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原子力安全基盤科学 3

放射線防護と環境放射線管理

高橋 千太郎 総合編集/仲谷 麻希 構成

A5並製・260頁

ISBN: 9784814001095

発行年月: 2017/09

  • 本体: 2,500円(税込 2,750円
  • 在庫あり
 
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内容

放射線は人体に重大な影響を与えます。しかし放射線を全く受けたくないと思うなら,自然界に暮らすこと自体,出来ません。そもそも放射線は,どういうメカニズムで,何にどれほどの影響を与えるのか。この第3分冊では,放射線と生物の関係について,分子・細胞レベルでのメカニズムに遡って知ることで,なぜ原子力エネルギーは安全に管理されねばならないのか,その理由と方法を考えます。原子力発電はもちろん,全ての原子力利用を考えるために,放射線防護・放射線安全管理の基礎から現場の技まで,私たちに必須の知識を学びます。

プロフィール

髙橋 千太郎(たかはし せんたろう;編集責任者,第1,2,4,5章,コラム2執筆)
京都大学原子炉実験所放射線安全管理工学研究分野 教授 (兼)農学研究科地域環境科学専攻放射線管理学分野 教授
京都大学大学院農学研究科を修了後,放射線医学総合研究所でプルトニウムの内部被曝影響に関する研究に従事。以後,放射性物質や環境有害物質の健康影響と安全管理に係る研究を実施。平成17年より放射線医学総合研究所理事(研究担当), 平成20年より現職。

髙橋 知之(たかはし ともゆき;第3章執筆)
京都大学原子炉実験所放射線安全管理工学研究分野 准教授 (兼)農学研究科 地域環境科学専攻放射線管理学分野 准教授
京都大学大学院工学研究科を修了後,日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)に勤務。京都大学原子炉実験所助手,助教授を経て,平成20年より現職。
環境中における放射性物質の移行評価および線量評価に関する研究を継続するとともに,放射線安全管理業務や原子力防災関連業務に従事。

谷垣 実(たにがき みのる;第4,5章執筆)
京都大学原子炉実験所核ビーム物性学研究分野 助教 (兼)理学研究科物理学・宇宙物理学専攻物理学第二分野 助教
大阪大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学後,1996年東北大学 講師(研究機関研究員),1999年より現職。研究テーマは中性子過剰核の核構造と不安定核を利用した物性研究,加速器や物理計測機器制御。

稲葉 次郎(いなば じろう;コラム1執筆)
放射線医学総合研究所名誉研究員,公益財団法人放射線影響協会参与
1963年放医研入所,環境衛生研究部および内部被曝研究部に所属して放射線安全研究に従事,1999年研究総務官として退職。この間IAEA環境放射能安全担当, ICRP第2専門委員会委員を歴任。

久保田 善久(くぼた よしひさ;コラム3執筆)
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部 環境影響研究チーム チームリーダー
東京農工大学農学部獣医学科を卒業後,放射線医学総合研究所で放射線影響関連の研究に従事。東電福島第一原発事故後,福島の環境生物に及ぼす原発事故の影響に関する研究を実施。平成29年4月より福島再生支援本部の専門業務員。

山西 弘城(やまにし ひろくに;コラム4執筆)
近畿大学原子力研究所 教授 (兼)総合理工学研究科エレクトロニクス系工学専攻 教授
名古屋大学工学研究科博士課程後期課程を単位修得退学後,核融合科学研究所安全管理センターで環境放射線放射能測定や核融合プラズマ実験施設における遮蔽設計,放射線安全システムの構築に従事。以後,放射線モニタリングの高度化に係る研究を実施。平成23年より近畿大学原子力研究所准教授,平成25年より現職。

木梨 友子(きなし ゆうこ;コラム5執筆)
京都大学原子炉実験所放射線安全管理工学研究分野 准教授 (兼)農学研究科地域 環境科学専攻放射線管理学分野 准教授
京都大学医学部附属病院放射線科勤務後,アメリカ合衆国ハーバード大学で放射線誘発突然変異に関する研究に従事。平成5年より京都大学原子炉実験所にて硼素中性子捕捉療法に関する生物影響や放射線管理に係る研究を実施。

塚田 祥文(つかだ ひろふみ;コラム6執筆)
福島大学環境放射能研究所 副所長 教授
北海道大学水産学部卒業後,東北大学大学院農学研究科で学位取得。環境科学技術研究所で22年間主に陸域環境における放射性核種の移行動態研究に従事。以後, 環境における存在形態別放射性核種と安定元素を駆使し,環境中での放射性核種の挙動研究に従事。東電福島第一原発事故後,原子力安全委員会,厚労省,農水省, 青森県,茨城県,鹿児島県,福島県,浪江町等の委員を歴任,平成26年より現職。

田上 恵子(たがみ けいこ;コラム7執筆)
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部 環境移行パラメータ研究チーム チームリーダー
筑波大学第二学群農林学類を卒業後,放射線医学総合研究所で長半減期核種の陸上環境挙動に係る研究を行う。テクネチウム-99の水田中挙動に関する研究で京都大学農学部より博士号(論文)を授与。

青野 辰雄(あおの たつお;コラム8執筆)
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部 環境動態研究チーム チームリーダー
近畿大学大学院化学研究科博士課程を修了後,放射線医学総合研究所で海洋における放射性核種に関する研究に従事。海洋環境における放射性核種の動態や海洋放射生態学に関する研究を実施。平成28年4月より現職。

八島 浩(やしま ひろし;コラム9執筆)
京都大学原子炉実験所放射線安全管理工学研究分野 助教 (兼)農学研究科地域環 境科学専攻放射線管理学分野 助教
平成16年東北大学工学研究科を修了後,京都大学原子炉実験所助手,平成19年より現職。高エネルギー粒子入射による誘導放射能や2次放射線に関する研究に従事。

鳥居 建男(とりい たつお;コラム10執筆)
日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門 廃炉国際共同研究センター 遠隔技術ディビジョン長
1982年に旧動力炉・核燃料開発事業団に入社後,環境放射線,放射線計測の研究に従事。東電福島第一原発事故後,航空機モニタリング,遠隔放射線測定技術の開発を行う。博士(工学)

斎藤 公明(さいとう きみあき;コラム11執筆)
日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門 福島環境安全センター 嘱託
東京工業大学原子核工学科を終了後,日本原子力研究所に入所し,環境放射線の測定・解析,人体モデルを用いた被曝線量評価に関する研究を実施。東電福島第一原発事故後は,国による大規模環境調査のプロジェクトに従事。

藤井 俊行(ふじい としゆき;コラム12執筆)
大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻 教授
大阪大学大学院工学研究科を修了後,京都大学原子炉実験所助手,助教授,准教授を経て,平成28年より現職。液体中における核種・同位体の溶存状態と分離特性に関わる研究に従事。

佐藤 信浩(さとう のぶひろ;コラム12執筆)
京都大学原子炉実験所粒子線物性学研究分野 助教
京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻修了,1998年より現職。量子ビーム散乱による高分子材料や食品のナノ構造解析に関する研究に従事。

中村 秀仁(なかむら ひでひと;コラム13執筆)
京都大学原子炉実験所放射線安全管理工学研究分野 助教 (兼)農学研究科地域環 境科学専攻放射線管理学分野 助教
大阪大学大学院理学研究科にて平成18年に博士(理学)を取得し,(独)放射線医学総合研究所を経て,平成23年より現職。放射線計測,保健物理に関する研究を実施。

仲谷 麻希(なかたに まき;全体構成,編纂事務局)
京都大学原子炉実験所非常勤職員
高校在学中に1年間アメリカへ交換留学
ミューズ音響芸術学院卒業後,会議音響オペレーター,一般企業事務などを経て2012年から同実験所原子力安全基盤科学研究プロジェクト事務に従事。

目次

原子力の利用を考える基礎を知るために——刊行にあたって
はじめに

第1章 放射線と放射性同位元素の基礎知識 (高橋千太郎)
 1-1 放射線とは
 1-2 放射線の性質と物質との相互作用
 1-3 放射能・放射線量の単位
    1-3-1 崩壊数(ベクレル・Bq)
    1-3-2 放射線の物理量
    1-3-3 放射線の防護量
    1-3-4 放射線の実用量
    1-3-5 防護量と実用量の関係
 1-4 原子力産業に由来する重要放射性同位元素——人体や環境へ影響の観点から
    1-4-1 核燃料物質およびウラン採鉱に関わる核種
    1-4-2 核反応生成物と核分裂生成物
    1-4-3 放射化生成物
 コラム 1 内部被曝線量計算に用いる線量係数——BqからSvへ (稲葉次郎)

第2章 放射線の健康影響とリスク (高橋千太郎)
2-1 放射線影響,その始点から終点まで
    2-1-1 分子レベルの変化
    2-1-2 細胞レベルの影響
    2-1-3 個体レベルの障害
    2-1-4 個人や社会の損害(デトリメント)
 2-2 放射線の健康影響の種類と分類
    2-2-1 身体的影響と遺伝的影響
    2-2-2 早期影響と晩発影響
    2-2-3 確定的影響と確率的影響
 コラム 2 胎内被曝による重度精神発達遅滞の発症
── 広島・長崎のデータが語るもの (高橋千太郎)
 2-3 放射線の危険度
    2-3-1 確定的影響による放射線障害の発生
    2-3-2 確率的影響による障害とそのリスク
    2-3-3 放射線による発がんのリスクと直線しきい値なし(LNT)仮説
 2-4 内部被曝の線量評価とそのリスク
    2-4-1 線量評価の方法
    2-4-2 内部被曝の線量寄与に関係する要因
    2-4-3 原子力利用に関係の深い放射性核種の線量係数
    2-4-4 過去に経験した人における内部被曝の例
 2-5 福島第一原子力発電所事故の健康影響
 2-6 人以外の生物への影響
    2-6-1 これまでの経緯
    2-6-2 指標生物と問題とすべき生物影響
    2-6-3 福島原発事故による人以外の生物への影響に関する研究
 コラム 3 人以外の環境生物への影響
─ 野ネズミの線量評価と染色体異常 (久保田善久)

第3章 放射性物質の環境中移行と被曝評価 (高橋知之)
 3-1 環境中での放射性物質の動き
    3-1-1 人に至る経路とその特徴
    3-1-2 平常時に原子力発電所から放出される放射性物質による人への被曝経路
    3-1-3 福島原発事故後における放射性物質による人への被曝経路
 3-2 被曝線量の評価
    3-2-1 被曝線量の評価手法
    3-2-2 原子力施設の安全評価と監視
    3-2-3 福島第一原子力発電所事故時のモニタリングとモデル計算
    3-2-4 モデル評価の特徴と限界
    3-2-5 土壌から農作物への放射性核種の移行
 3-3 食品の規制について
    3-3-1 暫定規制値の適用の経緯
    3-3-2 基準値の設定
 3-4 事故に伴う食品汚染と預託実効線量
 コラム 4 放射線に対抗する
──不安解消のための放射線測定,線量測定 (山西弘城)
 コラム 5 京都大学から福島県避難所に派遣された職員の被曝線量
(木梨友子)
 コラム 6 食物の放射性物質濃度の変遷 (塚田祥文)
 コラム 7 調理・加工で飲食物を除染できるのか? (田上恵子)

第4章 環境放射線の監視と管理 (谷垣 実)
 4-1 事故に伴う周辺環境の放射能汚染
    4-1-1 事故に伴い環境に放出された放射性核種
    4-1-2 福島第一原子力発電所事故で環境中に放出された放射性物質の挙動
    4-1-3 計算機による予測
    4-1-4 事故時の状況
    4-1-5 海洋における汚染拡散
 4-2 事故後の空間線量率とその推移
    4-2-1 空間線量と実効線量
    4-2-2 空間線量率を測定する測定器
    4-2-3 空間線量率を求める──適当な検出器と注意点
 4-3 空間線量率のモニタリング手法とその結果
    4-3-1 モニタリングポスト
    4-3-2 歩行サーベイ
    4-3-3 航空機サーベイ
    4-3-4 走行サーベイ
    4-3-5 経時的な推移と将来予測
 4-4 環境モニタリングシステムとその問題点
    4-4-1 事故前に策定されていたモニタリング体制
    4-4-2 福島第一原子力発電所事故での環境モニタリング
    4-4-3 何が問題だったのか
 4-5 KURAMAの開発
    4-5-1 開発の経緯
    4-5-2 KURAMAの構成
    4-5-3 KURAMAの運用
 4-6 新たな挑戦:KURAMA-IIの開発と利用
    4-6-1 KURAMA-IIの狙い
    4-6-2 KURAMA-IIの構成
    4-6-3 KURAMA-IIの現在までの運用
    4-6-4 KURAMA-IIの今後の展開
 4-7 あるべきモニタリングの姿──原子力の安全基盤として
    4-7-1 福島原発事故時のモニタリングで達成すべきであったこと
    4-7-2 適切なモニタリングによる避難区域の設定が出来なかった理由
    4-7-3 緊急時に何をすべきか
    4-7-4 緊急時におけるKURAMA-IIの可能性
 コラム 8 福島原発事故に伴い放出された放射性物質による海洋汚染と
海洋生物への影響 (青野辰雄)
 コラム 9 放射線測定の原理と主な放射線測定器について (八島 浩)
 コラム 10 航空機モニタリングによる放射線マップの作成 (鳥居建男)
 コラム 11 環境放射線のモニタリングに従事して (齋藤公明)

第5章 原子力利用の安全基盤としての放射線管理(学)
     ——将来に向けて (谷垣実・高橋千太郎)
 5-1 放射線管理・防護の国際的なコンセンサス
    5-1-1 放射線防護の基準策定に係わる国際的な組織
    5-1-2 放射線防護の対象とその考え方の変遷
    5-1-3 放射線防護の基本原則
 5-2 福島第一原子力発電所事故と放射線防護・管理
    5-2-1 ALARAの精神と避難
    5-2-2 行為の正当化──利益と損害
    5-2-3 最適化の目標点
    5-2-4 線量限度と参考レベル,線量拘束値
 5-3 環境倫理と原子力利用
    5-3-1 環境倫理学の特徴
    5-3-2 環境倫理学から見た原子力利用の問題点
 5-4 放射線防護・管理学の今後の研究方向
    5-4-1 環境放射線(能)レベルに関する研究
    5-4-2 環境中での放射性物質の動態に関する研究
    5-4-3 原子力の利用と今後の放射線影響研究
 コラム 12 京都大学から福島原発事故に関連して行われた職員の派遣 (藤井俊行・佐藤信浩)
 コラム 13 放射線を探知する波長変換材の研究
       ─ 放射線計測・管理のブレイクスルーを求めて (中村秀仁)

参考文献
あとがき
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