として結核予防対策とともに脳卒中・がん等の成人病(生活習慣病)の予防対策を推進.以後,医系技官として医療指導監査官,環境庁特殊疾病審査室長,人事院福祉課長,国立精神・神経センター運営部長,厚生省中国四国地方医務局長などを歴任.この間,厚生省成田空港検疫所長として国際保健および輸入食品の安全確保に取り組んだほか,茨城県保健予防課長(大子保健所長を兼務),青森県環境保健部長(県立青森高等看護学院長を兼務)として自治体行政も担った.厚生省公衆衛生審議会専門委員(伝染病予防部会,1992-1996年).
1999年 退官後,財団法人がん研究振興財団,財団法人ビル管理教育センター等において,医学研究,人材育成を含め,保健・医療・介護・福祉・環境衛生等の推進に尽力してきた.

長年,京都大学(公衆衛生学),島根医科大学(内科学),および弘前大学(衛生学)の講師を務めてきた.

学生時代の1967年,郷里の滋賀県大津市に「大津医学生会」(OMSA)を創設し,半世紀近く,医学教育と社会貢献に携わってきた.

多くの論文のほか,『減塩と食生活のハンドブック——高血圧・脳卒中・心臓病を防ぐために』(共編著,社会保険出版社,1981年),『がんとどう付き合うか——予防と診断・治療,社会復帰と緩和ケア』(共著,がん研究振興財団,2001年)などの著作がある.

目次

序 なぜ連帯の医学なのか
第1章 海外に医の心を求めて
 第1節 欧州の医療施設とがん研究
 第2節 メイヨー・クリニックの品格
 第3節 MDアンダーソンがんセンターの仲間たち
第2章 ともに生きる――原風景に導かれて
 第1節 患者と医師
 第2節 キャンパス内外に学ぶ人間学と社会学
第3章 チームワークと学際連携の力
 第1節 基礎医学と臨床医学
 第2節 予防と治療は相補う
第4章 予防医学の新たな展開を目指して
 第1節 原因を究明し解決を目指す道
 第2節 疫学調査――集団には特性がある
 第3節 実験病理学――ラットとの格闘
 第4節 大学と地域保健
第5章 大学から行政へ
 第1節 研究の成果を疾病予防対策に
 第2節 地域特性の把握と保健・医療・福祉の連携
 第3節 WHO国際セミナー
 第4節 北国青森における挑戦
第6章 子どもから高齢者まで――ライフ・サイクルとして一体的に捉える
 第1節 これからの医療・福祉・保健
 第2節 介護・福祉領域における医師の役割
 第3節 介護の要点――現場からの報告と提言
 第4節 育児休業法――少子化対策と子どもの健全な育成
第7章 ボーダレス時代の健康と医学――国際化への対応
 第1節 「食」の国際化と安全性の確保
 第2節 国際交流の進展と輸入感染症対策
 第3節 新興・再興感染症への取り組み
 第4節 これからの国際保健
第8章 やさしさ、明るさ、的確さ――看護職への期待
 第1節 看護教育に携わって
 第2節 地域保健と疾病予防――保健師・看護師の仕事を中心に
第9章 環境はいのちと健康の基盤
 第1節 自然とどう付き合うか――白神山地の場合
 第2節 十和田湖の環境保全――会議から憲章へ
 第3節 環境、健康そして未来
第10章 連帯の心と“かたち”
 第1節 目的を共有する
 第2節 新たな地域連携を目指して
 第3節 これからの行政への期待
第11章 明日の福祉社会の充実を目指して
 第1節 医療と人権――教育制度を考える
 第2節 大学は社会にどう応えるべきか
第12章 大津医学生会――大学や世代を超えて地域に集う“医学校”
 第1節 大津医学生会の半世紀の歩みとそのスピリット
 第2節 未就学障害児(者)の実態に関する二つの調査
 第3節 教育モデルとしての大津医学生会
 第4節 健やかで生きがいのある明日を求めて

あとがき
巻末資料
 1 医療・介護関係法令(医療法・医師法・保健師助産師看護師法・健康保険法・介護保険法の抜粋)
 2 世界保健機関(WHO)の健康の定義
 3 核戦争防止国際医師会議のアピール
 4 ヘルシンキ宣言
 5 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約
 6 ヒポクラテスの「誓い」
 7 洪庵の「扶氏医戒之略」
索引
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