プリミエ・コレクション
襤褸を纏った徳
ヒューム 社交と時間の倫理学

林 誓雄

A5上製・280頁・税込 4,104円
ISBN: 9784876985494
発行年月: 2015/02
在庫あり

書評

『イギリス哲学研究』第39号(2016年)、97-98頁、評者:島内明文氏

内容

18世紀スコットランドの哲学者ヒュームの主著『人間本性論』は、これまで認識論的な側面のみ注目されてきたが、むしろ全体的テーマは人間論にあり、その根幹には倫理学がある。ヒュームの倫理思想は功利主義にもカント的な義務論にも属さない「徳(virtue)の倫理学」であることを示しながら、その現代的な意義を明らかにする。

目次

凡例

はじめに
   一 問題の所在と本書の目標
   二 ヒュームの位置、魅力と独創性
   三 テクストに関する方針
   四 本書の構成

第一部 認識論的な基礎

第 一 章 ヒュームの信念論
   一 認識論をおさえておくべき理由
   二 ヒュームの知覚論
   三 「信念」の特徴
   四 信念のもう一つの特徴 ——「心の作用」
   五 「心の作用」が果たす役割
   六 「真なる信念」と「偽なる信念」の区別
第 二 章 一般的規則と事実判断
   一 「一般的規則」の一般的な特徴
   二 想像力の一般的規則
   三 陥る錯誤
   四 知性の一般的規則
   五 反省による信念の活気の減少
   六 反省と「心の強さ」
   七 極めて危険なディレンマ

第二部 道徳的評価と行為の動機づけ

第 三 章 ヒュームの「道徳的評価」論
   一 一般的観点とその導入の背景
   二 一般的観点は「道徳的観点」か?
   三 「身近な人々の観点」としての一般的観点
   四 道徳的評価の説明に見られる間隙
   五 道徳的評価と一般的規則
    (1)一般的規則 再考
    (2)「習慣」と「反省」による一般的規則の区別
    (3)道徳的評価の第一の体系 ——個人内部における評価の仕組み
    (4)道徳的評価の第二の体系 ——社交や会話を通じた評価の仕組み
   六 襤褸を纏った徳
   七 徳の区分と一般的観点の関与
   八 「人間」を見つめるということ
第 四 章 道徳的な行為の動機づけ
   一 内在主義と外在主義 ——メタ倫理学とヒューム研究
   二 道徳感情の正体? ——伝統的な二つの解釈
   三 義務感による行為の動機づけ
   四 道徳感情と行為の動機づけ
    (1)「内在主義—間接情念」説
    (2)「内在主義—直接情念」説
   五 判断の「動機外在主義」解釈
    (1)道徳感情・共感・欲求
    (2)行為の動機づけと共感 ——徳倫理学的な動機づけのメカニズム

補  章 「欲求」の捉え方 ——「ヒューム主義」に関する一考察
   一 欲求の命題主義的な捉え方とその問題点
    (1)マイケル・スミスによるヒューム主義的信念—欲求モデル
    (2)「適合の向き」の難点
   二 ヒューミッシュモデル ——欲求の快楽主義的な捉え方
   三 ヒューミッシュモデルの検討

第三部 徳の区分 ——人為と自然

第 五 章 人為的徳論
   一 ヒュームのコンヴェンション論と「利益」の問題
   二 コンヴェンションの形成とその背景
   三 〈自己利益〉および〈共通する利益〉とは何か?
    (1)〈自己利益〉と〈共通する利益〉
    (2)〈共通する利益〉の内実
   四 〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉
    (1)〈共通する利益〉と〈公共的な利益〉は同じものか?
    (2)公共的な利益〉の内実
   五 本解釈の検討
    (1)〈公共的な利益〉と二つの社会
    (2)〈公共的な効用〉とは何であったのか?
第 六 章 自然的徳と共感
   一 自然的徳の特徴
   二 共感と自然的徳の及ぶ範囲の拡張
    (1)二種類の共感
    (2)制限された共感と拡張された共感

第四部 「社交・会話」と「時間軸」

第 七 章 道徳と「社交・会話」
   一 一般的観点の採用と社交・会話
   二 ヒュームにおける「文明社会論」
    (1)『人間本性論』における「文明社会論」
    (2)社交・会話と「文明社会論」
   三 社交・会話と人間性の増幅
    (1)『道徳・政治・文芸論集』における社交・会話
    (2)『道徳原理の探求』における「人間性」と「他者への関心」
   四 社交・会話と自然的徳の涵養
第 八 章 「道徳」と「人々の意見」、そして「時間」
   一 異なる「信念」の取り扱い
   二 ヒュームの道徳論における「信念」に関する問題
    (1)信念と道徳的行為の動機づけ
    (2)人々の意見の「権威」と「不可謬性」
   三 ヒュームの信念論 ふたたび
    (1)信念の構成要素
    (2)「心の作用」に対する一般的規則と反省の影響
   四 人々の意見がもつ権威
    (1)信念と意見、習慣と風習
    (2)家庭での教育における習慣と風習の一致
    (3)人々の意見が権威をもつとはいかなることか
   五 人々の意見の不可謬性
    (1)「完全な不可謬性」という問題
    (2)信念の真偽と一般的規則
    (3)人々の意見が不可謬であるとはいかなることか
    (4)道徳の一般的規則と「時間軸」
終  章 社交と時間の倫理学

あとがき
参考文献
索引(人名/事項)

プロフィール

林 誓雄(はやし せいゆう)
1979年京都府生まれ。
2009年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。
2012年京都大学博士(文学)。
専攻、哲学・倫理学。
現在、大谷大学任期制助教。

研究論文
「ヒューム道徳哲学における一般的観点と一般的規則」(『倫理学研究』第38号)、「ヒュームにおける道徳感情と道徳的な行為の動機づけ」(『倫理学年報』第58号)、「ヒュームにおける社交・会話と人間性の増幅——自然的徳論に関する一考察」(『イギリス哲学研究』第33号)、「ヒューム正義論における利益、効用、そして社会」(『哲学』第63号)、「ヒューム道徳哲学における「人々の意見」」(『倫理学研究』第43号)、他。