災害対応の地域研究 3
国際協力と防災
つくる・よりそう・きたえる

牧 紀男・山本博之 編著

A5並製・278頁・税込 3,456円
ISBN: 9784876985005
発行年月: 2015/03
在庫あり

書評

『東南アジア研究』54巻2号、266-268頁、評者:関恒樹氏

内容

日本と持ちつ持たれつの関係にある東南アジアは災害多発地域である。タイ洪水、フィリピン台風、カンボジア内戦、東ティモール独立紛争などの災禍に対する地域社会の対応を辿りながら、防災・復興と外部者の果たす役割、国際協力のあり方を考える。地域の抵抗力をつくり、回復力によりそい、支援力をきたえるために我々に出来ることとは?

目次

口絵
「災害対応の地域研究」シリーズの刊行にあたって
凡例

はじめに――アジアと災害・防災  [牧 紀男]
アジアは災害で繋がっている / アジアの災害の変化 / どのようにして災害とつきあうのか / 打たれ強いアジアを目指して

第一部 地域の抵抗力をつくる
第1章 水害は不平等に社会を襲う――二〇一一年タイ大洪水  [星川圭介]
自然の恵みと災い
1 水害の特質と社会対立
2 タイの洪水の特徴と社会  
3 二〇一一年大洪水と氾濫水を巡る対立
4 被害を踏まえた治水対策
5 望ましい治水とは
第2章 自然災害のリスクとともに生きる――二〇一三年フィリピン台風災害とサマール島  [細田尚美]
近隣地域間の共助
1 実践から読み解く共助のありかた
2 フィリピンの地域社会と防災
3 台風ヨランダとサマール島
4 近隣地域からの共助の諸相
5 フィリピンの共助の特徴と国際協力
コラム1 サマール島のセイフティネット、「ブオタン」な人の連鎖  [細田尚美]

第二部 回復力によりそう
第3章 紛争とその後の復興が教えること――一九七〇~九三年カンボジア紛争  [小林 知]
国際関与と生活再建
1 災害としての紛争とカンボジア
2 カンボジア紛争は何だったのか
3 コミュニティの再構築――経験の壁と向かい合う
4 地雷除去と開発
5 人間社会の発展
第4章 「小さな物語」をつなぐ方法――一九七五~九九年東ティモール紛争  [亀山恵理子]
「物語」と社会の再生
1 東ティモールを知っていますか
2 東ティモールの独立をめぐって
3 「いかに傷ついたのか」――ある対話集会と人権侵害の調査
4 「いかに闘ったのか」――抵抗博物館と苦難の意味づけ
5 痛みと多様な語り
6 南相馬を舞台にしたある映画に学ぶこと
7 「私たちの物語」を紡ぐ
コラム2 災害の記憶――津波遺構に託される生存者の思い  [西 芳実]

第三部 支援力をきたえる
第5章 研究所の成長と共に歩む――インドネシアとの防災協力  [小林英之]
住宅・都市
1 災害体験を共感できる列島国インドネシア
2 マジャレンカ地震(一九九〇年七月六日、マグニチュード五・二)
3 パレンバンの復興市街地訪問
4 リワ地震(一九九四年二月一五日、マグニチュード七・〇)
5 イリアンジャヤ津波災害(一九九六年二月一七日、マグニチュード八・一)
6 バンダアチェ住宅被害調査と復興支援
7 防災協力とは何だったか
第6章 災害でも止まらない社会へ――コミュニティ・企業・アジア  [小野高宏]
企業防災と地域協力
1 自然災害とアジア
2 地域コミュニティ防災から企業防災へ
3 防災・減災を普及促進する国際機関と地域的取組み
4 ASEAN諸国の自然災害と防災体制
5 アジアに依存する日本――産業集積構造の構築
6 タイ大洪水による自動車産業への影響
7 大災害を経験した日本企業の対応
コラム3 大規模災害時の遺体の管理――救援者が知っておきたい知識  髙田洋介

おわりに――アジアの防災モデル確立に向けて  [山本博之]
都市化するアジアとその回復力 /「現地の人は満足している」と「現地の仕組みが貧弱」を超えて / 完全には解決しない状況に折り合いをつける /「あそび」をもった専門性 / アジアの防災モデルを世界へ

索引
編著者略歴

プロフィール

編著者
牧 紀男(まき のりお)
京都大学防災研究所教授【はじめに】
京都大学大学院工学研究科博士課程修了
研究分野:復興、防災、災害とすまい
主な著作に、『復興の防災計画――巨大災害に向けて』(鹿島出版会、2013)、『災害の住宅誌――人々の移動とすまい』(鹿島出版会、2011)、『組織の危機管理入門――リスクにどう立ち向えばいいのか』(京大人気講義シリーズ、丸善、2008、共著)など。

山本 博之(やまもと ひろゆき)
京都大学地域研究統合情報センター准教授【おわりに】
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了
研究分野:東南アジア地域研究、災害対応と情報
主な著作に、『脱植民地化とナショナリズム――英領北ボルネオにおける民族形成』(東京大学出版会、2006)、『復興の文化空間学――ビッグデータと人道支援の時代』(災害対応の地域研究1、京都大学学術出版会、2014)など。

著 者
星川 圭介(ほしかわ けいすけ)
富山県立大学講師【第1章】
京都大学大学院農学研究科博士課程修了
研究分野:土地・水管理、地理情報分析
主な著作に、『アジア経済研究所情報分析レポート:タイ2011年大洪水――その記録と教訓』(アジア経済研究所、2013、共編著)、『タムノップ――タイ・カンボジアの消えつつある堰灌漑』(めこん、2013、共著)など。

細田 尚美(ほそだ なおみ)
香川大学インターナショナルオフィス講師【第2章、コラム1】
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了
研究分野:東南アジア地域研究、文化人類学、フィリピン人移民研究
主な著作に、『湾岸アラブ諸国の移民労働者――「多外国人国家」の出現と生活実態』(明石書店、2014、編著)、『複ゲーム状況の人類学――東南アジアにおける構想と実践』(杉島敬志編、風響社、2014、分担執筆)など。

小林 知(こばやし さとる)
京都大学東南アジア研究所准教授【第3章】
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了
研究分野:東南アジア地域研究、生業変容、宗教と社会
主な著作に、『カンボジア村落世界の再生』(京都大学学術出版会、2011)、『市場経済化以後のカンボジア――経済活動の多面的な展開をめぐって』(Kyoto Working Paper on Area Studies No. 115、京都大学東南アジア研究所、2011、編著)など。
亀山 恵理子(かめやま えりこ)
奈良県立大学地域創造学部准教授【第4章】
名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程満期退学
研究分野:国際開発協力、地域研究(インドネシア、東ティモール)
主な著作に、「開発援助における隔たりを見つめる――東ティモールにおけるNGO活動から」(『地域創造学研究』第24巻第2号、2014)、『インドネシア九・三〇事件と民衆の記憶』(ジョン・ローサほか編、明石書店、2009、翻訳)など。

小林 英之(こばやし ひでゆき)
国土技術政策総合研究所研究官【第5章】
東京大学大学院工学系研究科博士課程満期退学
研究分野:災害史、インドネシアの住宅、情報システム
主な著作に、Impact of Sea Level Rising on Coastal Cities: Case Studies in Indo-nesia(国土技術政策総合研究所資料第194号、国土技術政策総合研究所、2004、Zubaidah Kurdiとの共著)、Monitoring CO2 Emission in Indonesian Planned Hous­ing Complexes and Designing Alternative Future Images(同第440号、2008)など。

小野 高宏(おの たかひろ)
三菱商事インシュアランス株式会社リスクコンサルティング室長【第6章】
研究分野:サプライチェーンリスク、企業防災
主な著作に、『大災害に立ち向かう世界と日本――災害と国際協力』(柳沢香枝編、佐伯印刷、2013、分担執筆)、『コンセンサス標準戦略 事業活用のすべて』(新宅純二郎・江藤学編著、日本経済新聞出版社、2008、分担執筆)など。

西 芳実(にし よしみ)
京都大学地域研究統合情報センター准教授【コラム2】
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了
研究分野:インドネシア地域研究、多言語多宗教地域の紛争・災害対応
主な著作に、『災害復興で内戦を乗り越える――スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』(災害対応の地域研究2、京都大学学術出版会、2014)、『東南・南アジアのディアスポラ』(首藤もと子編著、明石書店、2010、分担執筆)など。

髙田 洋介(たかだ ようすけ)
人と防災未来センター研究員【コラム3】
神戸大学大学院保健学研究科博士課程前期課程修了
研究分野:災害医療、災害看護、国際緊急援助
主な著作に、『今日の救急治療指針 第2版』(前川和彦・相川直樹監修、杉本壽ほか編、医学書院、2011、分担執筆)、『災害看護――心得ておきたい基本的な知識』(小原真理子・酒井明子監修、南山堂、2007、分担執筆)など。