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都市・森・人をつなぐ

森の植物園からの提言

植松 千代美 編

A5上製・370頁

ISBN: 9784876982882     正誤表(2017.4.25)PDF

発行年月: 2014/12

  • 本体: 4,200円(税込 4,620円
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推薦

*推 薦*
大阪市内から電車で30分の所に、日本の樹林型11種類が鬱蒼と茂る世界にも例を見ない森がある。大阪市立大学理学部附属植物園である。市民に開かれた植物園はどうあるべきか。それに答えるために「都市と森の共生をめざす研究会」が明らかにした成果が本書である。生物多様性やCO2吸収機能は、各樹林型によって異なることがわかった。
60年の歴史をもつ11樹林型は個性に基づいた生態系を構成し、四季の変化に応じた森の姿を演出する。森を知り、森に憩い、生の充実を求める市民にとって、これほど格好の場所はない。大学植物園という聖域の扉を開き、市民参加による新しい大学植物園のあり方を示す画期的な提唱は新鮮だ。
河合雅雄(兵庫県立人と自然の博物館名誉館長)

内容

都市に暮らす人々の生活は,酸素や食料の供給を農地や周辺の森に依存したアンバランスな生態系の上に成っている。都市と森の永続的な共生関係を築くためには,都市にとっての森や自然がなぜ,どのように大切なのかを今一度問い直さなければならない。都市近郊に作られた「森の植物園」をフィールドとして,動物・植物・大気の三つの視点から,都市と森の理想的な関係を提言する。

プロフィール

【編者】
植松 千代美(うえまつ ちよみ)  第1章,第5章5―1節,5―3節
大阪市立大学大学院理学研究科(理学部附属植物園)講師
【著者】
安宅 未央子(あたか みおこ)  第4章4―2節,4―3節
京都大学大学院農学研究科博士後期課程日本学術振興会特別研究員DC
伊東 明(いとう あきら)  第2章2―2節
大阪市立大学大学院理学研究科教授
伊藤 ふくお(いとう ふくお)  第3章3―3節
昆虫生態写真家,やまと自然と虫の会理事
大湾 喜久男(おおわん きくお)  第5章5―2節
交野市環境部参事・環境総務室長
岡崎 純子(おかざき じゅんこ)  第2章2―1節
大阪教育大学教育学部准教授
小池 直樹(こいけ なおき)  第3章3―2節
京都大学大学院理学研究科博士後期課程
小南 裕志(こみなみ ゆうじ)  第4章
独立行政法人森林総合研究所関西支所グループ長
佐々木 隆史(ささき りゅうし)  第4章4―2節,4―3節
京都大学大学院農学研究科博士前期課程修了
上村 真由子(じょうむら まゆこ)  第4章4―2節,4―3節
日本大学生物資源学部助教
平 研(たいら みがく)  第3章3―4節
交野野鳥の会顧問
谷垣 岳人(たにがき たけと)  第1章1―3節,第3章3―1節
龍谷大学政策学部講師
檀浦 正子(だんのうら まさこ)  第4章4―2節,4―3節
京都大学大学院農学研究科助教
西川 喜朗(にしかわ よしあき)  第3章3―2節
追手門学院大学名誉教授
松山 周平(まつやま しゅうへい)  第2章2―2節
大阪市立大学大学院理学研究科博士研究員
山下 純(やました じゅん)  第2章2―3節
岡山大学資源植物科学研究所助教
吉村 謙一(よしむら けんいち)  第4章4―2節,4―3節
独立行政法人森林総合研究所関西支所日本学術振興会特別研究員
和田 佳子(わだ よしこ)  第4章4―2節,4―3節
京都大学大学院農学研究科博士前期課程修了,現兵庫県職員

目次

口絵
まえがき

第1章 森の植物園への招待
 1―1 今なぜ「都市・森・人」か? [植松千代美]
   (1)増え続ける人口
   (2)都市の生態系
   (3)酸素の供給源としての森林
   (4)私たちの暮らす日本の現状
   (5)なぜ植物園からなのか
 1―2 都市近郊につくられた森の植物園 [植松千代美]
   (1)植物園の成り立ち
   (2)森の植物園と言われるゆえん
  column 1 私市植物園のシンボルツリー,メタセコイア [植松千代美]
  column 2 植物園を創ってきた方たちとの出会い [岡崎純子]
 1―3 植物園で生きものの営みを調べる [谷垣岳人・植松千代美]
   (1)植物と動物との相互作用
   (2)緑地の面積と生物多様性の関係
   (3)植物園の動物たち
   (4)生態系としての植物園の森にせまる
第2章 森の植物園の植物たち
 2―1 草本植物のレフュージアとしての植物園 [岡崎純子]
   (1)植物園の位置する生駒山系の植物相
   (2)植物園に野生する草本植物達
   (3)園内で見つかった大阪府の絶滅種アイナエ(マチン科)
   (4)植物園の保全と環境教育の重要性
 2―2 在来タンポポの保全と雑種の問題 [伊東 明・松山周平]
   (1)在来タンポポの減少と雑種タンポポの増加
   (2)植物園は在来タンポポ保全に役立っているか?
   (3)植物園に雑種タンポポはどれくらい生育しているか?
   (4)雑種タンポポは今でも野外でつくられているか?
   (5)植物園の雑種タンポポは植物園内でできたのか?
   (6)タンポポの保全にはたす植物園の役割と注意すべき点
 2―3 野生シダ植物の多様性と植物相の変化 [山下 純]
   (1)シダ植物とは?
   (2)調査の目的と背景
   (3)調査の内容
   (4)植物園に見られる様々な林や草地
   (5)植物園の野生シダ植物相
   (6)植物園における植物相と環境の変化
   (7)植物園の二次的自然が語りかけること
第3章 森の植物園の動物たち
 3―1 植物園を利用する動物たちのくらし [谷垣岳人]
   (1)植物園の昆虫たち
   (2)植物園で営巣するカラ類
   (3)植物園の哺乳類
   (4)おわりに
  column 3 植物園はクモのサンクチュアリ [植松千代美]
 3―2 市民参加で調べたクモ相の多様性 [西川喜朗・小池直樹]
   (1)クモとはどんな動物か
   (2)クモのからだ
   (3)クモの生活史
   (4)植物園での生物調査について
   (5)クモにとっての私市植物園
   (6)まとめ
  column 4 ジョロウグモの網のヒミツ [西川喜朗]
 3―3 キタキチョウの越冬環境としての植物園 [伊藤ふくお]
   (1)里山環境で暮らすチョウたちの越冬生態
   (2)成虫で越冬するキタキチョウ
   (3)植物園内のキタキチョウ
   (4)キタキチョウにとって快適な越冬環境とは?
 3―4 通年調査が明らかにする野鳥の動態 [平  研]
   (1)調査途上でのこと
   (2)全域での出現状況
   (3)4園地の比較
   (4)各エリアの出現状況
   (5)各エリアの環境と野鳥の動向
   (6)高木と野鳥
   (7)果実,種子と野鳥
   (8)渡り鳥の利用状況
   (9)園内での繁殖
   (10)植物園の野鳥相とは
   (11)猛禽類,その他
   (12)考察
  column 5 森の教室「巣箱を作って植物園の鳥を調べよう!」 [植松千代美]
第4章 炭素をめぐる人と森の関係
 4―1 森林のCO2固定機能 [小南裕志]
    (1)日本における人と森林の歴史
    (2)広葉樹二次林の機能
    (3)広葉樹二次林のCO2吸収
 4―2 森林のCO2吸収量を測定する
      [小南裕志・檀浦正子・吉村謙一・上村真由子・安宅未央子・佐々木隆史・和田佳子]
    (1)森林のCO2吸収量とは
    (2)微気象学的にNEPを測定する
    (3)炭素蓄積量からNEPを推定する
    (4)チャンバー法でNEPを測定する
    (5)世界における森林のCO2吸収量測定の現状と問題点
    (6)植物園における観測の意義―隣接した複数の森林での長期炭素蓄積量測定
  column 6 森の教室「はかってみよう!クスノキ」 [植松千代美]
 4―3 森の植物園におけるCO2のゆくえ
     [吉村謙一・檀浦正子・安宅未央子・和田佳子・上村真由子・佐々木隆史・小南裕志]
    (1)森の樹木の炭素蓄積速度
    (2)森の土壌の炭素蓄積速度
 4―4 観測結果が導く人と森のあり方 [小南裕志]
    (1)森林のCO2吸収,個体から群落へ―観測の概要
    (2)広葉樹林の管理によって得られるもの―自然林との比較
第5章 森の植物園からの提言
 5―1 森の植物園の2つの機能 [植松千代美]
    (1)植物相調査から明らかになった多様性保全機能
    (2)動物相調査から明らかになった多様性保全機能
    (3)森林の二酸化炭素固定機能について
 5―2 大都市近郊の里山を擁する環境のまち・交野から [大湾喜久男]
    (1)人にとっての森
    (2)里山のまち交野
    (3)市民ボランティアによる里山保全活動
    (4)市民活動が突き当たる壁
    (5)これからの森と人の関係
  column 7 ナラ枯れから考えるエネルギー自給率 [植松千代美]
 5―3 都市・森・人がつながる未来のために [植松千代美]

大阪市立大学理学部附属植物園のクモ目録
あとがき
索引
執筆者一覧
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