学術選書 083
京都学派 酔故伝

櫻井 正一郎

四六並製・411頁・税込 2,160円
ISBN: 9784814001156
発行年月: 2017/09
在庫あり

内容

京都学派は西田幾多郎を筆頭とする哲学者らだけのものではない。狩野直喜らの東洋学、吉川幸次郎、桑原武夫らによる文学研究、今西錦司の人類学などさまざまな学統を生み出した。本書が酔故伝と銘打たれているように酒の力があり、三高の気風があり、東洋と西洋の異質性にとらわれない「文」の気風がずっとあった。今日において学問とは何か、大学はどうあるべきかを改めて考えるさせる一冊。
立本成文氏による跋を収録。

目次

まえがき―「京都学派」について
   「まえがき」のまえがき/哲学者たちの「京都学派」/東洋学者たちの「京都学派」/
    今西グループによる「京都学派」/文学研究にも「京都学派」が/あとになった
    人物論/京大の内側から/「守成は創始より難し」

第Ⅰ部……實事求是―文学研究の京都学派


第1章……實事求是とは
   東洋学と文学の学風を一括/實事求是の慣用/實、實事、是/モットーとして/
   清朝考証学派の方法/移入と鼓吹/伝授/小林秀雄
第2章……一次資料を読みきる―實事求是の核心
   上田敏の「細心精緻」/宣長とペイター/一次資料に対して
第3章……学風の啓蒙―内から外へ
   学外への啓蒙/現代批評理論の先駆/深瀬対御輿
第4章……深瀬基寛と学統
   深瀬の方法/御輿の方法/深瀬の「講釈」/社会に提供
第5章……今西学の登場
   強力なライヴァルとして/「自然学」というライヴァル/實事求是から見ると/
   学問も探検―今西学から学ぶ

第Ⅱ部……第二期の特徴


第1章……ヨコ社会―第二期の土壌
   共同研究と塾/タテ社会あってのヨコ社会/酒という潤滑油
第2章……教養主義―ヨコ社会の理念
   リベラリズムの影響/アカデミズムへの批判勢力
第3章……独自なもの
   日本のために/京の町/登山、探検、フィールドワーク/好き勝手
第4章……第二期と出版社
   弘文堂と創文社/筑摩書房/岩波書店その他/京都大学学術出版会
第5章……学風の見取り図
   草創期にあった二極/変化していった二極
第6章……第二期の事柄
   大学共同利用機関と京都学派/京都学派と文章/守成から隆盛へ

第Ⅲ部……京都学派人物列伝


第1章……第二期を率いた三巨頭

1 吉川幸次郎―壮絶な人と酒と学問
   「もう無茶苦茶だよ」/第二期の二極分化/酒とイギリスの大学・社会/
   酒と人と学問が/なぜ酒が飲めたのか/「吉川さん」二話
2 桑原武夫―第二期を造った仕掛け人
   酒とうまく付合う/生産性を高める酒/酒を伴った第二期/独自な見方と
   「あほくさ」/脱専門領域と共同研究/愛嬌/聖恩禽獣に及ぶ
3 今西錦司―京都学派の新しい学風
   「バンザーイ」と酒/教養主義/「今西塾」/ヨコの関係/長かった
   浪人時代/仮説を早く―学風(一)/「直観の賜」―学風(二)/
   本流に加わる/ロンドンでの雄姿
第2章……第二期人物列伝

1 深瀬基寛―詩人と教養主義者
   居酒屋/逸脱/学会への反感/両輪/チンチン電車
2 大山定一―自由の「純粋な象徴」
   一番の酒豪/ぬきさしならない関係/放埓なほどの自由/美しい文章/
   町の人が
3 古田晁―京都学派の心柱
   並外れた酒漢/気の弱さ/窮地/寂しい男/京都学派の本を出す/最期
4 富士正晴―侠気と絶望
   竹林の酒仙/竹内勝太郎/人生の二つの目的/危険/司馬遼太郎の
   不思議な文章/棲み家の跡
5 高橋和巳―『人間にとって』へと向かって
   お茶屋と待合/酒乱二話/独酌/酒悲/新しい小説?/「自己解体」/
   『人間にとって』こそ/近所に居た高橋
6 小岸昭―受難への旅
   どんぐり橋/相乗/火花から始まる/弱いマラーノと詩人/体感/
   「呑ん兵衛の旅人」
第3章……草創期の三傑

1 原勝郎―都に落ちた雷
   京都嫌い/人馬一体/武士道と京の文化/書生同士/都の勝利
2 九鬼周造―遊里と遊離
   遊里/風流人/天心の酒乱/「ルミナス・ヘイロゥ」/グローバリズム/
   九鬼邸の跡地/墓碑のゲーテ詩/もう一つの物語
3 青木正兒―「遊心」の逸楽
   大酒三景/仙境の酒/真の在/敗戦時/戦後の変節を嫌う/学問、酒、仙境/
   最期/住まいと墓/青木というフィナーレ/学派を造った空気

精神の灯を伝える―観望の記  立本成文
謝 辞
出典一覧/図版引用出典リスト
人名索引

プロフィール

櫻井正一郎(さくらい しょういちろう)
1936年生まれ。京都大学英文科卒、ケンブリッジ大学客員研究員、京都大学総合人間学部教授、同大学名誉教授。京都学派に入学前から関心をいだいてきた。留学後外国人学者の招聘に尽力した。

主な著書
『女王陛下は海賊だった―私掠で戦ったイギリス』(ミネルヴァ書房、2012)。
『最後のウォルター・ローリー―イギリスそのとき』(みすず書房、2008)。
『サー・ウォルター・ローリー―植民と黄金』(人文書院、2006)。
『結句有情―英国ルネサンス期ソネット論』(山口書店、1979)。
The View from Kyoto: Essays on Twentieth-Century Poetry(編著、Rinsen Books、1998)。
主な論文
「實事求是―京大英文科の学統」(『Albion』60, 2014)。
「細心精緻―上田敏の学風」(『Albion』48, 2002)。
「エピグラムとソネット―イギリス型ソネットの起源をめぐって」(『英文学評論』55, 1988)。